走る救命救急室「エクモカー」完成!

 新型コロナウイルスの重症患者の命をつなぐ最後の砦、人工心肺装置「ECMO(エクモ)」。この装置を装着した患者を搬送する専用車両「エクモカー」が不足している。用途が限定的で車両や積載装備のコストも高いという点がハードルとなっているのだ。そうした中、千葉県内で初のエクモカーとして千葉大学医学部附属病院に配備された車両は、定番のトラックベースではなくマイクロバスをベースとし、日本初の国産ECMOストレッチャーを採用することで大幅なコストダウンが図られている。

 同車の製作にあたっては、ドクターカーやDMAT出動車両としての機能も備えることがテーマとして掲げられた。DMATとして出動する際には被災地へ向け隊員と共に物資なども大量に積載する必要があり、長距離移動が想定されるため、乗車する隊員の負担を少しでも減らす必要がある。この点もトラックより全長が長いマイクロバスをベースとすることで無理なくクリアしており、ECMOストレッチャー搭載スペースとは別に座席や積載スペースを確保するとともに、多数傷病者対応としてもう1基のストレッチャーを搭載しての傷病者2名同時搬送が可能という、従来のエクモカーには前例のない仕様を実現している。また、人を乗せることを前提としたクルマ(マイクロバス)であるため走行性能も高く、移動中の揺れが抑えられ、隊員と患者の負担軽減につながっている。

 さらに、同車は広い車内空間を活かし、緊急時には車内において開胸や開腹手術を行うこともができる。そのために、360度から患者へアプローチできるよう座席の座面は跳ね上げが可能になっており、室内灯はどの角度からも均一に照射できるようレイアウトされている。

 病院救急車に求められる性能を集約し、多機能型救急車両として設計された同車は、エクモカー普及のカギを握る存在として大きな注目を集めている。

 

マイクロバスをベースに製作されたエクモカー。運転室に2名、患者室に医療者5名とストレッチャーに収容した患者2名の最大9名が乗車可能。

 

車両中央部がECMOストレッチャー収容部で、左右に医療者用座席を備える。後方スペースはもう1基のストレッチャーや物資等の積載などに活用できる。

  • 座席は独立式で3点式シートベルトを備える。旋回やリクライニング機能を備えるので、長距離移動時の負担軽減にも効果的。
  • 座面を跳ね上げる事でストレッチャー周囲に処置スペースを確保できる。
  • 昇降ステップの最上段は着脱可能式カバーで塞ぎ、床面積を拡大できる。
  • 床面にはストレッチャー固定具とは別に積載物縛着用のレールシステムが備わる。
  • 壁面の専用マウントを介して半自動除細動器を搭載。
  • 心電図モニターや電動吸引器もストレッチャー頭部側にレイアウト。また、各種情報を映し出すモニター装置も備えられている。
  • 酸素配管系統を備え、二連式加湿酸素流量計や酸素アウトレットも装備。
  • 車両後方には医療用酸素ボンベの搭載部が設けられ、通常車両の4倍にあたる8本を装備することでリスクの回避を図っている。
  • エクモカーの重要装備といえる電源システム。同車には車両メイン・サブバッテリー・緊急バッテリーの3系統が備えられており、確実な電源供給を行う。
  • タイヤハウスを回避する形で搭載されたカート式積載ラック。患者収容や乗車のスペースとあわせて充実した積載スペースが確保されている。
  • 天井には簡易陰圧装置を装備。新型コロナを含む感染症患者の搬送も安全に行うことができる。
  • 天井には簡易陰圧装置を装備。新型コロナを含む感染症患者の搬送も安全に行うことができる。

 

車両後部にはリフトを備え、ECMOストレッチャーを安全で確実に昇降できる。

  • ストレッチャーの長さに対応するよう改造されたリフト(耐荷重300kg)。車外に設置することで車内のスペースを確保。
  • 運転室と患者室の間には感染症対策としてスライド式の隔壁を装備。
  • 外部電源の接続用コンセントを備え、待機中のバッテリー充電や搭載機器等への給電を行うことができる。

 

日本初の国産ECMOストレッチャーは国内で使用される各種ECMO機器に対応可能。

 


 

SPEC DATA
車名 トヨタ
通称名 コースター
シャーシ型式 2PG-XZB70V
全長 7240mm
全幅 2080mm
全高 2750mm
ホイルベース 3935mm
最小回転半径 7.2m
車両総重量 5715kg
乗車定員 9名
原動機型式 N04C
総排気量 4.00L
駆動方式 2輪駆動
艤装メーカー 株式会社ベルリング

 


 


 

お 知 ら せ
本記事は最新消防装備等を広く紹介する趣旨で製作されたものであり、紹介する装備等は弊社が製造や販売を行うものではございません。
また、当該装備の製作や調達に関するお問い合わせを頂戴致しましても、弊社では対応いたしかねます。あらかじめご了承ください。

 


 

取材協力:株式会社ベルリング

写真・文:木下慎次(株式会社ライズ)


初出:web限定記事

 


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