GRIMP JAPAN 2021

 国内で最大規模のロープレスキュー競技会として、2020年2月8日~9日に岡山県倉敷市にて開催された「GRIMP JAPAN 2020」は、日本で初めての国際的なロープレスキュー競技会として国内外から多くの注目を集めた。その第2回大会となる「GRIMP JAPAN 2021」が2021年10月30日~31日に兵庫県広域防災センターで開催された。今大会は新型コロナウイルス感染拡大の状況を鑑み海外チームの受け入れは行わず、国内から20チームが参加しての「国内大会」として実施。国内大会だからこそできる新たなスタイルでの開催を目指し、日本の消防士が慣れ親しんだ「競技会スタイル」を参考としている。出場チームには事前に想定が提示され、その想定に対して訓練をかさね、突き詰めた技術で競い合うことにより、精度の高いロープレスキュー技術を披露。参加者はもちろん、会場を訪れたすべての人に、国内で災害救助に携わる消防士たちの実戦的なロープレスキュー技術を観てもらうことにより、国内のロープレスキューの標準化を図るということを目的としている。

 出場チームは救助チーム5名、要救助者1名、コントローラー1名の計7名で編成され、2日間で8想定にチャレンジする。各想定は兵庫県広域防災センターの訓練棟に設定され、急傾斜地や高層建物など足場が不安定で現場までの到達や搬送が困難な場所からロープを使用して救助活動を行うというもの。競技時間は最大25分とされ、参加者は実想定に基づいた活動環境の中で、日頃の訓練において培われた成果を披露した。

 GRIMP JAPANは出場チームが救助技術を競い合う場であるのと同時に、各チームの救助技術や考え方を共有し、学び、高め合うことを目的としている。そこで大切にされているのが、様々な救助技術を認め合い、受け入れ、その上で互いの考えについて意見交換を行おうという姿勢だ。ロープレスキューには様々な方法や考え方があると考えられているが、そうした「違い」にばかり着目するのではなく「共通する要素」に目を向ければ方法や考え方は全て同じといえる。GRIMP JAPANではこの共通する要素を「ホイッスルとハサミ」と呼び、大会のルールとしている。「ホイッスルを鳴らされたら瞬時にシステムから手を離し、それでも落下しないこと」と「ロープなどシステム内の繊維資機材のどこかをハサミで切ったとしても落下しないこと」という要素が「2系統の安全の確保」とともに安全なシステムを作り上げていく指標であり、ロープレスキューのルール。こうした視点、共通認識のもとに互いの考え方を共有し、なぜそうするのかを考えることができる場がGRIMP JAPANなのである。

 

 

大会結果 Tournament results

優勝:JAPAN WEST 9PM[中四国]
準優勝:NRC[関西]
3位:GRIMP HYOGO[兵庫県]
4位:TRC[徳島県]
5位:R.R.Y.[山梨県]
6位:Link-S[島根県]
7位:TRIC JAPAN[和歌山県]
8位:ACTIVE KOUCHI[高知県]
9位:KFR[高知県]
10位:京都一丸[京都府]
11位:TKC[愛知 岐阜]
12位:BRITZ[三重 奈良]
13位:TR_RESCUE_FUKUI[福井県]
14位:MHK[山口県]
15位:TRUST OKINAWA[沖縄県]
16位:TR さつま[鹿児島県]
17位:IKOF with MSRR[広島 岡山]
18位:CRRC[千葉県]
19位:4 REAL[群馬 長野 茨城]
20位:TFD[新潟県]

 

 


 

 

 

 

 様々な方法や考え方があるロープレスキューにおいて、システム設定などではなく今の時代ならではといえる工夫で注目を集めていたのが「CRRC(千葉県)」のアイデア。担架収容した要救助者の顔部分に自作の透明シールドをつけることで設定時のロープや雨などが直接当たらないように保護していた。もちろん、飛沫飛散防止にも効果的。担架によっては純正オプションとしてシールドが販売されているものもあるが、CRRCでは携行性がよく簡単に設定できる自作アイテムを活用していた。

 

 

TR RESCUE FUKUI 鎌田菜摘さん

 今回、GRIMP JAPAN 2021という素晴らしい舞台に立つことが出来、大変有意義で多くの刺激をもらい、そして楽しむことが出来た2日間でした。

 私がこの大会に出場できたのは、日々ロープレスキューの練習をしているチームを見学したことが始まりでした。その後、練習に参加させていただき、何もわからない私に対して丁寧に指導してくださり、ロープレスキューの知識と技術は勿論、楽しさを学ばせていただきました。

 そんな中、GRIMP JAPAN 2021の話が舞い込み、「大会のメンバーとして参加してみないか?」と嬉しいお言葉をいただきました。参加すると決めたものの、自分に出来るのか、迷惑にならないかと多くの不安を抱くようになりました。しかし、それからの練習も不安でいっぱいの私を必死に指導してくださり、大会3か月前には、「女性レスキュアーとして参戦してみよう!」とチームの先輩方が言ってくださり、チーム一丸となって練習に取り組んできました。コロナ禍ということもあり、チームで集まることも出来ず、大会までにメンバー全員が集まってできた練習は数える程度でした。しかし、練習時に撮影した動画や情報を共有し、個人練習をすることで少しでも迷惑がかからないようにと取り組んできました。

 大会当日、会場は私が今まで経験したことのない独特の雰囲気に包まれており、また、出場している女性も私1人ということが分かり、緊張がほぐれることがないまま想定がスタ-卜しました。実際に想定に取り掛かると、思うように活動することが出来ずチームの流れを悪くしている自分がいました。

 しかし、そんな戸惑う私に対し、常にチームの先輩方が声をかけ落ち着かせてくださり、そして大会を楽しませて頂いたおかげで、無事に全想定を終えることが出来ました。しかし、大会を終えた直後、全てをやり切った達成感と同時に、練習通りうまくいかなかったという多くの反省と悔しい気持ちが溢れ、ただただ茫然と立つている自分がいました。

 今回の大会を通じて参加しているチームの技術や考え方は様々なものがあり、チームのレベルの高さ、正確さ、速さ、そして多種多様な技術を目の当たりにすることができ大変勉強になりました。私はこの大会で得た私自身の多くの反省や悔しい気持ち、そして他のチームの知識と技術を、より多くの人と深め合い共有し、これからの日本のロープによる救助技術の標準化が図れるよう自分自身取り組んでいけたらと思います。

 また、この経験をスター卜に、女性でもロープレスキューの場において要救助者のために寄り添った活動ができる、ということを全国の女性消防職員に発信していけたらなと思います。

 私は、GRIMP JAPAN 2021への出場に向け訓練しているチームの先輩方にお声をかけていただき、このような素晴らしい世界を知ることができました。一緒にロープレスキュー技術の習得に向け訓練をする中で、理解することすらままならない私を、大会までの限られた期間の中で丁寧に指導してくださり、女性レスキュアーとして出場出来るまで成長させて頂いたことに感謝の気持ちでいっぱいです。

 最後に、大会を開催してくださった主催者の皆様、大会を支えてくださったスタッフの皆様、そして大会に携わってくださった全ての皆様、本当にありがとうございました。

 

大会アルバム

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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