第16回 さぬきメディカルラリー
メディカルラリーとは模擬的にリアルな救急現場(外傷、内因性疾患、集団災害等)を再現し、医師、看護師、救急救命士、救急隊員等がチームを組み、お互いの専門分野を活かしながら、いくつかのステージ(模擬救急現場)に対応し、ポイントを競い合うというもの。異職種の人たちが一緒に活動することにより、救急・災害現場における活動の共通認識を持つことができるのが特徴です。また、職種の壁を越え理解を深めることにより、災害現場等に出動した際、お互いの専門分野を活かした連携活動がスムーズに行えるようになることが期待でき、現在では全国で様々な形で開催されています。
さぬきメディカルラリーは2004年6月に第1回を開催。中四国を中心に、北は東北から南は九州、さらには台湾といった海外から、救急や災害医療に興味がある医療関係者、消防関係者、一般市民等が参加しています。第16回目となるさぬきメディカルラリーは「2nd season」として、乙宗佳奈子実行委員長を中心に実行委員のメンバーの再編成を行い、2019年5月25日・26日の2日間にわたり香川県坂出市内の休暇村讃岐五色台を舞台に実施されました。
同ラリーでは4ステージのラリーシナリオに加え、様々な分野に焦点を当て、楽しみながら学ぼうと企画されており、講演などを含め毎回2部~3部で構成されています。今回は初日に第1部として4ステージのラリーシナリオ、2日目に第2部として講演(3題)が行われました。
ラリーはチャレンジャーチームが4シナリオに挑戦。各チームは医師1名、看護師1名、救急救命士1名、他1名の計4名で構成され、全国から8チームが参加。ひとつのシナリオの基本活動人員は3名で、救急隊や医療班の出場現場における状況評価、判断、現場処置を中心に考えられており、1ステージの活動時間は15分。この間に現場到着し、関係者への接触、車内収容、病院連絡といった一連の現場活動を実施。それぞれのシナリオに沿った採点基準によって評価を受けるというものです。
今回はラリーの拠点となる休暇村五色台の宿泊施設や約1kmのエリア内に点在するクラフトハウス、オートキャンプ場などに模擬救急現場を設定。想定内容は生命誕生の瞬間である「周産期シナリオ」、SMR(脊椎動揺の制限)の必要性を判断する「交通事故シナリオ」、局地的災害による「多数傷病者シナリオ」、生命の終末期を考える「DNARシナリオ」など多岐にわたり、チャレンジャーだけでなくスタッフにとっても貴重な経験を得る機会になったのではないかと思います。
1日目の夜にはラリーの順位発表が行われ、愛媛・千葉・福岡・島根の4県からさぬきメディカルラリーを楽しむために集結したという混成チーム「TRINITY NEO」が優勝。チームコンセプト「NEO、さぬきから未来に想いを繋げたい!」の言葉どおり、存在感溢れる活動は各シナリオスタッフにとっても学び多きものとして高い評価を得ました。
結果発表に続いては、こちらも同ラリーの「名物」といえる大懇親会が行われ、チャレンジャーチームやスタッフなど総勢150名が参加。各チャレンジャーチームによるパフォーマンスによりに大いに盛り上がりを見せました。
ラリー2日目の第2部は学びを深める時間として、「香川県の事後検証システム」についてや「平成30年7月豪雨」について、そして「終末期医療の倫理の基礎とDNARの倫理」などについての講演が行われました。
令和の時代を迎え、挑戦・サポート・癒し・学びのすべてを体験できる「2nd season」という新たなフェーズに突入したさぬきメディカルラリー。その進化に、今後もご注目下さい。
本記事は訓練などの取り組みを紹介する趣旨で製作されたものであり、紹介する内容は当該活動技術等に関する全てを網羅するものではありません。 本記事を参考に訓練等を実施され起こるいかなる事象につきましても、弊社及び取材に協力いただきました訓練実施団体などは一切の責任を負いかねます。 |
投稿:さぬきメディカルラリー実行委員会
初出:2019年10月 Rising 秋号 [vol.15] 掲載