第15回九州登はん会

 九州地区で毎年開催されている「ロープ登はん会」が、福岡県遠賀郡遠賀町にある遠賀郡消防本部で令和元年12月7日に開催された。15mを腕力のみで登りきる「ロープ登はん」は平成17年を最後に『基礎的な訓練で所期の目的を達成した』との理由により消防救助技術大会から除外されたが、当時この訓練種目に取り組んでいた九州地区の消防職員有志により、知識・技術の伝承などを目的として「九州登はん会」が立ち上げられ、毎年九州各県持ち回りでロープ登はんの大会を実施してきた。

 消防救助技術大会の訓練種目として現在も実施されているのは「ロープ応用登はん」で、高さ17mの塔上から垂下されたロープを地上高15mの到達点まで登はんし、その安全確実性を評価するという点は同じだが、「ロープ応用登はん」では登はん者と補助者の2人1組が協力して実施する。一方の「ロープ登はん」は登はん者が己の手だけを使って登りきるというもの。大会の訓練種目からは除外されたものの、「ロープ登はん」は消防職員として必要な体力・気力の維持向上に対して高い効果があることが知られており、訓練メニューに取り入れている地域も多い。福岡市消防局では「福岡県西方沖地震」の発生を機に平成17年より消防救助技術大会・団体種目への参加を見合わせているが、消防職員、中でも若手隊員の体力向上や到達目標を示す必要があるとの理由で、平成18年より本部独自の大会を企画し、「ロープ登はん」についても実施しているところだ。
 また、九州登はん会が行うロープ登はんの大会は体力向上のみでなく、消防に関する様々な情報共有を行える場としても役立っており、九州・沖縄の各県からはもちろん、毎年中国地方や近畿地方からも多くの隊員が参加。他本部の職員と消防業務全般にわたる意見・情報交換等を行い、いわゆる「顔の見える関係」を構築し、消防行政の発展に大いに活かされている。

 今大会は遠賀郡消防本部の消防総合訓練施設にある主訓練塔のロープ登はん訓練施設を舞台に実施。塔上の懸垂点から垂下されるロープには九州登はん会が保有する東京製綱繊維ロープ株式会社製の3つ打ちナイロンレンジャーロープ(M打ち)を使用。登はん者はフルボディーハーネスを着装し、同会保有の編み構造ロープを確保ロープとして使用する。各地から約70名の隊員が集結し、最年長は56歳、女性隊員の参加もあった。参加隊員は事前に目標記録を申告しているが、目標タイムだけではなく「○m」や「完登」を目標としている者も多い。「ロープ登はん」は腕力のみで登りきる訓練種目ではあるが、ロープの握り方ひとつが登はんスピードを左右する奥深い側面がある。余計な力を入れずに一定のリズムでロープを握ることができなければ手数が増え、ロープも暴れてしまい、後半のパワーダウンを招いてしまう。1位となった隊員は15・78秒という記録を出したが、2位以降の完登者は17秒代~50秒代。参加者の約1/3は6・5m~12・5mという記録だった。つまり、完登するだけでも難しいのだ。

 近年では救助資機材の能力・性能が向上しているものの、緊急消防援助隊として応援出動するような大規模災害などにおいては、長時間の過酷な活動が強いられる。こうした現場においては、どんなに高性能な資機材があろうとも、最終的に使用する隊員の体力や何事にも屈しない強い精神力が求められることになる。「ロープ登はん」は体力や技術のみならず、継続した努力による精神力の錬磨など、消防人に必要不可欠な要素を網羅できる訓練といえる。
 何としてでも要救助者のもとへたどり着くため「究極の進入方法」としてだけでなく、近年では危機的状況に陥った際に自らの命を守る「危機回避手段」としても注目されだした「ロープ登はん」。こうした時代的背景もあり、「ロープ登はん会」は全国の消防人から注目を集めている。

 

■九州登はん会

消防救助技術大会の「ロープ登はん」に取り組んでいた九州地区の消防職員有志が、知識・技術の伝承などを目的として「九州登はん会」を立ち上げ、毎年九州各県持ち回りでロープ登はんの大会を実施している。

 

  • 会場となった遠賀郡消防本部の主訓練塔。
  • ロープ登はん訓練施設。地上15mの位置がゴールとなる。
  • 本番を前にイメージトレーニングを行う。
  • 確保にはフルボディーハーネスを使用。
  • 目標記録を申告してからスタートする。
  • 後半のパワーダウンを乗り越えゴール。
  • リズムよくロープを掴んでいくのがポイント。
  • 5m辺りから疲労で前進が難しくなる。
  • 仲間の声援を背にゴールを目指す。
  • 腕の力で身体を引き揚げて進んでいく。
  • ロープを掴み、スタートの合図を待つ。
  • ロープを握りひたすら前進していく。
  • ロープの流れを整える。
  • 行く先を見据えロープを登る。
  • フットロックは行わず腕力のみでロープを登る。
  • 赤いテープがゴールの目印。
  • 最年長の参加隊員は21.47秒で完登。
  • 一手ずつ確実にロープを掴みとる。

 

 


 

本記事は訓練などの取り組みを紹介する趣旨で製作されたものであり、紹介する内容は当該活動技術等に関する全てを網羅するものではありません。
本記事を参考に訓練等を実施され起こるいかなる事象につきましても、弊社及び取材に協力いただきました訓練実施団体などは一切の責任を負いかねます。

 


 

取材協力:遠賀郡消防本部/九州登はん会


初出:2020年4月 Rising 春号 [vol.17] 掲載


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