大空を羽ばたく新たなる「目」 ドローンの運用!!

上空からの情報収集を行うドローン。

 三重県の松阪市・多気町・明和町の1市2町を管轄する松阪地区広域消防組合消防本部では、平成31年4月1日よりドローンの運用を開始した。近年では災害対応分野におけるドローンの活用が注目されている。続発する大きな地震や災害級の大雨など、人々の生命を脅かす自然災害は年を追うごとに増加している。もちろん、こうした過酷な環境から人々を救出する救助者が危険に晒されるリスクも増えてしまっているといえる。このように、従前以上の安全・確実・迅速な対応が求められる時代において、その切り札としてドローンの存在が注視されてきている。

 松阪地区広域消防組合消防本部ではこうした変化を的確にとらえ準備を進めてきた。平成30年5月、発隊に向けて民間養成学校の協力によりパイロット教育を開生7名を育成するとともに、県下消防本部としては初となる民間ライセンス(JUIDA操縦技術証明及び安全運航管理者証明)を取得するとともに、国土交通省の許可・承認を得た。使用機体についてはファントム4アドバンス2機とマビックプロ1機を整備。また、更新時期を迎えていた指揮車をドローン対応仕様とし、最新機器を駆使して空撮映像を消防本部や対策本部等にリアルタイム配信できるシステムを構築した。これら準備を経て、平成31年4月1日より総合指令課を主管課として7名のパイロットによるドローンの運用を開始。現在はパイロットは各所属に分散配置され、ドローンは指揮車に積載。災害現場において合流して活動を展開するドッキング方式としている。令和元年5月からは2期生5名のパイロットど有資格者拡充も進めており、将来的には独立したドローン隊の編成なども視野に入れて進化させていく予定だ。

 ドローンの運用を開始して以降、実際の水難救助事案や山岳救助事案に投入されており、4Kカメラによる鮮明な映像は部隊指揮のみならず、隊員の安全確保に大いに活かされているという。また、今後は地震発生時の津波警戒、火災現場などさまざまな場面における、接近不能な危険なエリアに対する情報収集にも活用する予定だ。大空からより安全に、より細かく、確実な災害情報の収集することができるドローンを導入した同本部では、今後も運用方法や運用技術に研究を重ねていき、日々発生する通常災害はもちろん、今後も起こりうるであろう「想定外の災害」への対応力強化を目指していくこととしている。

 

  • 平成31年4月からドローンの運用を開始した松阪地区広域消防組合消防本部。今後もパイロットや機種の増強、物件投下といった活動内容の拡充を目指して行く方針だ。
  • 実際の空撮画像。水面に浮かぶ気泡から活動位置なども的確に把握することが出来る。(写真提供:松阪地区広域消防組合消防本部)
  • 砂や埃の巻き上げ等を防ぐライディングパットを設定しフライト準備を行う。
  • パイロットや安全監視者によりフライトプランの打ち合わせを行う。
  • 指揮隊からのオーダーにより細やかな情報収集を実施。
  • 安全監視者が現場の風速を計測。
  • 従来は岸から目視による安全確認しか図れなかったが、ドローンを活用すればより確実な情報を得ることが出来る。
  • 指揮本部にも24型モニターを設定し、情報周知が図られる。
  • ドローンパイロットの皆さん。

 

指揮車〔松阪中51号車〕

司令塔となる指揮車(松阪中51号車)は更新を機にドローン対応仕様とした。

車内にはモニターを搭載。「EyeVision」によりドローン映像のリアルタイム配信もできる。(写真左)/現場指揮本部の設定状況。(写真右)

 

 

 


 

本記事は訓練などの取り組みを紹介する趣旨で製作されたものであり、紹介する内容は当該活動技術等に関する全てを網羅するものではありません。
本記事を参考に訓練等を実施され起こるいかなる事象につきましても、弊社及び取材に協力いただきました訓練実施団体などは一切の責任を負いかねます。

 


 

取材協力:松阪地区広域消防組合消防本部

写真・文:木下慎次


初出:2019年10月 Rising 秋号 [vol.15] 掲載


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