令和2年度 広島市総合防災訓練
広島市の総合防災訓練が令和2年9月4日に市内3カ所を会場に実施された。この訓練には消防や警察、自衛隊、民間企業など9機関から計約200名が参加し、人命救助を含む災害応急対策の手順を確認した。
広島市では毎年、原則として防災週間(8月30日~9月5日)期間中に防災関係機関等の協力を得て、広島市総合防災訓練を実施している。この時期に開催される訓練は地震による大規模災害を想定したものが一般的だが、広島市では平成26年8月豪雨災害や西日本豪雨災害(平成30年7月豪雨災害)の教訓を踏まえ、風水害想定を3年に2回、地震想定を3年に1回というかたちで実施している。
今年の訓練は風水害を想定したもので、土砂災害による家屋倒壊現場からの捜索・救助・救護訓練を広島市消防局西風新都消防訓練場にて行うとともに、早期送電・道路啓開訓練を佐伯運動公園付近一帯(広島市佐伯区)、透析病院等への応急給水訓練を市内最大規模の透析患者用ベッド数を備えた大町土谷クリニック(広島市安佐南区)で実施。平成25年度より展示式の訓練からブラインド型の訓練とし、現在の災害対応能力向上を強化するスタイルへシフトさせている。
西風新都消防訓練場で行われた捜索・救助・救護訓練には広島市消防局と広島市消防団に加え、廿日市市消防本部、広島県警察、日本赤十字社などが参加。また、今年から総務省消防庁無償使用車両として広島市消防局に配備された災害活動用重機も訓練に参加した。
訓練の想定は「停滞した前線付近で雨雲が発達したため豪雨となり、市内各地において土砂災害等の被害が発生。現有消防力では対応困難との判断により、広島県内消防相互応援協定に基づく応援要請、緊急消防援助隊の派遣要請、陸上自衛隊への災害派遣要請、中国地方整備局への災害派遣要請などがなされている。そうした中で、佐伯区石内南五丁目において、土石流による大規模な土砂災害が発生し、多数の家屋が倒壊、連絡が取れない者が大勢いるとの情報があり、広島県警察各隊、広島市消防局各隊等が出動する」というもの。
最先着の安佐南消防団が現場到着すると、土石流により建物が3棟全壊し1棟が孤立、車両2台が埋没しており、埋没建物付近に負傷者数名を確認した。また、発見した要救助者からの情報により、埋没建物付近に歩行困難の要救助者3名がおり、倒壊建物3棟とも要救助者がいる可能性があると判明する。これら情報は後着の消防署部隊に伝えられ、さらに応援で駆け付けた廿日市市消防本部や広島県警察の隊員らにも共有。広島市消防局が設置した現地合同指揮所において各機関の活動を協議・調整しつつ、救助活動が展開される。
倒壊建物3棟に対してはそれぞれを広島市消防局、広島県警察、廿日市市消防本部の部隊が担当。1階部分が土砂に埋まり進入可能な開口部がないため、屋根上に開口部を設定するなどして活動が進められた。また、車両は埋没しており、車内捜索すらできない状況。そこで、ゾンデ棒により周辺土砂内に要救助者の存在がないか確認した後、重機を投入。車両を覆う土砂を除去し、捜索と救出を行った。
現場では応援で駆け付けた日赤救護班が活動を展開。救出された負傷者に対し現場救急隊と連携して応急手当やトリアージを行うとともに、医療機開への搬送調整を実施した。
コロナ禍という厳しい状況の中で行われた今回の訓練。関係機関との連携を深め、また、新装備による活動能力の向上が確認できたようだ。
本記事は訓練などの取り組みを紹介する趣旨で製作されたものであり、紹介する内容は当該活動技術等に関する全てを網羅するものではありません。 本記事を参考に訓練等を実施され起こるいかなる事象につきましても、弊社及び取材に協力いただきました訓練実施団体などは一切の責任を負いかねます。 |
取材協力:広島市/広島市消防局
写真:伊木則人
文:木下慎次
初出:2021年1月 Rising 冬号 [vol.20] 掲載