第45回中国地区消防救助技術指導会 熱戦レポート

 

2016年7月20日(水)、中国地方にある岡山、鳥取、広島、島根、山口の5県から救助隊員らが集結し、広島県消防学校(広島市安佐北区倉掛二丁目33番2号)において第45回中国地区消防救助技術指導会(主催 :一般財団法人全国消防協会中国地区支部)が開催されました。この大会には各県の予選を勝ち抜いた47消防本部から472人の隊員が参加。日頃の訓練の成果を競いました。

中国地区消防救助技術指導会は、救助技術の高度化に必要な基本的要素を練磨することを通じて、消防救助活動に不可欠な体力、精神力、技術力を養うとともに、消防救助隊員が一堂に会し、競い、学ぶことを通じて、他の模範となる消防救助隊員を育成し、市民の消防に寄せる期待に力強く応えることを目的としています。

 

陸上の部

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訓練棟などを舞台に繰り広げられる陸上の部では、「ロープ応用登はん」「はしご登はん」「ロープブリッジ渡過」「ほふく救出」「障害突破」「ロープブリッジ救出」「引揚救助」の7種目が実施されました。

 

 

 

 

水上の部

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水上の部では「複合検索」「基本泳法」「溺者搬送」「人命救助」「溺者救助」「水中結索」「水中検索救助」「技術訓練」の7種目に加え、「技術訓練」が実施されました。

 

技術訓練(水上の部)

技術訓練は第35回大会からスタートしたもので、定められた手法・資機材に縛られず、創意工夫のもと安全・的確・迅速な訓練を発表するための新たな訓練と位置づけられています。

第45回中国地区消防救助技術指導会では水上の部において「技術訓練」を実施。 複雑多様化する災害に対応するための新たな救助方法を15分以内で発表するもので、実戦さながらの活動が2本部により披露されました。

 

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近年各地で続発する都市型水害において、多数要救助者へ迅速に対応する方法を披露したのが宇部・山陽小野田消防局のみなさんです。

訓練想定は「豪雨による河川の氾濫で、平野部の住宅街が浸水し、孤立住宅に男性2人が取り残され、救助を求めている」というもの。119番通報により出動した水難救助隊では、出動途上に隊長から「脚立及び救命ボートを使用し、水上の要救助者2人を救出する」との活動方針が下命されます。しかし、現着し付近の状況を確認したところ、要救助者は通報のあった2人に加え、道路標識につかまった母子2人を発見し、合計4人であることが判明しました。

 

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水難救助隊は要救助者全員を同時に救出すべく、活動方針を一部変更。救命ボートの定員は5人であるため、救命ボートにレスキュースレッドを組み合わせて活動を開始する。

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まずは手前に位置する道路標識につかまった母子に接触を図る。

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ライフジャケットを着装した後、幼児を先行して救出。続けて母親をボート上へ救出する。この際に役立つのが、事前にセットしておいた脚立だ。

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母子を収容したまま救命ボートを進め、通報のあった孤立建物へ向かう。ここで救出した男性2人はレスキュースレッドへ収容。これにより乗船定員に影響されることなく対応することができる。

 

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ボート操船及び水面活動隊員2人による曳航で水上搬送を実施。救出ポイントから地上へ救出する。

 

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活動に使用した救命ボートの状況。中央部にセットされた脚立(120cm)がポイントで、これにより救命ボートからの入退水が容易になり、救命ボートから陸上への移動も安全に行うことができる。

 

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レスキュースレッドは自作品を活用。レスキュースレッドとは、アメリカのハワイアンライフガードが、水上オートバイに取り付ける浮力体のこと。これを三つ打ちロープにてボートと連結。連結ロープを塩ビパイプに通すことでボートとの間隔を一定に保ち、さらに進行方向を制御しやすくしている。

 

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呉市消防局では第六管区呉海上保安部(広島県呉市)との合同潜水訓練を数多く実施しており、現場を共にする仲間として連携力や顔の見える関係構築に力を注いでいる。
この合同潜水訓練で得た、いわゆる「海猿」の知識と技術、さらにはライフセーバーの溺者救出テクニックを取り入れることで独自に発展させた水難救助が披露されました。
訓練想定は「船が座礁し転覆。水面に一部だけ出た船首部分で助けを求める人あり(要救助者1)。また、船内に取り残された人がある模様(要救助者2)」というものです。

 

 

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潜水隊員が準備を行う間、隊員2人が要救助者1の救出へ向かう。写真手前の隊員はライフジャケットを着装し、自作の緊急ロープバック(ボディーバッグにフローティングロープが収められている)を携行している。

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要救助者1が水面上に落下で助けを求めている。右に見える構造物が船首をイメージし、その内部に要救助者が閉じ込められている想定。

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すばやく入水し、要救助者1の元へ向かう。

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要救助者1を確保。すかさず救出を開始する。

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地上側から緊急ロープバックの索を手繰り寄せることで、要救助者をしっかり確保したまま迅速に救出することができる。

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この間に潜水準備が完了。要救助者2の救出に向かう。

 

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海猿との合同訓練で得た潜水活動の知識と技術を駆使し、船内に進入。要救助者を救出する。

 

 

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活動のイメージ図(大会パンフレットより抜粋)。3人の隊員が潜水を行い、船内の要救助者を救出する。

 

 

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全訓練が終了し閉会式が始まるまでの間、広島市消防局音楽隊により特別演奏が行われた。

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47消防本部から集まった472人の隊員たち。

 


 

写真・文:RISE取材班

 


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