警視庁 東日本災害警備訓練施設

 

 警視庁は5月15日に、立川市緑町にある東日本災害警備訓練施設において同施設と警備部長査閲の模様を報道陣に公開した。この施設は東日本大震災等の教訓を踏まえ、国内の災害特性に即した実戦的訓練を安全かつ効率的に、さらには各部隊・職員の専門性・経験・能力に応じて段階的、体系的に実施することが可能な訓練施設を整備することで、警察の災害対処能力向上を図ることを目的に整備が進められたもので、平成28年に運用が開始された近畿管区警察学校(堺市)内に続く2か所目の施設となり、施設管理及び訓練指導は警視庁災害対策課が担当し、東日本エリアにおける訓練の拠点としても活用される。

 同施設は約7100平方メートルの敷地に地震災害、土砂・火山災害、水害に対応する10の訓練設備を配置。施設内動線となる道路沿いに各種訓練ゾーンが設定されており、市街での活動をイメージしやすい構造になっているのも特徴だ。また、施設内の訓練実施場所直近に訓練前の情報共有や訓練後の検討会に活用できるレクチャー・デブリーフィング・ブースも確保されている。

 この施設を用いて実施された警備部長査閲では特殊救助隊や機動救助隊など約70名の隊員が参加し、土砂が流入した倒壊家屋からの救出救助や、浸水した住宅に取り残された要救助者の救出など、実戦さながらの救助訓練が展開された。

 

重量物排除訓練ゾーン

平坦な部分と傾斜のついた部分が用意された地盤面に重量物を設定し、排除や安定化といった技術を訓練できる。重量物の設定や確保用として上部にレール式ホイストシステムを備えている。

 

訓練展示

  • 重量物安定化の訓練展示。傾斜部に置かれた可変式訓練ユニットを水平にする。
  • バールにてリフトアップし、クリブやウェッジにてクリアランスを確保してからマット型空気ジャッキを設定。
  • マット型空気ジャッキによりリフトアップし、クリブやウェッジを差し込んで固定する。

外壁・床破壊訓練ユニット


コンクリート板をしっかりと確保でき、安全にブリーチングの訓練が行える。ユニットは外壁(側方突破)用と床(下方突破)用の2タイプが2基用意されており、粉じん対策用の水を調達しやすいよう水道も準備されている。

 

訓練展示

  • 電動ハツリ機によるブリーチング。
  • 携帯用コンクリート破壊器具によるブリーチング。
  • 鉄筋カッターにより露出した鉄筋を切断する。

土のう作成訓練ゾーン

土砂災害対応等を訓練する未舗装エリアの一角に、土のう作成用の土が大量に用意された区画が準備されている。

土砂埋没建物ユニット


土砂崩れ等により倒壊した家屋を模したユニット。内部に土砂を堆積させることができ、土砂量や内部の状況変更は壁の役割を果たすコンパネを外すことで簡単に行える。

 

訓練展示

  • まずは警備犬によるサーチを実施。要救助者を発見する。
  • 進入の障害となる丸太をロープにて除去する。
  • 建物内に流入した土砂の搬出に、ベルトコンベアを活用。この装備は警視庁がいち早く導入し、西日本豪雨災害の現場活動にも投入された。
  • バケツリレーに人員を割かずに済み、隊員の体力も救助活動にすべて注ぐことができる。
  • 障害となる土砂の除去が完了し、グランドパッドを設定しながら要救助者のもとへ向かう。
  • 要救助者をバスケット担架に収容して救出を実施。

重機操作訓練ゾーン

土砂災害対応等を訓練する未舗装エリアの一角に、重機操作の訓練が行える区画が準備されている。

浸水域対応訓練ゾーン

浸水域を模したプール部分には家屋や流出物が浮かぶ。また、地上から地下空間への経路を想定した階段部分が用意されており、都市型水害の脅威として注目される地下空間への水流入防止といった技術も訓練することができる。

 

訓練展示

  • 都市型水害の代表的な脅威といえる地下空間への水の流入。土嚢積みによりこれを防ぐ。
  • 隙間なく、台形になるように土羽打ち道具で叩きながら積み上げていく。
  • きちんと積み上げた土嚢が水圧に負けることなく水の流出を防いでいる。
  • 流出家屋からの救出救助。
  • この訓練では特殊救助隊の女性隊員が救助を実施。
  • 両岸から張られたロープを使って進入を図る。
  • 家屋に到達すると、救出側ではシステム変更を実施。
  • 対岸側での引き込みにより、家屋内から要救助者を一次救出する。
  • 救出側での引き込みにより救出を実施。

高所訓練ユニット

3階建て一般住宅などと同等のサイズ感で設計された訓練塔。外壁や窓などを活用してショアリングの訓練も実施できる。

 

訓練展示

  • 建物3階へ向け三連はしごを架梯。
  • バスケット担架に要救助者を収容する。
  • 三連はしごを倒し込み、はしご水平救助第一法の要領で救出する。

ビル倒壊対応訓練ゾーン

ビルなどの広いフロアを持つ建物が倒壊した状態をイメージした空間。

レンジャー訓練塔

主塔と副塔からなるレンジャー訓練塔。渡過訓練や降下訓練、高低差を活用した各種想定訓練などが実施できる。手前に可変式訓練ユニットを並べ、より実戦に近い訓練ができるよう配慮されている。

 

訓練展示

  • 建物3階部分より降下進入を図り、要救助者へ接触する。
  • バスケット担架へ収容した要救助者を塔下まで搬送する。
  • 要救助者と介添えする隊員を3階まで引き揚げる。
  • 介添え隊員が開口部などを巧みにかわす。
  • 倍力システムを用いて引き揚げる。
  • 要救助者と介添えする隊員を3階に到着する。

可変式訓練ユニット


各種現場活動に対応した、モジュール化されたユニット。屋内、屋根、瓦榛ハザード等のモジュールが用意されており、組み換えにより様々な状況を再現できる。

 

訓練展示

  • パンケーキクラッシュを起こした建物を模した設定。右上段に位置する要救助者を、左中段の開口部から救出する。
  • ガス検知器により内部の環境測定を継続的に実施。
  • 要救助者をバックボードに縛着し、1段下に準備したバスケット担架へ収容する。
  • 中段の開口部より要救助者を救出する。
  • 瓦礫による不安定足場を通り、無事救出完了。
  • 警備犬により最終的な人命検索を実施。

 

 

 

 


 

本記事は訓練などの取り組みを紹介する趣旨で製作されたものであり、紹介する内容は当該活動技術等に関する全てを網羅するものではありません。
本記事を参考に訓練等を実施され起こるいかなる事象につきましても、弊社及び取材に協力いただきました訓練実施団体などは一切の責任を負いかねます。

 


 

取材協力:警視庁

写真・文:木下慎次

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