「新改革」の実現に向けた焼津市消防団の挑戦

焼津市消防団 岩本 操 団長

 静岡県焼津市は、東に駿河湾を臨み、晴れた日には漁港越しに富士山が一望でき、北は高草山・花沢山などの丘陵部、西南は大井川流域の志太平野が広がる、海・山・川に囲まれた自然豊かな表情を持つ。同市は2008年(平成20年)11月1日に焼津市と大井川町が合併され、これにより地域を守る消防団も1つに統合。焼津市には18個の分団があり、市内を第1~第4方面隊に分け、それぞれ3~5個の分団で編成している。その他、機能別消防隊、女性消防隊、ラッパ隊、ドローン隊が組織されており、団員数499名(うち女性17名)で活動を行っている。
 機能別消防隊は地域や時間帯を限定し、特定の災害時にのみ活動し、消防団の活動を補完することを目的とした存在。年々増加する消防団員の被雇用者率や、地域によって生じる平日昼間における消防力の低下といった課題をクリアするために発足した。まず、2019年(平成31年)4月に発足したのが「支援団員」。過去に消防団員として活動していた焼津市内の自営業者または在勤者で構成されており、在勤地域の方面隊に所属し、当該地域で火災があった場合に出動する。2020年(令和2年)4月には焼津市役所本庁舎に勤務する職員による「市役所団員」、全国有数のカツオ節の生産地として知られる焼津水産加工団地の事業所員による「事業所団員」も加わった。

ガンタイプノズルを手にする団員。防火衣もセパレート型の最新式を採用している
 

 火災発生時、焼津市消防団は常備消防の志太消防本部(焼津市と藤枝市の2市で構成)の部隊と共に消火活動にあたる。建築物の構造や製品・技術の発展など、社会環境の進化とともに火災の燃焼挙動も年々多様化しており、その変化に応じて署隊による消火戦術も大きく変化してきている。こうした背景のもと、焼津市消防団では建物火災における取り回し等に効率的な40㎜ホースと、消防団では全国初となるガンタイプノズルを令和2年度、全分団に配備した。あわせて、全消防団員を対象とした『火災戦術講習』を実施し、新装備の安全かつ効率的な運用はもちろん、正しい知識を共通認識することでの的確な行動や、常備消防との連携(消火活動、補水、中継、破壊活動、残火処理など)強化を目指した。
「今まではとにかく放水していたが、火点への攻撃が最も消火効果が高く、無秩序な放水は延焼拡大などの危険を招くということも理解できた。40㎜ホースでは水量に不安があったが、実際放水を行ってみると想像以上に水も飛ぶ。ホース充水後の筒先転戦も容易になり、メリットを肌で感じることが出来た」(岩本操団長)
 大量放水による流量主義から、内部進入により必要最低限の水で戦う効率主義へ変化している近年の火災戦術。また、活動性を向上させる装備も登場してきている。こうした流れに合わせて、機動性に富んだ消火装備を導入し、同時に消防団の知識のアップデートが行われたのだ。

ドローン隊「スカイシュート」の皆さん

 焼津市消防団が進める革新的な取り組みとして注目を集めているのが、静岡県内初の消防団ドローン隊として2020年(令和2年)1月に発足した「スカイシュート」だ。焼津市では消防・防災分野へのドローン活用を積極的に推進しており、複数の部局の市職員で構成される小型無人機ドローンによる焼津市防災航空隊「ブルーシーガルズ」を2016年(平成28年)4月に発足。また、同市は自治体としては唯一の国土交通省認定ドローン講習団体であり、有資格隊員が訓練生の指導訓練を行うなど操縦者を育成することが可能だった。こうした背景のもと、新たな活動の方向性を模索していた消防団では、災害発生時の迅速で確実な「情報収集」が主な役割とする消防団ドローン隊の創設を提案。各方面隊から2名ずつの計8名の団員が選抜され、2019年(平成31年)1月よりドローン操縦資格を得るため訓練を開始。10時間以上の操縦訓練を積んだ後、座学や筆記試験、技能試験などを経て同年末までに8名全員が操縦資格取得した。また、2020年6月(令和2年)からは第2期の育成を開始。各方面隊から選抜された4名に加え、「消防団員としてスキルアップしたい」との思いから志願した女性消防隊の女性団員4名も入隊。現在は16名体制で活動を行っている。
 空を意味するSKYと放水を意味するSHOOTを合わせてスカイシュートと命名された同隊は、災害発生時に団本部に集結し、保有する4機を手に出動。土砂・建物等の崩壊や浸水などで人が立ち入れない場所や、海・山・川など広範囲で視認しにくい場所へドローンを飛ばし、送られてくる映像からリアルタイムで現場状況の確認を行い、迅速かつ安全な救助・救援活動をサポートする。
 また、道路寸断などにより団本部に集結できない事態を想定し、16名の隊員には個別に小型機を貸与(一部個人所有機も含む)。広域的な被害が生じている状況では各方面に分散している隊員がそれぞれ情報収集を実施し、災害対策本部へ情報を送る仕組みも取り入れている。

 こうした取り組みは副次的に新入団員の獲得にも効果が期待されている。新装備の導入やそれに伴う訓練などはメディアやSNSを通じて若い世代の目にも触れることになる。それにより消防団の活動内容を知ってもらい、身近な存在に感じてもらえることが、新入団員獲得に繋がる第一歩となるのだ。
 時代の変化に合わせた改革により若い世代がやりがいを感じられる環境をつくる。そこにベテラン団員の豊富な知識と経験が加わることで、消防団全体のボトムアップを目指す。
 焼津市消防団では今後も歩みを止めることなく、地域防災力のさらなる強化を目指して改革を続けていく。

 

  • ガンタイプノズルと40mmホースの導入に合わせて行われた火災戦術講習の様子。3日に分け、全団員を対象に実施した。
  • 火災戦術講習にてノズルの特性や違いを学ぶ。
  • 全分団に配備したガンタイプノズル。40mmホースは袴を色分けしてオスメスを明示。魚マークと共に分団番号が入れられている。
  • 40mmホースはダブルジャケット仕様。分団別で色分けされており、方向性を示すマーキングも入れられている。
  • 水産加工団地内火災防御訓練でのドローン隊による情報収集。
  • 訓練を通し「ブルーシーガルズ」との連携強化も計られている。
  • 機体特性と性能を考慮し、市と消防団で複数のドローンを活用する。
  • 土砂災害を想定し、要救助者を上空から捜索する訓練を実施。
  • 要救助者の位置や土砂の流れ等、得られた情報の周知を行うドローン隊隊長。
  • ドローン隊「スカイシュート」の皆さん。
  • 全国初となるドローン仕様の消防団指揮車を製作し、運用を開始した。

 

 


 

本記事は訓練などの取り組みを紹介する趣旨で製作されたものであり、紹介する内容は当該活動技術等に関する全てを網羅するものではありません。
本記事を参考に訓練等を実施され起こるいかなる事象につきましても、弊社及び取材に協力いただきました訓練実施団体などは一切の責任を負いかねます。

 


 

取材協力:焼津市消防団/志太消防本部

訓練写真提供:焼津市消防団

写真・文:木下慎次


初出:2021年4月 Rising 春号 [vol.21] 掲載


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