ロープレスキュー競技 全国大会 in 岩手県大船渡市 2024
去る2024年10月19日~20日の2日間、岩手県大船渡市において「ロープレスキュー競技全国大会in岩手県大船渡市」が開催された。この大会は、崖下に転落した人や高いビルの上に取り残された人を、ロープと救助資機材を使用して、安全に救助するロープレスキュー技術の安全性と迅速性を競い合うもの。同市ではこれまでも碁石海岸を舞台にした全国大会「R5」(リアスロープレスキューリサーチラリー)が開催されてきたが、コロナ禍による休止を経て、11回目の開催となった本大会では内容をリニューアル。自然地形に対する救助「ネイチャーステージ」に加え、東日本大震災からの復興を遂げたキャッセン大船渡と周辺の市街地を舞台とした都市災害に対する救助「アーバンステージ」が新たに設けられ、全国から集結したレスキュアーたちが日ごろの訓練成果を発揮して熱戦を繰り広げた。
大会には北海道、岩手県、秋田県、栃木県・福島県、群馬県、愛知県、京都府から10チーム約90人が参加し、加えてスタッフやボランティアとして約70人が大会をサポートした。また、開催地を管轄する大船渡地区消防組合消防本部も訓練アドバイザーとして全面協力し、一丸となってこの大会を作り上げた。
大会初日に行われたのは「アーバンステージ」の6想定。これは市街地で実施することで、より多くの市民に取り組みを見てもらうとともに、震災復興に対する支援への感謝を発信する機会として位置づけられた新たなステージ。想定は、JR大船渡線大船渡駅に隣接した大船渡市防災観光交流センター「おおふなぽーと」から駅前ロータリーを挟んだ向かいにある大船渡プラザホテルへブリッジ線を展張して救出するというように、実際の環境を用いた内容で組み立てられているのが特徴である。週末の市中開催ということもあり、競技中は地域住民や観光客などの多くが足を止め、レスキュアーたちの救助活動を見守り、声援を送っていた。
また、初日の最後には「フィジカル」想定として、体力や持久力などを試す内容が盛り込まれた。これはキャッセン大船渡で要救助者を救出した後、道路距離で約850m離れた位置にある加茂神社を経由して再びキャッセン大船渡へ徒手搬送を行うというもの。加茂神社は海抜40mほどの高台に位置し、東日本大震災の際も多くの人が避難した場所である。神社へ向かう石段の途中には、当時の津波到達水位5・5mの位置に表示も掲げられている。これまでの5想定で疲れ果て、さらに日も暮れたタイミングで、想定救出ルートとして当時の避難動線をたどることで、参加者に東日本大震災の教訓を追体験してもらおうという思いが込められていた。
2日目の20日には、碁石海岸において自然地形に対する救助を行う「ネイチャーステージ」の7想定が実施された。碁石海岸は岩手県大船渡市の末崎半島東南端約6㎞の海岸線で、国の名勝及び天然記念物や国立公園に指定されている。この日の想定は「海のアルプス」とも称される豪壮な大断崖や、3つの洞門を持つ「穴通磯」周辺などを舞台とし、初日と同様に実想定に基づいた活動環境の中で地物を活用してアンカーを取り、宙吊りあるいは谷底で助けを求める要救助者を制限時間内で救出すべく活動が繰り広げられた。
現場までの到達が困難な場所などで、いかに安全かつ迅速に要救助者を救出できるかを学び合う場として実施されたこの大会は、参加者だけでなく一般市民に対しても防災意識を高める貴重な機会となった。各ステージでの熱戦とその成果は、今後の災害対応能力向上に大いに役立つだろう。
![]() |
本記事は訓練などの取り組みを紹介する趣旨で製作されたものであり、紹介する内容は当該活動技術等に関する全てを網羅するものではありません。 本記事を参考に訓練等を実施され起こるいかなる事象につきましても、弊社及び取材に協力いただきました訓練実施団体などは一切の責任を負いかねます。 |
取材協力・写真提供:Tohoku Challenge Days 2024実行委員会
写真・文:木下慎次
初出:2025年4月 Rising 春号 [vol.37] 掲載