国際緊急援助隊救助チーム 総合訓練

 海外の大規模災害に対して派遣される国際緊急援助隊救助チームの実践的な総合訓練が、兵庫県広域防災センター等を舞台に3月11日~13日まで実施され、隊員らが交代しながら夜通しで過酷な活動を繰り広げた。また、全国から200名を超える関係者が視察に訪れた。
 救助チームでは高度な能力を維持するとともに即応力の向上を図り、あわせて国際基準で定められた捜索・救助手法を実働で確認することを目的として、年1回、総合訓練を実施している。訓練は実際の災害を想定したシミュレーション訓練として、国内での参集から現地での任務解除まで一連の流れが再現される。今回の訓練には隊員73名と救助犬4頭が参加。3月11日の朝に成田空港を想定したJICA関西に参集し、結団式の後に出発。同日午後に被災国を想定した兵庫県広域防災センターに到着すると昼夜を通して現場活動を展開し、48時間ノンストップで訓練が行われた。

 救助隊員らは救助犬や画像探索機などを活用して捜索を実施。その後、鉄筋コンクリート製の壁や梁等を突破して建物等へ進入を図り、救出を行う。梁破壊では新手法である「ステップカット」が初採用された。まずエンジンカッターにより梁上面に碁盤の目の切り込みを入れ、電動ハツリ機で小さなブロックとして切り出す。梁を「薄く」することでダイヤモンドチェーンソーのブレードが下端まで届くようになると一気に切断し、出来上がった大きなブロックを転がして除去する。訓練ではこうした新手法も試される。
 シミュレーション訓練は過酷な環境下での活動を再現すべく、高負荷で状況が設定されており、1つのサイトで10時間の活動想定ということも珍しくない。加えて、今年は「内部進入中の救助隊員が余震に伴う二次崩落で負傷し、内部に取り残される」という隊員事故想定や、医療隊員による「要救助者の四肢切断」といったハードな想定も盛り込まれているのが印象的だった。

 救助隊員らと行動を共にし、被災した建物内で安全に救出活動が実施できるかについて助言を行うのが構造評価専門家だ。この助言をより確実なものとするため、建物倒壊のわずかな動きを自動計測するシステムや、進入隊員が撮影した映像をリアルタイムに建物外で確認できる装置が新たに導入され、今回の訓練で活用された。
 また、団長や副団長等からなる指揮本部では、救助活動方針、安全管理計画の策定や他国の救助チームとの活動調整といった国際連携を実施。JICA職員からなる業務調整員は宿営地の設営や物資調達・輸送などのロジスティックス及び国際調整支援を担うなど、こちらも実際の派遣と同じ動きを行った。

 JDR救助チームを構成する隊員が一堂に会し、実際の派遣と同様の流れを訓練することで個々の特性を活かすとともに、チーム内外のコミュニケーション強化やチームの総合力強化が図られた。同チームでは総合訓練の結果を踏まえ、より充実した、高いレベルのチームづくりを引き続き進めていくという。

 

国際緊急援助隊 救助チームとは?

国際緊急援助隊(Japan Disaster Relief Team。以下、JDR)救助チームは、主に地震で倒壊した建物等に取り残された要救助者の捜索・救助を目的としており、外務省、警察庁、総務省消防庁、海上保安庁、医療関係者、構造評価専門家、JICA等の70名(標準総勢)で構成され、災害の種類や規模、被災国の要請に応じて派遣される。また、JDR救助チームは国際捜索救助諮問グループ(INSARAG)から「重(へビー)級」の認定を受けており、救出困難な現場に投入される。

  • 集結した隊員らは活動服に着替え、メディカルチェックを受ける。
  • 幹部ミーティングが行われ、部隊編成も決められる。
  • 全隊員が参加しての結団式の様子。
  • 2個小隊により救助活動を行う可能性があるサイトの特定を行うASR2が実施される。
  • 救出に時間を要する要救助者に対し、医療隊員により輸液が行われる。
  • 立体駐車場の倒壊現場想定では車両内CSRを展開。
  • 安定化を図りながら瓦礫内部を進む。
  • 不安定な建物に対するショアリングを行う。
  • 隊員事故を想定した場面。
  • 救助犬によるサーチを実施。
  • 今回の訓練ではコンクリート梁を破壊する新手法として「ステップカット」を採用。まずはエンジンカッターで切り目を入れる。
  • 四肢切断に近い状態の要救助者に対応するため現場随行の医療班員と救助隊員がサポートし、メディカルマネージャー自らが処置にあたる。

 


 

取材協力:独立行政法人国際協力機構(JICA)/国際緊急援助隊事務局

写真:伊木則人/田中香寿美/木下慎次

文:木下慎次


初出:2019年07月 Rising 夏号 [vol.14] 掲載

pagetop