第18回 夜間山岳捜索救助講習会

 JRSP・日本救助技術標準化プロジェクトとして「令和」最初の講習会は、出雲富士とも言われる広大な伯耆大山(ほうきだいせん)の麓において開催された。

 講習会1日目は、救命の確率をあげるため、いち早く行方不明となった人の元にたどり着く捜索技術と、発見後に危機的環境からの悪化を防ぐための保温処置などを学ぶ。通報から救出までのプロセスを最新の捜索救助資器材などを使いこなすことによって、環境的に負荷がかかる夜間帯にあっても、これまで以上により安全に、さらには効率的・効果的な捜索救助活動が展開できる可能性を秘めた実技講習内容であった。また、座学ではGPS(GNSS)の基本知識・捜索の優先順位・山岳遭難するトリガーを理解し発見につなげる方法・UAV(ドローン)を山岳捜索で活用する方法・大規模災害でも実績のある災害対応支援地図の作成方法なども学ぶことができる。これらの技術は現場の声を反映すべく、JRSPが国の研究者と共同で研究を重ねてきたものであり、災害対応の初動活動を大きく変え始めている。

 2日目は、UAV技術や無線の技術に精通するスタッフ陣がドローンスクールなどでは学ぶことのできない「消防ドローン」として知らなければいけない伝搬リスクなどをレクチャー。また、オプション企画として行われた「消防活動における無線機の活用と無線の基礎知識」については、消防歴20年を超える隊長たちでも初めて触れる内容であり、好評だった。

 誰もが当たり前に持っている携帯電話。遭難者からの通報は、その携帯電話からなされる。つまり、通報時に位置情報を取得でき、救助者もGPSなどを駆使すれば、夜間であっても速やかに捜索ポイントに到達することができると言うわけだ。様々なGPS機能を活用した捜索技術を体感した参加者は、そんな時代の変化を肌で感じ、そして確かな手ごたえを掴んだようだ。

 

■日本救助技術標準化プロジェクト(JRSP)

様々な人命救助の技術を持ち寄り、日本風土に合った技術を研究するために活動を行う。高度消防救助技術を標準化するために様々な勉強会を開催しています。

事務局連絡先(安藤):jrsp.rescue.standard@gmail.com

 

  • 携行可能なアイテムによる効果的な保温処置を学ぶ。
  • 担架に保温材を重ねて使用する例。
  • 捜索訓練では緯度経度の座標データを聞く。
  • 端末に座標データを入力する。
  • GPS端末を手に山道を進む。
  • 座標のポイント付近に到着。へーリングでコンタクトを図る。
  • 要救助者を発見。直ちに救出を開始する。
  • 安全な場所まで一次救出を完了。要救助者を縛着し直してから下山に入る。
  • 第二想定は要救助者が右足を負傷し歩行不能という設定で実施。
  • 要救助者と接触し、確保。直ちに救出準備に入る。
  • 無線により救出側との連携を図りながら活動を進める。
  • 下山時は搬送隊員の負担を考慮し適宜交代しながら進む。

 


 

本記事は訓練などの取り組みを紹介する趣旨で製作されたものであり、紹介する内容は当該活動技術等に関する全てを網羅するものではありません。
本記事を参考に訓練等を実施され起こるいかなる事象につきましても、弊社及び取材に協力いただきました訓練実施団体などは一切の責任を負いかねます。

 


 

取材協力:日本救助技術標準化プロジェクト(JRSP)


初出:2020年1月 Rising 冬号 [vol.16] 掲載


pagetop