消防隊員用PPEの安全性を知ろう! [ガイドラインと自主基準制度]

 

 消防隊員を最も身近な場所で守るPPEとして活躍するのが防火服といえる。この防火服の性能に関する国内一律の基準というものは、長らく存在していなかった。そうした中で、平成11年(1999年)12月に消防隊員用防火服の国際基準ISO11613が制定され、日本でもISO対応のセパレート型防火服が普及し始める。
 こうした流れを受け、火災現場において消火活動を行う消防隊員の安全を確保するための個人防火装備について意識が向けられるようになる。総務省消防庁では火災発生建物へ屋内進入を実施して活動する消防吏員を対象に、個人防火装備に求められる機能及び性能並びにその試験方法等について検討を実施。その結果を踏まえ、平成23年(2011年)5月に「消防隊員用個人防火装備に係るガイドライン」を策定した。
 ガイドラインは、火災発生建物へ屋内進入する可能性のある消防吏員の防火服、防火手袋、防火靴及び防火帽を対象に、耐炎性、耐熱性等の熱防護性や、快適性、運動性等の機能について、消火活動を実施するうえで安全上必要と思われる一定の性能及びその試験方法を定めたほか、安全な着装方法などの基本事項及びメンテナンスなど取扱い上の注意事項を明記している。各消防本部では、地域特性や消防戦術等を考慮し、ガイドラインを参考としながら、個人防火装備の仕様について検討を行い整備を進めているところだ。
 また、ISOにおいて、消防隊員用個人防火装備の規格が見直されたことに加えて、今までISOで規格化されていなかった防火帽及び防火フードが新たに項目化されたことを踏まえ、更なる安全性を確保することを目的に、個人防火装備に求められる機能及び性能並びにその試験方法等について見直し検討を実施。平成29年(2017年)3月にガイドラインの改訂版が示された。

 

ガイドラインとISO

 ISOの規格は国際的なルールであるが、国ごとに気候風土などに相違がある。そこで、ローカルルールにより整合性が図られる。日本ではガイドラインがこのローカルルールに相当するというわけだ。たとえば、防火服のISOにはアプローチA・欧州法(EN469仕様)とアプローチB・北米法(NFPA1971仕様)がある。アプローチBは重くて厚みのある生地により高い熱防護性を得ているが、米国の消防隊員と比較して体格的に劣る日本の消防隊員が米国仕様の防火服を着て活動するには無理がある。さらに、生地の構造により体内で発生した熱や汗を外部に逃がし難いため、高温多湿な日本ではヒートストレスの問題を増大させる恐れがある。こうした配慮から、ガイドラインではアプローチAが基準となっている。
 このようにして作られたガイドラインだが、実際、その防火服等がガイドラインに対応しているのかを一目で見極めるのは難しい。また、防火服等によっては同じガイドライン対応を謳っていても、A社とB社で仕様や試験データが微妙に異なるということも珍しくない。それもそのはずで、ガイドラインは強制力のない参考資料的位置づけ。メーカー各社がガイドラインなどをベースとして独自ルールを策定し、それを元に品質を維持してきたに過ぎないからだ。こうした疑問を解決する頼もしい存在として登場したのが、一般社団法人日本消防服装・装備協会による自主管理制度と品質確認済みマークだ。

 

防火服等の自主基準

 一般社団法人日本消防服装・装備協会は、消防服装・装備等に関する製造、販売等を行う関係業者の全国規模の団体。関係業界の意見や要望等を取りまとめ、関係方面に対して所要の要請を行うなどして防火服等の個人防火装備の品質や安全性の向上に努めている。
 先にも紹介した通り、ガイドライン対応と謳った防火服等であっても、本当に性能を満たしているかといった「客観的な保証」はどこにもなかったのが現実。こうした曖昧さを払拭し、国内統一の基準を設けてより分かりやすく、そして品質確保を容易にするために、同協会ではISO規格や個人防火装備のガイドライン等に準じて自主基準(技術上の基準)を策定。これに基づき自主管理を行うこととした。この自主管理を希望した製品については、防火服等に関する学識経験を有する者、消防機関の関係者等からなる防火服等自主管理委員会が審査し、認定された製品にのみ品質確認済みマークを付することができるようになった。

 

装備ごとに種別を設定

 同協会では「防火服」「防火帽・しころ」「防火手袋」「防火靴」「防火フード」「活動服」の6ジャンルについて技術上の基準を策定。それぞれ種別分類を設定している。基本的な種別分類はガイドラインをもとに設定されており、日本の風土にマッチしたISO・欧州法ベースとしたガイドライン相当の防火服等が「A」で、火災発生建物内に進入する消防活動に用いることができるもので「厳しい火災環境において使用でき、かつ、活動のしやすさを重視したもの」となる。よりハードなスペックを求めるISO・北米法にマッチした防火服等が「AA」で、こちらは「特に厳しい火災環境において使用するもの」と位置付けられている。当然のことながら、安全性能が高ければ全てよしということはなく、火災発生建物外での活動や、後方支援等を行う場合にも完全武装していたのでは、隊員にとって負担としかならない。そこで、こうした場面で用いることができるものとして「B」が設定されている。この基本的な3分類をベースに、装備によっては旧ガイドラインとの整合性を図るため、さらに細分化されているものがある。
 また、活動服についてはガイドラインの対象となっていないが、現実には防護層としての重要な意味合いを持っている。そこで、耐炎・耐熱性をもとにこれまでなかった基準を設けているのが特徴だ。

 

安全性が一目でわかる

 この自主基準制度に基づく品質確認は平成29年(2017年)10月からスタート。防火手袋などにおいて認定商品が登場してきている。これにより、品質確認済みマークと「A」の表示があればガイドライン対応であるということがすぐ理解できるようになった。
 メーカー各社では今年5月に開催される東京国際消防防災展2018での認定商品発表に向け、現在、商品開発や試験が急ピッチで進められているところだ。
 使用する現場隊員にとって今一つ難しい存在となっていたガイドライン。自主基準制度の登場により、安全性がより分かりやすくなったといえるだろう。

 

防火服等の自主基準(2017)一覧

一般社団法人日本消防服装・装備協会

基準番号 防火服等の種類 基準の名称
JFCE 0010-2017 防火服 防火服の技術上の基準
JFCE 0020-2017 防火帽・しころ 消防用ヘルメットの技術上の基準
JFCE 0030-2017 防火手袋 防火手袋の技術上の基準
JFCE 0040-2017 防火靴 防火靴の技術上の基準
JFCE 0050-2017 防火フード 防火フードの技術上の基準
JFCE 0060-2017 活動服 消防活動服の技術上の基準

 

一般社団法人日本消防服装・装備協会の品質確認済みマーク

 


 

取材協力:一般社団法人日本消防服装・装備協会

写真・文:木下慎次

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