令和3年度南城市総合防災訓練

 沖縄本島の南東部に位置する南城市と八重瀬町の1市1町を守備する島尻消防組合消防本部では、南城市地域防災計画と島尻消防組合受援計画に基づき、南城市全体の防災意識の高揚や連携体制を向上させるとともに、地域特性や広域的な被害を想定した実践的な大規模災害訓練を実施することで災害対応の総合力の強化を図ることを目的とし、南城市役所及び公共駐車場、久高島などを会場として令和3年11月2日に総合防災訓練を実施した。

 訓練には新型コロナウイルス感染症拡大防止に留意しつつ、約20の機関・団体が参加。マグニチュード 9.0の琉球海溝型地震(沖縄本島南東沖地震3連動)が発生し、南城市では震度6強が観測される中、連動して沖縄本島南東約150km沖を震源としたマグニチュード8.0の地震が発生し、この地震により沖縄県沿岸全域に大津波警報が発表され、沖縄本島南部沿岸部に到達した津波により、各地で被害が発生。地震と津波により、南城市では人的・物的被害が甚大となるも全容は把握されておらず、さらに被害が拡大しているという最悪の状況を想定のもと行われた。

 本訓練では先進技術を積極的に活用し、災害対応のさらなる強化を模索するという試験的取り組みが随所に盛り込まれているのが特徴だ。土砂埋没エリアからの救助活動訓練ではメーカーの協力のもと、消防職団員がパワーアシストスーツを着用して活動を展開。応急救護所運営訓練には熊本赤十字病院から最新鋭の燃料電池医療車(FC医療車)が参加し、同車が電力供給を行いながら医療活動を行った。

 ドローンについては災害地点のアセスメントのみならず、物資等の輸送にも活用。救急・災害ドローンプラットフォームネットワーク(DPN)の協力により、南城市の沖合5.3kmにある久高島(くだかじま)からの検体輸送が行われた。
 また、ラピッドアセスメントシートを活用しての避難所運営訓練や、電気自動車と循環型温水シャワーを活用した入浴支援、避難所内における移動支援として市が観光用に貸し出しを行う歩行領域EVの活用など、避難所設置・運営訓練においても先進的な取り組みが行われた。

 島尻消防組合消防本部では、地域住民はもとより、南城市や八重瀬町を訪れるすべての人が安全・安心に過ごせるよう、日々変化する社会環境に即した災害活動を実現すべく今後も取り組みを進めていくという。

 

訓練参加団体(協力)

□ 南城市社会福祉協議会  □南城市観光協会  □久高島診療所
□ 沖縄県南部医師会  □(株)サンダーバード
□ 救急・災害ドローンプラットフォームネットワーク(DPN)

・東京電機大学 ・芝浦工業大学 ・日本医科大千葉北総病院
・熊本赤十字病院 ・ドローンオペレーション ・トヨタ自動車
・ トヨタ自動車九州 ・トヨタ自動車(株) ・(株)メディカルゲートウェイジャパン

 

 

災害対策本部図上訓練

 

市災害対策本部や消防指揮本部の設置運営図上訓練なども同時に実施された。

 

  • 市役所では市災害対策本部図上訓練が行われた。
  • 市役所では市災害対策本部図上訓練が行われた。
  • 市役所では市災害対策本部図上訓練が行われた。

 

土砂埋没エリアからの救助活動訓練

 

部隊運用訓練では土砂埋没エリアからの救出救助として署団連携で活動を展開。

 

  • 訓練会場となった南城市役所公共駐車場へ集結した消防車両。
  • 救助小隊の隊員らが活動準備を進める。
  • 土砂埋没エリアからの救出救助として署団連携で活動を展開。
  • まずは通常装備により土砂の排除などを実施する。
  • 救助活動訓練では実証訓練としてパワーアシストスーツを活用。高出力型を救助小隊員が着装する。
  • 消防団員は中出力型のパワーアシストスーツを着装した。
  • パワーアシストスーツを活用しての土砂排除活動。
  • パワーアシストスーツを活用しての土砂排除活動。
  • 重量物の排除もパワーアシストスーツを活用して徒手により実施。

 

現場救護所運営訓練

 

応急救護所運営訓練では熊本赤十字病院から駆け付けたFC医療車をエアテントに横付けし、電力供給が行われた。

 

  • 災害時に電力供給を行いながら活動を行うことができる、世界初の燃料電池医療車(FC医療車)が熊本赤十字病院より参加した。
  • 災害時に電力供給を行いながら活動を行うことができる、世界初の燃料電池医療車(FC医療車)が熊本赤十字病院より参加した。
  • 現場救護所にて応急手当やトリアージを実施し、救急車により搬送を行う。

 

ドローンによる検体輸送訓練

 

久高島(くだかじま)へ検体容器をドローンで送り、久高島診療所で検体を採取したのち、再びドローンで回収する訓練が行われた。

 

  • 津波被害により久高島とのアクセスが断たれたことを受け、ドローンにより検体の輸送を行う。消防団員が診療所に向かい、検体をピックアップする。
  • 消防団員がドローンとのランデブーポイントに向かう。移動には小回りが利く電動キックボードが活用された。
  • ランデブーポイントにてドローンに備えられた保冷箱へ検体を収容。機体はセルラー通信を利用し遠隔地から操作が可能で、自動運行で離着陸が可能。

 

避難所運営訓練

 

避難所設置・運営訓練においても先進的な取り組みが行われた。

 

  • ラピッドアセスメントシートを活用しての避難所運営訓練。
  • 公用車のプリウスと電源供給キット「Re-Q」により電源を確保し避難所や現場指揮本部で活用。
  • 避難所設置運営訓練ではハイブリッド型のアルファードから電源を供給し循環型温水シャワーを運用する入浴支援も実施。
  • 避難所での移動支援を想定し、歩行領域EVの活用が試験的に行われた。写真はトヨタ自動車製の座り乗りタイプ。
  • 避難所での移動支援を想定し、歩行領域EVの活用が試験的に行われた。写真はトヨタ自動車製の車いす連結タイプ。
  • 避難所での移動支援を想定し、歩行領域EVの活用が試験的に行われた。写真はトヨタ自動車製の立ち乗りタイプ。

 

 


 

本記事は訓練などの取り組みを紹介する趣旨で製作されたものであり、紹介する内容は当該活動技術等に関する全てを網羅するものではありません。
本記事を参考に訓練等を実施され起こるいかなる事象につきましても、弊社及び取材に協力いただきました訓練実施団体などは一切の責任を負いかねます。

 


 

写真・情報提供:島尻消防組合消防本部

写真提供: 株式会社ジェイテクト

文:木下慎次


初出:2022年1月 Rising 冬号 [vol.24] 掲載
(※この記事はRising掲載記事を補完したWeb完全版です)

 


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