TRES 2022 第22回テイセン車両・資機材研修会
消防ホースや被服、防火衣、救助工作車をはじめとする防災車両などでおなじみの帝国繊維株式会社が、2022年10月27日~28日にかけて栃木県下野市にある同社下野工場にて第22回テイセン車両・資機材研修会「Teisen Rescue Equipment Seminar 2022」(TRES 2022)を開催した。前回の開催は2019年で、新型コロナウイルス感染症の影響をふまえて中止が続き、実に3年ぶりの開催となった。
これまで、TRESは救助工作車をはじめとする各種防災車両と消防ホースの生産を一手に担っていた鹿沼市にある鹿沼工場で行われていたが、大規模自然災害が頻発する中、次世代型の防災車両の開発・製造をより一層強化すべく、帝国繊維株式会社では2020年3月に、下野市内に約7万5000平方メートルの土地を取得。鹿沼工場を遠距離送水や大量排水に活用される大口径ホースの製造も可能なホース専用工場へバージョンアップを図るとともに、防災車両の生産拠点として新たに下野工場を開設した。
この新工場において、装いも新たに開催された今年のTRES。広大な敷地と車両・装備のテスト用施設などをフル活用して随所でバージョンアップが図られた。会場では新型救助工作車の完成車両はもちろん、海水利用型消防水利システム(ハイドロサブポンパー4000)や屈折ブーム付を含む3台の空港用化学消防車(ローゼンバウアー社製)が展示され、シャーシメーカーやキャブ改造メーカー、警光灯メーカー、照明やクレーン、ウインチといった主要装備メーカー、そして積載物である救助資機材の取り扱い業者などによる展示も大々的に実施。また、複合災害訓練場にて多様な災害を想定した各種デモや、新車両工場の見学ツアーも行われた。
研修会の目玉となるのが車両破壊の体験訓練。本国のLUKAS社からインストラクターを招き、最新のバッテリー駆動式大型油圧救助器具であるLUKAS「eDRAULIC」により、カッターでのピラー切断やスプレッダーでのドア開放、ラムシリンダーによるダッシュボード拡張など一連の車両破壊を体験。訓練に使用されたのは最新式で、バッテリー駆動式大型油圧救助器具でありながら水中使用が可能で、さらに海水にも対応した「e3シリーズ」が登場。加えて今後日本でも販売が開始される超小型の電動式ラムシリンダー「R320 e3」も訓練に使用された。コンパクトなボディーであるため、例えば運転手の足の間に設定してステアリングコラムを押し上げるといった使い方も可能になる。この体験訓練には2日間で140名のレスキュアーが参加した。
また、新たな試みとして行われたのが車両落下による衝撃再現実験。これは実際に走行させて衝突させるのではなく、クレーン車で車両を吊り上げ、落下させることでその高さにより衝突時の衝撃を再現する実験。体験訓練で破壊した車両が、実際にどのような衝撃を受けたかをイメージしやすくするために企画されたもので、今回は地上8メートルからの落下、つまり時速50キロで壁に衝突した時と同等の衝撃を再現した。フロントを地面に向け縦吊りにした車両が落とされると、着地と同時に周囲に激しい音と衝撃が伝わる。しかし、落とされた車両にはピラーの変形などはなく、車両破壊をせずともドア開放が可能な状態。つまり、車両破壊によるアクセスや挟まれ解除などを要する事故車両ではこれ以上の高速度での衝撃が加わっているということだ。このように、従来の車両破壊体験に衝撃再現実験をプラスすることで、その技術がどういった場面で用いられるものかを感覚的に理解できるよう新たに行われたのだ。
大規模自然災害が続発する今だからこそ、最新の装備や活動技術を知っておきたい。そうしたレスキュアーたちの篤き想いに応えるべく、細部にわたってバージョンアップが図られた今年度のTRESは大盛況のうちに幕を閉じた。
出展報告株式会社ライズは TRES 2022 に出展させていただきました。 |
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テイセン車両・資機材研修会「Teisen Rescue Equipment Seminar」開催を記念して、TeisenとRISEのコラボレーションによる限定オリジナルグッズが登場!
初出:2023年1月 Rising 冬号 [vol.28] 掲載