オリンピック・パラリンピックに備えよ!船舶・水難事故対応救助訓練
平成30年10月に横浜市で初めて発隊した神奈川消防団大規模災害対応特装部隊・水上部隊による船舶事故・水難事故対応救助訓練が令和元年10月20日に実施された。この訓練は同隊と消防署の活動連携強化はもちろん、訓練実施当時に開催中だったラグビーワールドカップや開催を目前に控えたオリンピック・パラリンピック開催期間中の安全確保を目的としており、神奈川消防団の各分団と大規模災害対応特装部隊、神奈川消防署の特別救助隊等、鶴見消防署の消防艇・水難救助隊等が参加して行われた。
大規模災害対応特装部隊とは大地震や台風などの大規模災害に特化し、瓦礫の除去や港湾エリアの避難誘導などで活動する消防団員として新たに誕生したもの。大規模災害が発生した場合に企業の保有する建設機械や重機、船舶を使用した活動支援を得るため、神奈川区の企業4社と横浜市消防局が平成30年10月より順次協定を締結。この4社から21 人が神奈川消防団に入団し、同年同月に災害時に特殊機械や船舶を運用する「大規模災害対応特装部隊」が横浜市で初めて発隊した。また、各地で整備される機能別消防団とは異なり、災害に特化するだけでなく、通常訓練の実施、イベントや大規模想定訓練にも参加する(横浜市に機能別団員は存しない)。同部隊は陸上部隊と水上部隊からなり、陸上部隊は平成31年1月12日に実施された神奈川区消防出初式において神奈川区民に披露されていたが、水上部隊については今回の訓練が初お披露目の場となった。
訓練は横浜港を航行中の旅客船舶で火災が発生し、乗客の数名が海面に転落したという想定にて実施。海面に転落した要救助者の救出、旅客船舶乗客の避難誘導・移送、旅客船舶から発生した火災に対する消火活動が行われた。大規模災害対応水上特装部隊からは3艇が参加。「ピアフォーうら嶋隊」が被災旅客船からの乗客移送や消火を行い、「U Y 1COCO‐TWO隊」の小型ボートが機動力を活かし、海面転落者の救出にあたる。また、被災旅客船役を担った「ピアフォーケープタウン隊」も同隊の登録。災害時は収容能力を活かした救出などに参加する。
地域と連携し、持てうる力を結集して大規模災害に立ち向かおうとする「大規模災害対応特装部隊」という取り組みは、消防団の新たなる可能性を秘めた取り組みと言えるだろう。
本記事は訓練などの取り組みを紹介する趣旨で製作されたものであり、紹介する内容は当該活動技術等に関する全てを網羅するものではありません。 本記事を参考に訓練等を実施され起こるいかなる事象につきましても、弊社及び取材に協力いただきました訓練実施団体などは一切の責任を負いかねます。 |
取材協力:横浜市神奈川消防団/横浜市神奈川消防署
写真・文:木下慎次
初出:2020年1月 Rising 冬号 [vol.16] 掲載