平成29年7月九州北部豪雨 被災地レポート
7月5日から6日にかけて、対馬海峡付近に停滞した梅雨前線に向かって暖かく非常に湿った空気が流れ込んだ影響等により、線状降水帯が形成・維持され、同じ場所に猛烈な雨を継続して降らせたことから、九州北部地方で記録的な大雨となった。
九州北部地方では、7月5日から6日までの総降水量が多いところで500ミリを超え、7月の月降水量平年値を超える大雨となるところがあった。また、福岡県朝倉市や大分県日田市等で24時間降水量の値が観測史上1位の値を更新するなど、これまでの観測記録を更新する大雨となった。
九州地方北部ではこの大雨により大きな被害が発生し、気象庁は7月5日から6日に九州北部地方で発生した豪雨について「平成29年7月九州北部豪雨」と命名した。
発災からしばらくすると、被災地の状況を伝える報道も少なくなった。
現地の状況が分からない──。
あれだけの被害があったのだから、そう簡単に復旧フェーズに入っているとは考えにくい。また、SNSなどでは依然「発災当時のまま」のような状況が散見される。
悩んでいても仕方がない。自分に、そして株式会社ライズに何ができるかを知るためにも、現地へ向かうことを決めた。
■激しい雨
被害の大きかった福岡県朝倉市杷木(はき)へ向け広島を出発したのが8月15日の夜。翌16日の朝からボランティア活動に入るべく、車中にて仮眠をとった。そして朝6時ころ、激しい雨音に叩き起こされる。この日、活発な前線の影響で福岡県福岡市小呂島では50年に一度の記録的な大雨が降っていた。朝倉市でも激しい雨が降る。当初の予定では熊本地震でのボランティア活動や自主勉強会などで面識のあった地元消防職員の方々と活動を共にすることになっていたが、雨による警戒のため合流できないとの連絡をいただいた。そこで、一般ボラとして登録しての活動を行うべく、朝倉市災害ボランティアセンターに向かうことにした。
現地入りしたのが前日夜。明るくなってから目にする街並みは、予想以上に被害の爪あとを残していた。道路脇には土砂や流木が山積みとなっており、建物も1階部分が破壊しつくされている。また、排水溝などが土砂に埋まっているためだろうか、激しい雨により道路がたちまち冠水してしまう。予想以上の手付かずな現状に驚きを隠せなかった。
■家屋内土砂排除を実施
朝倉市災害ボランティアセンターに到着した8時ころには雨も止み、先ほどまでとは一転して青空が見え出していた。一般ボラ登録を行おうと思っていたところに電話が鳴る。先ほどの地元消防職員の方からだった。警戒が解除となり、予定通り非番を活用してボランティア活動を行うということ。そこで合流すべく、ボラセンを後にした。
合流し、家屋内の土砂排除を行うべく被災家屋へ入る。平成26年8月豪雨による広島市の土砂災害では消防団として活動したが、あの時に現場で感じたのと同じ、独特な土砂の臭いがした。家屋の1階部分は土砂が流れ込み、その勢いで壁などが壊されてしまっている。ほとんどの部屋は土砂に埋め尽くされ、床も見えない状態。実際には土砂を除去して床や畳が見えても、その下も土砂に満たされている状態だ。これらを完全に除去しなければならない。私が合流させていただいた消防ボランティアチームと、ボラセンから派遣された一般ボラチームの2チームでアタックするが、1日かけて部屋の半分程度の土砂を除去するのがやっと。とにかく時間がかかるのだ。
■まだまだ人手が必要
足場が悪く、土砂を掻き出すにも時間がかかり、屋外へ搬出するにも一輪車や土嚢袋を用いて人力で行わなければならない。気付けば活動終了の16時となってしまっていた。7月5日の発災から42日経過しても、土砂の除去などまだまだ手付かずの所が多いのもうなづけた。実際に活動して感じたのは、ボランティアの数が足りていないということ。九州を離れてしまうと、ニュースなどで状況すら知ることができなくなっているが、被災地ではまだまだ人手が必要な状況が続いているのだ。
朝倉市災害ボランティアセンターへは、博多駅や福岡空港から高速バスでアクセスできるほか、電車と路線バスでのアクセスが可能だ。もちろん、車でのアクセスも可能。高速道路を利用して被災地のボランティアセンターを往復する料金については、手続きを行えば通行料金が無料となる。
「もう1ヶ月以上経っているから」と考え足を止めるのではなく、1人でも多くの方にボランティアとして活動に参加していただきたい。
被災地は1ヶ月以上経ってなお、人手が必要な状況なのだ。
■ボランティア情報朝倉市災害ボランティアセンター 朝倉市災害ボランティアセンター |
http://asakuravc.jp/130
写真・文:伊木則人(株式会社ライズ・代表取締役)