第9回 島根メディカルラリー

 2019年10月22日、島根県松江市にある島根県消防学校において第9回島根メディカルラリーが開催された。「救急医療・地域医療の向上」「救助・救急・医療の連携」をテーマに、島根県・島根県消防長会の後援、島根県防災航空隊の協力を得て、県内全消防本部及び地域医療機関に勤務する救急救命土、救助隊員、医師及び看護師の4名で構成される「チャレンジャー」と呼ばれるチームが集い、外傷や内因性など7つのブースにおいて、チームごとにいかに迅速な判断と処置ができるかを競い合った。

 同ラリーは2009年に島根大学医学部の学祭イベントとして開催された「出雲メディカルラリー」が前身となっており、現在では県や消防長会をはじめとする関係各機関を巻き込んで開催されている、全国でも珍しいラリーとして広く知られるようになっている。島根県消防長会の後援を受けたことにより、島根県下全9消防本部から職員がオフィシャルとして参加できる体制が構築されており、会場となる消防学校の初任教育学生もカリキュラムの一環として参加。傷病者役といったエキストラとしてだけでなく、救急救命士の資格を持つ2名を選抜し、医師や看護師とともにチャレンジャーとして出場している。また、一般的にメディカルラリーのチャレンジャーは救急救命士・医師・看護師で構成されるが、島根では「救助隊員枠」が設けられているのも特徴。これは消防と医療が良好な関係を築き、平素から連携訓練を重ねておかねば患者を救うことができないというコンセプトによるもの。また、2016年からは救助ブースを設定。メディカルラリーでありながら本格的なCSRMやロープレスキューといった要素が盛り込まれ、救助活動に「触れる」機会が意識されている。

 内因性、産科、小児、外傷、救が設けられ、チャレンジャーはこれら模擬救急現場において、チームごとにいかに迅速な判断と処置ができるかを競い合う。加えて、Sブースとして多数傷病者事案を想定したブースが設定されており、300名を超える参加者が同時進行で1想定にアタックする珍しい取り組みも行われている。これも「救助・救急・医療の連携」を重要視する島根メディカルラリーならではの取り組みで、メディカルラリーの場を活用して多機関連携訓練を行っているのである。

 このほか、市民の見学を受け入れ、親子連れで会場(各ブース)を回れるようスタンプラリーを行うなどの取り組みも実施。さらに、市民に対する簡易心肺蘇生講習会の開催とあわせ、今年度は小学生を対象とした「子どもメディカルラリー」も開催。119番通報や周りの人へ助けを求める方法、応急手当の方法などを学べる4つのブースが用意され、命を救う術を楽しみながら学んだ。このように、関係者のみならず一般市民のプラスになるラリーとして進化を続けている。

 県や消防長会の後援、県防災航空隊や消防学校の協力はもちろん、警察、海上保安庁、自衛隊の協力・参加など、多機関と連携して独自の進化をみせてきた島根メディカルラリー。事態対処医療デモンストレーション、市民向けPUSHコース、医師のホイスト降下、災害救助犬の防災ヘリ搭乗など新しい取り組みも行ってきた。また、同ラリーの影響により、近隣の鳥取県、広島県、山口県などでもラリー開催が計画されるなど、広がりを見せはじめている。当初50名の参加者で始めた島根メディカルラリーも、今では300名を超えるようになった。実行委員会ではこれからも改善を重ねながら進化させていき、顔の見える関係の強化、実活動における連携強化につなげていきたいとしている。

 

  • 【防災ヘリ・救助犬デモンストレーション】大規模自然災害を想定した多機関連携によるデモンストレーション。医師のホイスト降下は2014年のメディカルラリーで初めて行われ、これを契機に島根県防災航空隊では医師のホイスト降下マニュアルを作成した。
  • 【防災ヘリ・救助犬デモンストレーション】防災ヘリによる災害救助犬投入。県内に民間災害救助犬団体がないことから、メディカルラリーを通して災害救助犬の存在を知ってもらいたいとの思いから行われている取り組み。
  • 【防災ヘリ・救助犬デモンストレーション】救出活動には第八管区海上保安部美保基地所属の機動救難士も参加して実施。
  • 【防災ヘリ・救助犬デモンストレーション】救出活動には第八管区海上保安部美保基地所属の機動救難士も参加して実施。
  • 【内因性ブース】熱中症を想像させる状況で実は熱中症は軽度で低血糖を併発してるという想定。
  • 【内因性ブース】かばんの中に糖尿病手帳があり、糖尿病患者だとわかる。
  • 【産科ブース】妊婦2名が乗った乗用車の単独事故想定。
  • 【小児救急ブース】運動会で児童が突然呼吸困難を起こしたとの想定。その横では15歳の中学生が脱水によりショック状態に陥っている。救命士による静脈路確保が可能な年齢、ルート確保の選定がポイント。
  • 【外傷ブース】自転車×車の交通事故。現場到着前に草刈り機で足を切った歩行不可の男性に遭遇。
  • 【外傷ブース】事故現場で横たわる高齢男性に的確な観察(評価)と処置を実施。
  • 【救助ブース】狭所や暗所での観察や処置について体験するCSRM想定。応急処置を行うとともに救出方法を探る。
  • 【救助ブース】進入隊員からの情報をメモし、活動を組み立てる。
  • 【BLSブース】BLSで求められる「質の高いCPR」が試される。
  • 【災害ブース】爆発物や刃物を用いた殺傷事案想定。全チーム総掛かりで行われる。チャレンジャーは10秒おきに投入され、応急救護所での活動に入る。
  • 【災害ブース】処置や安定化、搬送などを行う。
  • 【子どもメディカルラリー】小学生を対象にしたメディカルラリーも開催。
  • 【子どもメディカルラリー】心肺蘇生法などを実際に行い命を救う術を楽しみながら学んだ。

 

 


 

本記事は訓練などの取り組みを紹介する趣旨で製作されたものであり、紹介する内容は当該活動技術等に関する全てを網羅するものではありません。
本記事を参考に訓練等を実施され起こるいかなる事象につきましても、弊社及び取材に協力いただきました訓練実施団体などは一切の責任を負いかねます。

 


 

取材協力:島根県メディカルラリー実行委員会
参考文献:月刊消防 2019年2月号(東京法令出版)


初出:2020年1月 Rising 冬号 [vol.16] 掲載

pagetop