令和2年度 尾三消防連絡協議会合同訓練
愛知県の尾三消防本部が管轄する5市町(豊明市、日進市、みよし市、長久手市、愛知郡東郷町)の各消防団と尾三消防本部により組織する尾三消防連絡協議会では、同地域の消防機関相互の連携強化、連絡強調及び災害時の消防活動の向上並びに消防思想の普及徹底を図り、消防体制の充実強化を推進することを目的に、毎年消防訓練や視察研修、防災講演会などを行っている。
全国的に新型コロナウイルス感染症の拡大防止に配慮し、消防訓練などの中止が続いているところだが、消防体制の充実強化に向けた歩みを止めるわけにはいかない。こうした現実をしっかりと見据え、同連絡協議会ではWithコロナ時代の新たな分散型訓練スタイルとして、各地の消防署で訓練を同時開催する方式を採用した。
今回の訓練は「次年度の合同訓練の事前訓練」と位置づけることで、消防職員の指導を基本とし、教養と実技訓練を併用して実施するスタイルにシフト。例年の一堂に会して行うスタイルから各消防署に分散して行う方式とすることで、感染防止対策に配慮した。また、訓練は令和2年9月27日の午前9時から午前10時30分にかけ5消防署を会場に「愛知県を中心に震度6強の地震が発生し、広範囲にわたり家屋が倒壊。近隣消防団が管轄の垣根を越えて相互協力し、災害対応にあたる」との共通想定のもと、同一災害への同時対応をイメージして開催された。
訓練は5消防団それぞれに活動役割が付与され、みよし市と東郷町の消防団は「高所救助想定」、長久手市消防団は「瓦礫救助想定」、豊明市消防団は「倒壊建物救助想定」と「応急手当(トリアージ)」、日進市消防団は「応急手当(トリアージ)」というように訓練項目が割り振られた。
長久手消防署を会場に訓練を行った長久手市消防団は正副団長を含む7名が参加し、尾三消防本部の6名の職員が教官役として訓練指導を行った。実施したのは瓦礫現場を想定した訓練。瓦礫現場での捜索方法を活用して要救助者の有無を確認し、その結果を基に長久手消防署へ応援要請を行う。その後、後着の長久手消防署の消防隊と協力して瓦礫現場の狭隘空間へ進入し、要救助者を救出するという内容だ。
まずは捜索活動訓練として瓦礫現場における人的基本捜索(ベーシックサーチ)について消防職員から教養を受け、瓦礫内部の要救助者の検索にあたる。続けて、車庫内のピットを瓦礫内に見立ててCSR(狭隘空間での救助活動)訓練が行われる。事前に平面にてCSR活動について教養を受けた後、後着の消防隊と協力し狭隘空間の要救助者をバックボード等を使用し救出する一連の流れを行った。両輪となり現場対応にあたる消防団が、瓦礫内部でどのような手法により救出活動を展開しているかを理解するということは、連携強化を図る上で重要なことといえるだろう。
多人数の密集を避けられぬ従前の大規模訓練の実施が困難な現状を受け、今だからできる訓練スタイルを採用したことで、より深い知識と技術に触れる機会を生み出した尾三消防連絡協議会による令和2年度の合同訓練。ピンチをチャンスに昇華させた取り組みとして注目の訓練となった。
本記事は訓練などの取り組みを紹介する趣旨で製作されたものであり、紹介する内容は当該活動技術等に関する全てを網羅するものではありません。 本記事を参考に訓練等を実施され起こるいかなる事象につきましても、弊社及び取材に協力いただきました訓練実施団体などは一切の責任を負いかねます。 |
協力:長久手市役所安心安全課/尾三消防連絡協議会/尾三消防本部
文:木下慎次
初出:2021年1月 Rising 冬号 [vol.20] 掲載