第2回 飯能消防防災フェスタ2025

お話を伺った飯能消防団団長と副団長のみなさん。

 全国的に消防団員の減少が問題となっているが、団員の確保が進まない背景として従来の操法訓練に対する身体的・時間的負担の大きさ、過酷なイメージが敬遠される要因とする声がある。昨今では、火災への出動に加え、風水害や地震などの大規模災害対応も求められるなど、災害の多様化が進んでいる。このような中、消防操法のみを短期間で集中的に訓練することは、団員一人ひとりに大きな負担を強いるとの認識が高まっている。こうした点を踏まえ、埼玉県の飯能消防団では訓練方針や操法大会の内容を大幅に見直し、2024年より新たな取り組みを開始している。

 まず、従来の消防操法に限定せず、消防団の活動全般を広く捉える意図から、大会名称を「消防技術大会」へと変更した。さらに、消防団活動の意義や団員の姿を広く市民や団員の家族に知ってもらう機会とするため「消防防災フェスタ」という広報イベントを併催するスタイルとした。

 新たなスタイルでの2回目となる消防防災フェスタ(消防技術大会)が、5月11日に飯能市役所で開催された。大会は3つの部に分かれ行われる。放水技術の部は4人1組でポンプ車や積載車を運用し、最小限の人数でも誰でも確実に1線延長し、水出しができるようにするというテーマを掲げている。実際の活動を意識し、分岐金具の使用やホースの撤収も取り入れている。また、火災現場での一連の動作を経験の浅い団員が学べる基礎訓練と位置付けており、一定のタイム内で放水と撤収ができれば減点はなく、タイム競技とならないよう配慮されている。他にホース展張の部と礼式の部が実施され、真剣な中にも楽しみながら取り組む消防団員の姿に、会場を訪れた多くの人々から大きな声援が送られていた。

 団員の確保と持続的な活動を実現するため、過度な負担を避けつつ、現実に即した訓練と組織体制の見直しを進める飯能消防団。この取り組みは、時代のニーズに即した先進的な事例として全国的にも注目を集めており、消防団活動の質的向上につながるものとして、大いに期待されている。

 

  • 会場の飯能市役所には市民や団員の家族等が多く集まった。
  • 防災体験車により過去の地震の揺れを体感。
  • 防災訓練車での水消火器による消火訓練。
  • ジェットシューターの放水体験はちびっこにも大人気。
  • 梯子車など車両の展示も行われた。
  • 埼玉西部消防局の消防音楽隊による演奏も披露された。
  • 会場にはキッチンカーも多数集結した。
  • 飯能市のイメージキャラクター「夢馬(むーま)」も登場。
  • ホース展張の部はベテラン団員の消防技術継承の場として新設したもの。二重巻きホースを真っ直ぐに展張し、前方の標的を倒す。
  • 放水技術の部は4人1組でポンプ車や積載車を用いて実施する。
  • 積載車の場合も実運用と同じくポンプ車載のまま放水を行う。
  • 指揮者と1番員がホース延長のため、火点に向かい走る。
  • 実活動を意識し分岐金具も使用する。
  • 前方の標的に向け放水を行う。
  • 少人数での対応を想定し1線1口での放水というスタイルを採用。
  • 活動スキルの基本としてホースの撤収も取り入れている。
  • 回収したホースを綺麗にまとめる。
  • 礼式の部は集合に特化した内容で指揮者の号令で一列横隊に整列する。

 


 

本記事は訓練などの取り組みを紹介する趣旨で製作されたものであり、紹介する内容は当該活動技術等に関する全てを網羅するものではありません。
本記事を参考に訓練等を実施され起こるいかなる事象につきましても、弊社及び取材に協力いただきました訓練実施団体などは一切の責任を負いかねます。

 


 

取材協力:飯能消防団(埼玉県飯能市)

写真・文:木下慎次


初出:2025年7月 Rising 夏号 [vol.38] 掲載


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