暗闇に包まれた山中で実施!! 第6回夜間山岳捜索救助勉強会


山岳対応GPSアプリ「ジオグラフィカ」製作者の松本氏によると山岳遭難の4割は道迷いといい、これが滑落の原因ともなる。近年ではスマホにアプリを入れることでGPSとして活用できるようになっているが、山岳遭難の多くを占める中高年のスマホ普及率は低く、GPSとして活用できることも知らなければ地図も読めない人が少なくないという。こうしたデータや現状を踏まえつつ、日本救助技術標準化プロジェクト(JRSP)では10年前より山岳救助におけるGPS活用を検証し、また、2年前の3月より愛知県春日井市玉野町にある定光寺クライミング場および周辺域などにおいて、有志が集まっての夜間山岳捜索救助勉強会を開催している。
勉強会ではまずGPSの基礎知識について座学で学んだ。消防通信指令システムの高度化により、GPS機能付き端末からの通報では位置を10~50m程度の範囲で絞り込み把握することができる時代になってきた。ここで得られる緯度経度情報を活かすためには、救助者もGPSを使いこなす必要がある。座学に続いては実際の山中において、GPSによりターゲットを探し出すという訓練が行われた。
午後8時ごろより本格的な想定訓練がスタートする。要救助者は岩場でロープ降下中に頭部を強打し、宙吊りのままとなっている男性。暗所であるため目視が難しく、詳細は不明だ。岩場の上を活動拠点とし、隊員が降下進入を図る。要救助者に接触し、状況を総合的判断した結果、岩場下に下ろす形で救出することになった。岩場の上には有効な倍力を設定するスペースがないと判断し、複数の隊員によるマンパワーでの救出を実施。宙吊り状態を解除してゆっくりと地上へ要救助者を下ろす。暗闇という高い負荷がかかる夜間訓練だけに、参加者は細心の注意を払いながら全力で取り組んでいた。

 

■日本救助技術標準化プロジェクト(JRSP)

様々な人命救助の技術を持ち寄り、日本風土に合った技術を研究するために活動を行う。高度消防救助技術を標準化するために様々な勉強会を開催しています。

事務局連絡先(安藤):jrsp.rescue.standard@gmail.com

 

  • 暗闇に支配された岩場にて、ヘッドライトの明かりを頼りに救出活動を行う。
  • 現場より緯度経度情報が指揮本部に伝えられ、応援部隊はこれを頼りに現場へと向かう。
  • 降下進入を図った隊員が救出を開始。
  • 岩場の上では複数の隊員のマンパワーによる救出。
  • 暗闇の中では要救助者や周囲の状況の把握が困難で、隊員間の意思疎通も難しい。
  • 地上に救出完了。
  • 要救助者を背負って搬送するための工夫。オリジナルアイテムを作りハーネスなどを背負子として使用できるようにしている。
  • 背負った状況。高い位置に要救助者を背負えるため、救助者も動きやすくなる。
  • この方法を活用すると、立位のまま容易に搬送人員の交代を行える。
  • あらかじめ伝えられた緯度経度情報を頼りにターゲットを捜索する訓練。
  • 事前に設定しておいた地点に到着。
  • GPSアプリ・ジオグラフィカで登山道が管理されている。
  • 目的地に到達した後は詳細に検索を行う。
  • GPSでポイントを絞り、目視捜索により木の陰に置かれた小さなターゲットを発見する。

 


 

本記事は訓練などの取り組みを紹介する趣旨で製作されたものであり、紹介する内容は当該活動技術等に関する全てを網羅するものではありません。
本記事を参考に訓練等を実施され起こるいかなる事象につきましても、弊社及び取材に協力いただきました訓練実施団体などは一切の責任を負いかねます。

 


 

写真:伊木則人

文:木下慎次


初出:2017年07月 Rising 夏号 [vol.06] 掲載


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