GRIMP JAPAN 2023
日本国内で最大規模のロープレスキュー競技会であるGRIMP JAPANの第3回目の大会「GRIMP JAPAN 2023」が、2023年3月17~19日の3日間、徳島県三好市で開催された。
前回の兵庫県広域防災センターで開催された第2回大会は新型コロナウイルス感染拡大の状況を鑑みて海外チームの受け入れを行わずに開催されたが、今大会ではイギリス「Intervention Rescue」、カナダ「Ronin Rebels」、スペイン「Expeleosocorro Sin Fronteras」、台湾「HEART RESCUE」、香港「HKRU RESCUE TEAM」など5カ国から5つのチームが参加。国内チームも北は青森県、南は沖縄県まで、混成チームも含めて21の都道府県から19チームが集結。国内外あわせて24チームが出場する、ロープレスキューの国際大会と呼ぶにふさわしい規模となった。
また、大会には2022年の世界大会(GRIMP DAY)で見事優勝した「JAPAN WEST 9PM」や上位の成績を残した海外チームも出場するとあり、世界レベルのレスキューを間近で目にしようと参加者と見学者を合わせ3日間で延べ2000人近い人たちが徳島県三好市に集結し、大いなる盛り上がりを見せた。
大会競技は18日~19日の2日間で計10想定を実施。いずれも開催地である徳島県三好市の大自然の中で、その環境下で発生しうる事故想定となっており、参加者は救助活動の安全性や迅速性を競い合う。競技は実災害での活動を意識し、活動に使用する装備は全て自分たちで選定したものを持ち込み、初めての場所において、その場で示された想定に対処するというブラインド型の実戦方式。道路距離で約5kmのエリア内に点在する5つの「現場」に順次対応する形で実施された。
例えば、「R-1」想定の会場となる「青雲橋」は世界初の自碇式PC複合曲弦トラス道路橋で、橋から水面までの高さは約50m。この橋上から進入を図り、宙づり状態の要救助者を救出する。また、「I-1」想定の会場となった三好市役所山城支所では8階建てのビルに相当する高さ・環境を活かした低所からの救出が行われる。このように、開催地自治体の全面協力のもとに地域特性をフルに活かした想定作りがなされていた。
さらに、「G-2」想定では高所から降下を図り、そのまま立て抗に進入して救出を行う想定や、「P-2」想定では河川でのラフティングボートを活用した想定など、これまでにないスケールの「現場」が用意された。
この大会は救助技術を競うと同時に、その救助技術を共有することを大きな目的として行われている。そして、参加した選手に限らず、見学者など会場に訪れたすべての人が皆でアップデートを図れる場を目指しているのだ。実際、各会場では見学しながら「この想定を自分たちならどう対応できるか」について考え、話し合う姿が多く見られた。
篤き想いを胸に集結したレスキュアーたち。参加者、そして見学者を問わず、すべての人々に大きな成長を与え、GRIMP JAPAN 2023は幕を閉じた。
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本記事は訓練などの取り組みを紹介する趣旨で製作されたものであり、紹介する内容は当該活動技術等に関する全てを網羅するものではありません。 本記事を参考に訓練等を実施され起こるいかなる事象につきましても、弊社及び取材に協力いただきました訓練実施団体などは一切の責任を負いかねます。 |
取材協力:GRIMP JAPAN 実行委員会
写真・文:Rising取材班
初出:2023年4月 Rising 春号 [vol.29] 掲載