第10回広島県消防活動自主訓練会

 

広島県内の消防職員を中心に、自らの意志と責任で明日の消防活動について研究し、災害対応能力の向上を目指す「広島県レスキュー研究会」では、毎回一つのテーマを決めて自主訓練会を実施している。震災対応訓練や編み構造ロープを使用した救助といった新時代的な取り組みはもちろん、交通救助、火災対応、救急活動など、従来の消防活動全般も含めて学びを深めているのが特徴だ。
平成28年11月26日~27日の2日間、広島県消防学校において行われた第10回広島県消防活動自主訓練会は「応急はしご勉強会」として、消防救助操法の基準に示された応急はしご救助操法をトコトンやりこむというもの。マニアックな取り組みに思えるかもしれないが、この「応急はしご」という手技は、救助技術に関する考え方や様々な手技の位置づけ、さらには訓練手法についての根本的な考え方についてまで見直せる奥深いもの。現代だからこそ再注目されている存在と言える。

 

■広島県レスキュー研究会
平成26年3月に活動を開始。広島県内の消防職員を中心に、自らの意志と責任で明日の消防活動について研究し、災害対応能力の向上を目指す。活動としては、救助活動を中心に消防活動全般をテーマとした勉強会を実施しています。

 

基本から見つめなおす

1日目に実施されたのが再確認。消防救助操法の基準や使用資機材の諸元性能、合力、分力といった関連要素を座学にておさらい。続けて、県内各地の消防本部における応急はしごの実施方法や使用資機材、火災初動での携行資機材や携行方法、各種工夫などを討議した。
そもそも、応急はしごは建物2~3階程度から、架梯した三連はしごを利用し救助ロープの先端に要救助者を縛着して救助する方法。隊員が進入に使用したはしごをそのまま救出に使用することができ、使用資機材数も少なく、迅速な救出が可能。火炎や濃煙熱気、可燃性・有毒ガスといった危険がある火災現場より要救助者を一刻も早くクリアゾーンに救出し、同時に現場滞在時間を極力短くすることが活動隊員の安全を確保する場合に用いられる方法だ。

 

応急はしごを多角的にとらえる

火災救助はスピード勝負。そこで、迅速性を適えるためにシングルロープで対応する超緊急的救助法といえる。言い換えれば、実施する環境が高レベルな危険の渦中であり、他の手技と同様の「二重の安全確保」(ダブルロープの原則など)を行っている暇がない状況を想定しているということだ。そこで、反復訓練により技量でカバーするというように、異なるアプローチで安全性を確保してきた。近年では安全性向上と時間短縮が期待できる器具の活用も進んでいる。
一方で、最新鋭の器具や手技を組み合わせて応急はしごをバージョンアップさせておけばよいかというと、そうではない。三連はしごとロープのみで対応する基本形をマスターしておかねば「モノがなければ対応できない」という状況に陥ってしまうからだ。だからこそ、訓練において基本となる操法そのままのスタイルを身につけ、その上で本部独自スタイルなどを行えるようにしておかねばならない。また、スピード重視の速攻型手法であるため、動作を確認しながらより安全確実に行う訓練と等しく、速さを求める訓練と両方をやらねばならない。訓練で速さを追求することで隊員の技量が上がり、それが安全につながるという考え方もある。
このように、応急はしごを多角的にとらえ学びを深めて行った。

 

縛着を極める!

 

定番の430縛帯。写真左が一般的な収納方法で、写真右がラビット仕様。

 

ラビット仕様は要救助者の足を通すループ部分を「うさ耳」状に折り曲げて収納しておくこと。一般的な収納方法ではループ部分が潰れた状態で折クセがついてしまうが、ラビット仕様としておけば収納袋から出して一振りするだけでループが広がる。

 

狭隘な場所でも素早く装着でき、子供など身体の小さな要救助者にも対応するピタゴール。

 

縛着専用ツールがなくとも、小綱があれば救助ロープ設定の間に要救助者を縛着しておくことが出来る。小綱を1本の状態のまま背中の下に通し、ループ上に結索。

 

ループ状にした小綱を、両脇と股の間から拾い上げる。

 

カラビナでまとめ、これを救助ロープに接続すればすぐに救出が可能。

 

 

技術とスピードを身体にしみこませる

 

2日目は小隊に別れ、実技訓練を集中的に実施。各本部から紹介があった救助方法のうち、三連はしごに負担がかからず、迅速に救出できる方法を選択し実施された。
内容については従前操法スタイルをそのまま行う「三つ打ちナイロンロープを使用した方法」と「編み構造ロープを使用した方法」。さらに、救助ロープをつるべとして荷重分散を行う手法や、要救助者縛着の各種バリエーションを体験する。
時間の限りやり込んだところで、訓練成果を小隊毎に披露する「第1回応急はしご世界大会」が開催された。ユーモアに富んだタイトルを付けられているが、実施小隊以外全員が審査員となってスピード、正確性、安全性、基準に準じているかなどをチェックする厳しい内容。前半の「動作を確認しながらより安全確実に行う訓練」とは対照的に、「速さを求める訓練」として実戦さながらの活動が披露された。

 

この訓練会は、広島県内の消防関係者等の交流の場としても位置づけられており、所属や世代を超えて顔の見える関係を構築するというテーマもある。
人を救うのは人──。人を救うためには思いやる気持ちがとても大切といえる。そして、人を思いやることで繋がりができ、その結果、互いの切磋琢磨により成長することができる。広島県レスキュー研究会では「人と人との繋がりは人を救う」という考えを掲げ、今後も「人生救助」に繋がる活動に取り組んでいくという。

 

  • 基本形の応急はしご。三つ打ちロープを三連はしごに通し、索端の三重もやいで身体縛着を実施。肩確保で救助ロープを操作する。
  • 基本形ではロープを最下段の横桟に通して確保時の抵抗をプラスすると共に折り返し点とする。
  • 登梯後の動作に流れるように移行できるよう、三重もやいを手にしたまま登る。
  • 上部支点となる横桟にロープを通す。
  • こちらは応用版。最下段の横桟にカラビナを介してロープの折り返し点を設定している。
  • 編み構造ロープによる応急はしごで、ピタゴールを使用したバージョン。
  • 上部支点側をつるべとしている設定例。これにより荷重分散を図る。
  • つるべを設定する際は、横桟にかけるオートロック式カラビナをゲートオープンの状態で保持したまま登梯。これも時短テクのひとつ。
  • 要救助者の苦痛緩和装備として現在ではおなじみの430縛帯。
  • 下部支点側の横桟にカラビナを介してロープの折り返し点を設定している例。
  • 使用する編み構造ロープの伸び率やはしごでの抵抗を考慮した上で活動を行う。
  • 小綱による身体縛着。要救助者に対して編み込んでいくように縛着を行う。

 

 


 

■ここもチェック
消防救助操法の基準[応急はしご救助操法]
https://www.fdma.go.jp/concern/law/kokuji/hen51/51020003030.htm#第4編第2章第3節

 


 

本記事は訓練などの取り組みを紹介する趣旨で製作されたものであり、紹介する内容は当該活動技術等に関する全てを網羅するものではありません。
本記事を参考に訓練等を実施され起こるいかなる事象につきましても、弊社及び取材に協力いただきました訓練実施団体などは一切の責任を負いかねます。

 


 

写真:伊木則人

文:木下慎次

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