令和元年台風第19号 ~現地レポート~
2019年(令和元年)10月6日3時にマリアナ諸島の東海上で発生した台風19号(令和元年台風第19号/ハギビス)は、非常に強い勢力を保ったまま12日19時前に伊豆半島に上陸。台風の接近に伴い西日本から東日本の太平洋側を中心に激しい雨が降り、12日15時30分に群馬県・埼玉県・東京都・神奈川県・山梨県・長野県・静岡県、同日19時50分、宮城県・福島県・茨城県・栃木県・新潟県に、13日0時40分、岩手県に大雨特別警報が発表された。関東地方や北陸地方では13日未明まで、東北地方では13日明け方まで広い範囲で雷を伴った猛烈な雨や非常に激しい雨が降り、また、12日から13日にかけて北日本から東日本の太平洋側を中心に、広い範囲で非常に強い風や猛烈な風が吹き、記録的な暴風となった。
政府はこの台風の被害に対し、「激甚災害」や台風としては初となる「特定非常災害」、「大規模災害復興法の非常災害」を適用。災害救助法適用地域は14都県390市区町村(2019年11月1日現在)に及び、東日本大震災を超える過去最大の適用がなされた。
2018年(平成30年)に気象庁が定めた「台風の名称を定める基準」における浸水家屋数の条件に相当することから、同庁は台風19号の名称を令和2年5月までに定める方針を決定。台風に名前が付けられるのは1977年の「沖永良部台風」以来42年ぶりとなる。
今回の台風では広域的に大雨特別警報レベルの雨が降ったことから各地の河川が増水し、堤防決壊や越水が同時多発的に発生。長野県長野市では千曲川の堤防が決壊し、家屋への浸水や農作物への深刻な被害を招く結果となった。また、犠牲者の多くが屋外で被災するケースが多く、中でも避難や帰宅の最中に車の中で被災し犠牲となったケースが多いことがわかり、早期避難の重要性が改めて浮き彫りとなった。そして記録的な大雨の影響で土砂災害も多発。山間部や丘陵地では土砂崩れによる道路寸断などにより各地で孤立エリアが発生してしまい、消防や警察、陸上自衛隊による捜索活動や行政による被害状況の確認、関係機関によるライフラインの復旧作業に大きな影響を与えた。
台風19号のみならず、その前後に台風15号、21号と立て続けに3つの台風の被害を受けたのが千葉県だ。台風19号が襲来する1か月前、2019年9月9日5時前に千葉市付近に上陸し猛威を振るった台風15号による爪痕が癒えぬ同県においても深刻な被害をもたらした。台風15号の記録的な暴風により千葉県内では家屋損壊が続発。吹き飛ばされた屋根や割れた瓦などへの応急処置もままならぬうちに台風19号が襲来したことで被害を拡大させた。さらに、千葉県市原市永吉地区では12日午前8時頃に突風が発生。一瞬にして全壊12棟を含む89棟の住宅被害が出た。気象庁によるその後の調査でこの突風は竜巻と推定された。竜巻は大気が不安定になった時に起きやすく、台風の接近時や通過後に発生することがある。今後は大雨、暴風、高潮やそれに伴う土砂災害や浸水といった事象だけでなく、竜巻にも従来以上に警戒していかねばならないといえるだろう。
氾濫などによる浸水範囲は2018年に発生した「西日本豪雨」を超え、現在でも復旧復興活動が続けられている。
初出:2020年1月 Rising 冬号 [vol.16] 掲載