首都圏の災害に備える! 警視庁 機動隊対抗レスキュー競技大会

 

 人命救助活動といえば消防組織のイメージが強いが、大規模自然災害が多発する昨今では警察機関が設置する救助部隊が活動するシーンを目にする機会も多くなっている。また、国際緊急援助隊・救助チームは警察・消防・海上保安庁に所属する隊員により構成されている。このように日本における「人命救助」の重要な役割を担うのが警察の救助部隊である。

 警視庁では、各種災害に迅速に対応するため、警視庁特殊救助隊をはじめ、機動隊に「機動救助隊」「水難救助隊」「山岳救助レンジャー」などを編成しているほか、各警察署にも「警察署救出救助部隊」を編成するなどして、万全の備えを行っている。このうち、昭和47年に発足した機動救助隊では、昭和56年より「機動隊対抗レスキュー競技大会」を毎年開催。技術向上や士気の高揚をテーマとして行われるこの大会が、平成29年11月29日に東京都立川市にある総合警備訓練場で行われた。途中、他の警備業務などで中止となった年もあるが、今回で32回目を数える。大会は10ある機動隊の対抗戦という形で実施され、各隊17名、計170名が集結して日頃鍛えぬいた救助の技を競い合った。

 大会では4つの訓練種目が実施される。まず行われるのが登はん競技で、会場にある実際の建物の壁面約18mをロープの摩擦により登る。方法としては消防救助操法における「フットロック登はん操法(三)」に相当するもので、登はん員の足にロープを2回巻き付ける。登はん員と補助員の呼吸も重要なポイントだ。渡橋競技では警備車両の車上に展張した20mのロープを、往路がモンキー、復路がセーラーにて渡る。

 工作資器材操作競技はチェーンソーやエアソーを使用して木材等を切断、その部材とロープを組み合わせて重量物(丸太)の移動を行うという複合団体種目だ。平成25年に発生した伊豆大島での土砂災害や、平成29年7月九州北部豪雨など、近年は土砂災害が多く発生し、そこで活動障害となっているのが流木だ。この流木に対し、現場調達した廃材を使って救助を行うという想定で、現場応用力を養うことを目的にしたのがこの種目なのだ。また「使う目的で切る」というのも初めての試み。今回は、単管パイプはAフレームを作るため、木材は丸太に手を入れたときの挟まれ防止用にシムを作るという目的がそれぞれ与えられている。そして、携行したロープと現地調達したアイテムを駆使して、重量物である丸太を50㎝動かす。ベースとなる技術は造園の世界で人力による運搬組立て工法として古くから用いられている「二又(二脚)」という技術を応用したもの。本来はワイヤーなどを用いるところだが、競技では救助用三つ打ちロープを使用。丸太結びという別名もある引き綱結びで結着し、途中からシングルチェーンで伸びを抑え、グリップ力を高めるという工夫を行う。このように、最低限の装備でも創意工夫で対応できるという点を意識付ける意味合いが込められているようだ。

 機動救助隊の特性を活かした種目といえるのが、重機操作競技だ。災害現場において必要性が強く認識されるようになった重機だが、警視庁では各機動隊で運用がなされている。昨年までは道路啓開等をイメージし「重量物を走行して移動させる」という動作を行っていた。しかし、救助活動での重機活用を考えれば、アームの繊細な操作が求められる場面が殆どだ。そこで今年は災害用パワーショベルのつかみ機を使用し、障害物(タイヤ、三角コーン、丸太)を一定の高さ、あるいは障害物を回避しながら移動するという内容に変更した。重機は円を描くようにアームが動く。つかんだ物を水平に動かすだけでも、実際には3次元的な操作を行わなければならないのだ。この基本的な操作を試すべく障害物が用意され、大きな重機による繊細で細やかな動作が披露された。

 警視庁では他にも、警察署救出救助部隊を対象にした大会も実施。日頃の訓練や大会を通して、あらゆる災害現場に対応できる能力を高めることを目指している。

 

登はん競技

登はん員3名、補助員1名によりリレー方式で実施。登はん員の足にロープを2回巻き付け、いわゆる「フットロック登はん」により約18mの壁面を登る。

大会会長である警備部長の下田隆文警視監が号砲を鳴らし、競技がスタートする。自己確保の命綱をハーネスに結合。補助員の背を使い懸垂ロープを掴み、補助員によるサポートを得ながら登はんを行う。

庁舎壁面に設定された懸垂ロープを、リレー形式で隊員らが登る。

 

渡橋競技

5名1チームによりリレー方式で実施。展張された20mロ-プを往路がモンキー、復路がセーラーの2種類の方法で往復する。

  • 警備車両の車上に展張した20mのロープを、往路がモンキー、復路がセーラーにて渡る。
  • 20mのロープをモンキーで渡り、すばやくターンする。
  • 姿勢を立て直し、復路もセーラーで一気に渡りきる。

 

工作資器材操作競技

チェーンソーやエアソーなどの工作資器材を使用して木材等を切断し、その部材とロープを組合わせて重量物の移動を行う複合団体種目。

 

  • 3名1チームで行われる複合団体種目。まずは木材を切断しシムを作る。
  • 1ミッションをクリアするごとに隊員が入れ替わる。
  • Aフレーム用の単管パイプ切断。
  • 切断した単管などもピックアップし、要救助者の元へ走る。
  • Aフレームの作成。
  • 丸太に対し結着を行う。
  • Aフレームに丸太からのロープをセットする。
  • ロープを引き、Aフレームを倒すようにして丸太を移動させる。
  • 要救助者を舟形担架に収容し、ゴールへ向け走る。

 

重機操作競技

災害用パワーショベルのつかみ機を使用し、障害物(タイヤ、三角コーン、丸太)を指定された方法で移動。救助活動で求められる繊細な動作を試される。

 

  • 重機を用いた訓練競技。
  • スタートと同時にセーフティーバーを10回飛び越え、体力的負荷をかけてから重機に乗り込む。
  • タイヤをつかみ、パレットに沿うように移動させる。
  • タイヤをつかみ、パレットに沿うように移動させる。
  • 三角コーンをつかみ移動させる。
  • つかんだ丸太にて中央のポールに接触しないようにしながら三角コーンを倒す。

 

 

 


 

本記事は訓練などの取り組みを紹介する趣旨で製作されたものであり、紹介する内容は当該活動技術等に関する全てを網羅するものではありません。
本記事を参考に訓練等を実施され起こるいかなる事象につきましても、弊社及び取材に協力いただきました訓練実施団体などは一切の責任を負いかねます。

 


 

取材協力:警視庁

写真・文:木下慎次

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