NFPAジェネラルユース資器材でのDMDB等における落下試験
昨今、日本の消防における「ロープレスキュー」は目覚ましい発展を続けており、その主流は10.5mmや11mmのロープ、ギアは「クラッチ」や「ID」を使用したツーテンションロープシステム(2つのラインへ均等に荷重をかけるシステム)となっている。
福岡県の糸島市消防本部では令和元年度からカーンマントルロープとその関連資器材を現場導入しているが、ロープは非常に強度の高いNFPAジェネラルユースのハーフインチ、ギアも同様にNFPAジェネラルユースのものを使用し、システムはDMDB(メイン専用・ビレイ専用)システムを組んでいる。
NFPAジェネラルユースの資器材は、誤解を恐れずに言うならば「扱いやすい資器材」と言える。同本部は小規模であり、救助隊以外の隊員もロープレスキュー活動に関わってくるため、資器材には「高い安全マージンをとっておくべき」という考えのもと現在の状況になっているという。
同本部が標準手法として行うNFPAジェネラルユース資器材でのDMDB、そしてそのビレイ方法の「タンデムプルージック」といった資器材や手法を採用する消防本部は全国的にも非常に少なくなっており、ゆえに、関連する情報も多くないという実情がある。
こうした背景のもと、同本部の職員有志らで活動する「糸島市互助会サークル・登山部」では、DMDBのロープシステムにおいて、メイン破断時のビレイの衝撃荷重を知り、今後の資器材選定の参考とすることや新たなビレイ方法の検証をすること、ツーテンションロープシステムの検証をすることを目的として、令和5年9月22日に糸島市消防本部訓練棟において独自の「落下試験」を行った。
試験の内容は「タンデムプルージックの衝撃荷重測定」「VTプルージックの衝撃荷重測定」「一部荷重分担ビレーの荷重測定」「ツーテンションロープシステムの荷重測定」など。本試験ではより正確なデータを収集するため、計測のスペシャリストである株式会社東京測器研究所の協力により、最新鋭の計測機器や専門的な計測技術を駆使して実施されている。
「全国的には少数かと思うが、私たちと同様の資器材及び手法でロープレスキューを展開している本部もあると思う。そうした本部にとって、今回得られたデータは有益かつ貴重なものになるのではないか。共有し役立てていただきたい」と、試験を主催した登山部代表の谷之木勤任 (たにのきゆきと)氏は話す。
試験結果とデータダウンロード
○試験日時:
令和5年9月 22 日(金) 13 時から 17 時
○試験場所:
糸島市消防本部訓練棟(福岡県糸島市前原1783-1)
※エッジ については金属養生あり
〇主催
糸島市互助会サークル「登山部」
〇協力
株式会社東京測器研究所 中島氏
test1:タンデムプルージックビレー
○内容:
3mロープ・1m余長落下・約200㎏
○天候:
曇り時々小雨
○使用資器材:
HTPスターリンハーフインチロープ(中古)
8mmプルージックコード(新品)(CMCレスキュー)
test2:VTプルージックビレー
○内容:
3mロープ・1m余長落下・約200㎏
○天候:
曇り時々小雨
○使用資器材:
HTPスターリンハーフインチロープ(中古)
8mmVTプルージックコード(新品)(ブルーウォーター)
test3:一部荷重分担ビレー
○内容:
エイト環(キャニオニングモード)+プルージック)
(サムズアップ、下げ作業時の落下)約200㎏
○天候:
雨
○使用資器材:
HTPスターリンハーフインチロープ(中古)
レスキューエイト(CMCレスキュー)
8mmプルージックコード(新品)(CMCレスキュー)
test4:アサップロックビレー
○内容:
下げ作業時の落下・約200㎏
○天候:
曇り時々小雨
○使用資器材:
HTPスターリンハーフインチロープ(中古)
アサップロック(新品)(ペツル)
test5:ツーテンションロープシステム(MPD)
○内容:
下げ作業時の落下・約200㎏
○天候:
曇り時々小雨
○使用資器材:
HTPスターリンハーフインチロープ(中古)
本記事は訓練などの取り組みを紹介する趣旨で製作されたものであり、紹介する内容は当該活動技術等に関する全てを網羅するものではありません。 本記事を参考に訓練等を実施され起こるいかなる事象につきましても、弊社及び取材に協力いただきました訓練実施団体などは一切の責任を負いかねます。 |
情報提供:糸島市互助会サークル・登山部(糸島市消防本部職員有志)
初出:2024年4月 Rising 春号 [vol.33] 掲載
(※この記事はRising掲載記事を補完したWeb完全版です)