車両事故対応訓練会
2019年12月20日~21日の2日間、広島県東広島市において第19回広島県消防活動自主訓練会・第31回TIRAEMT in Hiroshimaとして車両事故対応訓練会が実施された。この訓練会は日々進歩を続ける車両構造を理解し、あわせて車両事故対応の先進国である欧州(ドイツ)から車両事故対応を学んだ経験者が実車を用いて基礎的・応用的知識技術を伝達することで知識や技術を共有することを目指す学びの場。ここで得たものを活かすことで、より安全でかつ迅速・確実な救護救出活動を実現し、災害対応力の向上に役立てることを目的としている。訓練会の調整や運営は広島県レスキュー研究会、技術指導などをTIRAEMTがそれぞれ担当し、また、開催地となった東広島市内の自動車解体業者や大型油圧救助器具取り扱いメーカーなどの協力を得て、中四国地域から36名の消防士が集結し学びを深めた。
近年では自動車の安全性能が向上し、交通事故発生時も車内空間を確保するなどして乗員の安全が確保できる仕組みが整いつつある。だが、こうした安全性能も万全ではなく、衝突時の諸条件によっては乗員の挟まれ等が発生し、それを解除しての救出が必要となる。勉強会では1日目に座学にて自動車構造やボディー剛性の高まりによる救助活動への影響などを学び、2日目に実技訓練として救出活動時の車両破壊テクニックを体験しながら学んだ。
欧州から持ち帰った破壊技術を活かし、大型油圧救助器具を駆使して実際の自動車を徹底的に破壊することで、多くを学び取ろうと時間の限り訓練に挑んだ参加者たち。資機材の諸元を記憶した上で、スプレッダーなら拡張やつぶし、カッターなら切断、ラムシリンダーなら押し上げといった基本性能を理解し、自動車構造にあった破壊技術を習得することで資機材の能力を最大限に引き出すことができる。使用資機材のポテンシャルを肌で感じることで、参加者たちは確かな手ごたえをつかみ取ったようだ。
■広島県レスキュー研究会
平成26年3月に活動を開始。広島県内の消防職員を中心に、自らの意志と責任で明日の消防活動について研究し、災害対応能力の向上を目指す。活動としては、救助活動を中心に消防活動全般をテーマとした勉強会を実施している。
■TIRAEMT(ティ・アイ・アール・エメット)
日本全国を舞台とし、車両事故対応技術の普及を主として活躍する自主勉強グループです。ドイツで開催されるWEBER rescue days(資機材メーカー主催の大規模訓練会)に参加し、持ち帰った知識・技術を基に研究・訓練を重ね、国内にあった技術を普及させることにより救命率の向上を目指します。
本記事は訓練などの取り組みを紹介する趣旨で製作されたものであり、紹介する内容は当該活動技術等に関する全てを網羅するものではありません。 本記事を参考に訓練等を実施され起こるいかなる事象につきましても、弊社及び取材に協力いただきました訓練実施団体などは一切の責任を負いかねます。 |
取材協力:広島県レスキュー研究会/TIRAEMT/株式会社ワタナベ黒瀬工場
初出:2020年4月 Rising 春号 [vol.17] 掲載