2024島根メディカルラリー

 2024年9月28日、島根県松江市にある島根県消防学校において、2024島根メディカルラリーが開催された。このラリーは、2009年に島根大学医学部の学祭イベントとして開催された「出雲メディカルラリー」が前身となっており、現在では島根県や島根県消防長会などの後援、島根県消防学校や島根県防災航空隊、第八管区海上保安本部などの協力を得て開催されている、全国でも珍しいラリーとして広く知られている。「救急医療・災害医療・地域医療の向上」「救助・救急・医療の連携」の実現を目指して開催されており、メディカルラリーでありながら、CSRMやロープレスキューといった要素が盛り込まれ、参加者が救助活動に触れる機会を多く設けている点も特徴である。

 今回のラリーには、中国地方をはじめ、関東地方や近畿地方などから12チームが出場した。一般的にメディカルラリーでは医師、看護師、救急救命士でチームが構成されるが、島根メディカルラリーでは救助隊員がチームに加わる。これは消防と医療が良好な関係を築き、平素から連携訓練を重ねておかなければ患者を救うことができないというコンセプトによるもの。このラリー参加者に加え、スタッフとして医療や消防、警察など幅広い業種から約300人が、会場となった島根県消防学校に集結した。

 会場には、産科、小児、外傷、救助といったA~Fの模擬救急現場(ブース)が用意され、チームごとに迅速な判断と処置を競い合った。消防学校の瓦礫訓練場を使用したCSRM想定のEブースでは、実際に瓦礫内に進入して活動が行われ、参加者がCSRMを体験できる機会となった。また、産科想定のBブースでは、参加者が消防通信指令室の管制員役となり、出動場所の特定など通報者からの一連の聴取を行うところからスタート。短時間で必要な情報を聴取することがいかに難しいかを体験する機会も提供された。加えて、ラリーの最後には、Sブースとして多数傷病者事案を想定したスペシャルブースが設置され、全チームが同時進行で1つの想定に臨む珍しい取り組みが行われた。これも「救助・救急・医療の連携」を重要視する島根メディカルラリーならではの特色と言える。

 会場では、同ラリーを後援するGRIMP JAPANによってロープレスキュー講習会も行われ、消防、警察、海保、医療など様々な機関の関係者が参加し、ロープアクセスなどの基本的技術を学んだ。

 このように、救急救命に関するさまざまな場面を「体感」できるように作り込まれているのが島根メディカルラリーの特徴である。終了後には参加者から、連携の大切さを実感し、多くの発見があったとの感想が多く聞かれた。

 

  • Aブース。現着すると興奮した様子の傷病者の父親が医療チームを追い返そうとする。その後ろでは母親が「ヘルプミーハンドサイン」によりSOSの合図を送っている。
  • Aブース。室内に入ると、腹痛を訴える15歳の女性がいる。父親から受けた暴行が原因で子宮外妊娠をしてしまい、通報の3日前から頸管妊娠破裂となっていたというシナリオ。
  • Bブース。まずはチャレンジャーが119番通報の受付を行う。妻が朝から継続する腹痛を訴えていると夫からの救急要請。しかし、傷病者である妻の情報は曖昧で、あまり情報を得ることができない。
  • Bブース。現場に到着すると、傷病者は妊娠38週2日の1経産婦であることが判明。さらに、すでに児は娩出した状態だった。
  • Cブース。10歳男児、ポットの湯が体にかかったという救急要請で現場に入るが、状況や傷病者の身体所見に多くの違和感がある。実は高度脱水による循環血液量減少性ショックからCPAに至ったというシナリオ。
  • Cブース。低血圧性ショックであることを認識したら、早期に骨髄路を確保。骨髄ニードルを電動ドライバーで穿刺挿入する。
  • Cブース。傷病者の血圧が低下して続け、ショック状態が進行。CPAに陥ったら直ちに挿管し、CPRを行う。
  • Dブース。1チーム1人2分間CPRを行い、QCPR(フィードバック装置付蘇生トレーニング機材)の評価点とCCF(Chest Compression Fraction)及び印象点で得点を競う。
  • EブースはCSRM想定。左足を挟まれた男性がおり、先着のチームが保温と点滴を実施済み。救助隊との連携や救命を目指したクラッシュ症候群への対応がポイイントとなる。
  • Fブースでは、実際の救急出場と同様に指令を受け、救急車に乗り込み、現場に到着するという流れでシナリオが進む。
  • Fブース。自宅でめまいを訴え通報してきた60歳男性が横たわる。迅速確実な状況判断で外傷による症例を見抜けるかが1つのポイントとなる。
  • Fブース。ログロールを行うと、背部に木の枝による刺創が確認できた。
  • Fブース。救急車の後方にあたる自宅の庭には転倒した1.5mの脚立と剪定はさみ、切った枝、そして血痕など、何らかの事故があった形跡がある。このヒントに気付けば、外傷の可能性を疑い、素早く全身観察に移ることができる。
  • Sブースは全チームが同時進行で1つの想定に臨む、島根メディカルラリーを象徴するブース。地震により高校の体育館が倒壊し、授業中の生徒が多数負傷しているとの想定で、各チームは迅速にトリアージを実施する。
  • Sブースは全チームが同時進行で1つの想定に臨む、島根メディカルラリーを象徴するブース。地震により高校の体育館が倒壊し、授業中の生徒が多数負傷しているとの想定で、各チームは迅速にトリアージを実施する。
  • Sブースは全チームが同時進行で1つの想定に臨む、島根メディカルラリーを象徴するブース。地震により高校の体育館が倒壊し、授業中の生徒が多数負傷しているとの想定で、各チームは迅速にトリアージを実施する。
  • Sブースは全チームが同時進行で1つの想定に臨む、島根メディカルラリーを象徴するブース。地震により高校の体育館が倒壊し、授業中の生徒が多数負傷しているとの想定で、各チームは迅速にトリアージを実施する。
  • Sブースは全チームが同時進行で1つの想定に臨む、島根メディカルラリーを象徴するブース。地震により高校の体育館が倒壊し、授業中の生徒が多数負傷しているとの想定で、各チームは迅速にトリアージを実施する。
  • Sブースは全チームが同時進行で1つの想定に臨む、島根メディカルラリーを象徴するブース。地震により高校の体育館が倒壊し、授業中の生徒が多数負傷しているとの想定で、各チームは迅速にトリアージを実施する。
  • Sブースは全チームが同時進行で1つの想定に臨む、島根メディカルラリーを象徴するブース。地震により高校の体育館が倒壊し、授業中の生徒が多数負傷しているとの想定で、各チームは迅速にトリアージを実施する。
  • Sブースは全チームが同時進行で1つの想定に臨む、島根メディカルラリーを象徴するブース。地震により高校の体育館が倒壊し、授業中の生徒が多数負傷しているとの想定で、各チームは迅速にトリアージを実施する。
  • Sブースは全チームが同時進行で1つの想定に臨む、島根メディカルラリーを象徴するブース。地震により高校の体育館が倒壊し、授業中の生徒が多数負傷しているとの想定で、各チームは迅速にトリアージを実施する。
  • Sブースの想定開始に先駆け、ドッグサーチのデモンストレーションが行われた。
  • 会場ではGRIMP JAPANの協力により、ロープレスキュー講習会も行われた。

 

 


 

 


 

本記事は訓練などの取り組みを紹介する趣旨で製作されたものであり、紹介する内容は当該活動技術等に関する全てを網羅するものではありません。
本記事を参考に訓練等を実施され起こるいかなる事象につきましても、弊社及び取材に協力いただきました訓練実施団体などは一切の責任を負いかねます。

 


 

取材協力:島根メディカルラリー実行委員会

写真・文:木下慎次


初出:2025年1月 Rising 冬号 [vol.36] 掲載


pagetop