第6回緊急消防援助隊全国合同訓練
緊急消防援助隊は阪神・淡路大震災を契機に大規模災害などが発生した際に被災した都道府県内の消防力では対応が困難な場合に、全国の消防機関相互による援助体制を構築するため平成7年に創設された。以降、国内で発生した大規模な災害に対し、これまでに43回の出動実績がある。総務省消防庁では、緊急消防援助隊の活動技術や指揮・連携能力などの向上を目的に、創設以来おおむね5年に1回、全国の緊急消防援助隊が一同に会して行う全国合同訓練を実施しているが、第6回目となる今回の訓練は新型コロナウイルス感染拡大の影響により、2015年に千葉県で実施された第5回目訓練から7年ぶりの実施になった。
この訓練にはすべての都道府県から約700隊・約3000人の緊急消防援助隊が参加。また、消防団、警察、自衛隊、海上保安庁、DMAT等の実動機関も参加し、過去最大規模で訓練が行われた。訓練想定は近年発生が危惧され大きな被害が見込まれている南海トラフ地震を想定。遠州灘などを震源とするマグニチュード8クラスの地震が発生し、静岡県内では津波や土砂災害、火災などが多発し、広範囲に甚大な被害があったとして、緊急消防援助隊が投入されたというもの。訓練は2022年11月12日~13日にかけて行われ、初日は静岡市清水区や浜松市西区など4会場で、2日目は牧之原市の静岡空港西側の県有地に設置したメイン会場において活動が展開された。
2日目に行われた訓練では、メイン会場を静岡市消防局と志太広域事務組合志太消防本部の管轄区域に見立て、静岡市消防局管内事案として「中高層建築物救出訓練」「毒劇物漏洩災害対応訓練」「地下街崩落事故救出訓練」「土砂災害対応訓練」の4想定、志太消防本部管内事案として「列車脱線事故救出訓練」「木造家屋倒壊救出訓練」「多重衝突事故救出訓練」の3想定がそれぞれ実施された。
今回の訓練の特徴であり注目を集めたのが「土砂災害対応訓練」だ。地震により土砂災害が発生し住宅や乗用車が押しつぶされたとの想定で行われたこの訓練では、2019年に新設した「土砂・風水害機動支援部隊」の実効性、国内で多発する土砂・風水害対応の特殊装備として整備が進められる「津波・大規模風水害対策車(水陸両用バギー)」、「大型・中型水陸両用車」、「重機」などの有効活用、自衛隊・警察・TEC-FORCEなどの他機関連携の検証などもテーマとして行われた。
今回の訓練で得られたデータをもとに、総務省消防庁では部隊活動や連携についてはもちろん、参集方法などあらゆる面で改善点などを検討し、緊急消防援助隊の更なるパワーアップを目指していくことにしている。
本記事は訓練などの取り組みを紹介する趣旨で製作されたものであり、紹介する内容は当該活動技術等に関する全てを網羅するものではありません。 本記事を参考に訓練等を実施され起こるいかなる事象につきましても、弊社及び取材に協力いただきました訓練実施団体などは一切の責任を負いかねます。 |
取材協力:総務省消防庁/静岡県
写真・文:木下慎次
初出:2023年1月 Rising 冬号 [vol.28] 掲載