ITLSアクセスコース in 鳥取

 

山陰地区での初開催となるITLSアクセスコースは鳥取県東部広域行政管理組合消防局の協力のもと、鳥取消防署にて開催された。

ITLS(International Trauma Life Support)コースは病院前外傷救護の教育コースとして平成12年秋に初めて日本で開催され、ベーシックコース、アドバンスコース、小児コースを展開。その後、自動車事故に特化したアクセスコースなどが加わり、平成20年7月に日本初開催となるアクセスコースが茨城県で開催された。このコースは災害現場最前線で活動する者がただ救出するだけでなく、的確な観察と判断により最善の活動を組み立てるためのスキルを養うもの。現在では国内の各地で同コースが開催されており、平成29年6月には鳥取県東部広域行政管理組合消防局及び鳥取消防署の協力のもとに山陰地区での初開催となる同コースが行われた。

ITLSのテーマは救急現場における最新の技術を迅速な観察を行いながら駆使し、緊急に対処すべき命を脅かす外傷を同定して適切な処置を施すことをマスターすることで防ぎ得た外傷死や後遺障害を撲滅すること。アクセスコースは自動車事故に特化した内容となっており、自動車事故特有の問題を理解、解決するための教育コースである。
当初は現場に最先着した救急隊が最低限の装備にて、いかに愛護的な救出を行うかといったテーマで構成されていたが、時代の変化に合わせて内容も進化してきた。現在では要救助者の近くで活動する者、救護に携わるすべての者というように対象の幅も広がり、救急に関する教育コースでありながら、救急隊員に限らず消防隊員や救助隊員など消防職員全般や、消防以外にも警察官や自衛官なども多く受講する注目のコースとなっている。

 

lTLSとは

International Trauma Life Support(ITLS)は、PTD(Preventable Trauma Death:防ぎ得た外傷死)や後遺障害を救急活動およびその教育を行うことで撲滅すべく活動するNPO(特定非営利活動法人)。1985年にBTLS(BasicTraumaLifeSupport)として設立され、2005年にその責任と影響力の大きさからITLSとして名称変更を行った。ITLSの病院前救護における標準化された医療コースは国際的に認められており、多くの救急隊員など救急医療従事者の生涯教育として重要な役割を果たしてきた。現在、ITLSは世界に70を超える支部とトレーニングセンターを備え、アメリカ救急医学会(American College of Emergency Physicians)と救急医協会(National Association of EMS Physicians)の後援を受けて認証された技術を、10万人を超える病院前救護の専門家が受講している。


コース開催情報などはこちらから
ITLS日本支部:https://itlsjapanweb.wixsite.com/itls-japan-web

 

午前中は講義にて知識をしっかりと身につける。

アクセスコースは1日コースとなっており、午前中は講義、午後は実車を使用したスキル指導や傷病者への必要な処置、救出の優先順位を決定するトリアージなどを学ぶ。内容に関しては自動車事故に特化した内容で、車両の解剖生理(構造)から始まり、現場の状況評価(救助者自身の危険回避、傷病者を観察して状態を判断)、事故車両の安定化、受傷者の救出・搬送という一連の流れを含み、安全かつ迅速に救出するための実践技術を網羅。ハイブリッドカーや電気自動車など多様化する自動車や、日本でも続けて発生している小型航空機(固定翼・回転翼航空機)の事故などもテキストに追記され、これらに対する基礎知識もレクチャーされる。さらに、インシデントコマンドシステム(ICS)など他機関連携に役立つ知識など、現代の現場対応に必須といえる内容も学ぶことができる。
救急に関する教育コースでありながら、車両破壊など実技を通して学べるのも特徴だ。交通救助において真っ先に脅威となるのが他の交通。先着の警察官から情報聴取を行いつつ、交通遮断について確認、依頼する。また、事故車両の安定化や出火対策なども、要救助者はもちろん救助者の生命に関わる課題。さらには的確な観察によるトリアージ(救出順位の決定)や、救出に際して車両をどのように破壊するかといった要素について、実技訓練により一連の流れの中で学ぶことができるため理解しやすくなっている。

 

  • ウェブスリングを用いたバックボードへの収容。
  • ロングジャッキの取り扱いと車両安定化について実技で学ぶ。
  • 想定訓練では先着救急隊が中心となり活動を展開。まずは警察官役のスタッフから情報をとる。
  • エンジンルームからの出火対応。フーリガンにて穿孔しABC消火器にてその孔から消火剤を撃ち込む。
  • ドアの変形が激しく救出困難な想定。屋根を解除するため、まずはフロントガラスの切断を行う。シェービングクリームを活用し、ガラス粉塵の飛散防止を図っている。
  • ピラーをレシプロソーで切断する。
  • 車内へ進入し観察と並行して必要な応急処置を実施する。
  • 救出を拒むドアの除去。ヒンジ部に間隙を作成し、ボルトを離脱してドアを抜く。
  • ガラスやピラーなどを切断し、屋根を解除。頭部・頚椎・腰椎の固定や保護が可能なKEDを設定するとともに、切断部の養生措置をとる。
  • バックボードを駆使して要救助者を救出。

 

車両破壊に用いるツールについては一般的なハンドツールを中心としており、切断に対しても定番救助資機材である大型油圧救助器具ではなく、あえてレシプロソーが活用される。この点もアクセスコースのポイントといえる。車両の構造を学ぶことで、車両の弱点を知ることができる。つまり、知識と技術さえ身につければ、最低限の資機材でも効果的に破壊することが可能であり、迅速に要救助者への接触や救出を図ることができるのだ。こうして厳しい条件でスキルを養っておけば、実際の現場では部隊装備を駆使してさらに迅速に対応できるようになるというわけなのだ。

 

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本記事は訓練などの取り組みを紹介する趣旨で製作されたものであり、紹介する内容は当該活動技術等に関する全てを網羅するものではありません。
本記事を参考に訓練等を実施され起こるいかなる事象につきましても、弊社及び取材に協力いただきました訓練実施団体などは一切の責任を負いかねます。

 


 

取材協力:ITLS日本支部、鳥取県東部広域行政管理組合消防局、鳥取消防署

写真・文:木下慎次

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