警視庁 機動隊対抗レスキュー競技大会 2022
警視庁では人命救助のスペシャリスト集団として、昭和47年に機動隊の中に「機動救助隊」を発足。救助技術の向上や士気の高揚を目的に昭和56年より「機動隊対抗レスキュー競技大会」を開催している。令和4年12月5日には東京都立川市にある総合警備訓練場において「令和4年度機動隊対抗レスキュー競技大会」が実施され、10ある機動隊から選抜された隊員約200名が参加して日頃鍛えぬいた救助の技を競い合った。
まず行われるのが登はん競技で、会場にある実際の建物の壁面約18mをロープの摩擦により登る。方法としては消防救助操法における「フットロック登はん操法(三)」に相当するもの。登はん員の足にロープを2回巻き付け、補助員がそのロープにテンションをかけて登はんをサポートする。
渡橋競技は5名1チームによりリレー方式で実施。警備車両の車上に展張した20mのロープを、往路がモンキー、復路がセーラーにて渡る。
続いて行われるのが工作資器材操作競技。内容は単に資器材を操作するのではなく、要救助者のもとへ到達し、救出するまでの一連の流れをイメージした構成となっており、これを複合団体種目としてリレー方式で行う。最初は進入をイメージし、隊員2名が三連はしごの伸梯・縮梯を実施。次は行く手を阻む障害物の除去として、隊員はチャップスを着装し、チェンソーを用いて木材の切断を実施する。ここで使用するチェンソーは各パーツに分解された状態で用意されており、その場で素早く、そして確実に組み立てを行わなければならない。進路が啓けると三連はしごを搬送してさらに前進。障害物(重量物)を除去するためのはしごクレーンを作成する。最後に隊員3名が空気呼吸器を着装し、連携して煙道の先で助けを待つ要救助者を救出。バスケット担架に収容して搬送を行う。
例年では4つ目の訓練競技として、重機を活用しての人命救助活動を想定した重機操作競技が実施されていたが、本年は趣向を変え、重機展示訓練として実施。本大会に地域の防災力を高めるため視察に訪れた会場近隣14警察署の警察署協議会委員約50人に対し、警視庁機動隊が保有する各種重機を使用して重機の積み降ろし、アタッチメント交換、土砂排除、重量物移動といった一連の活動が披露された。
3競技プラス重機展示訓練という構成で行われた本大会は、総合得点で第4機動隊が2連覇した。
いつどこで発生するかわからない大規模災害に備え、人命救助の一翼を担う機関として、警視庁ではレスキュー技能の維持向上を目指し取り組みを続けている。
◣◥◣◥ 警視庁の救助体制 ◣◥◣◥人命救助活動といえば消防組織のイメージが強いが、大規模自然災害が多発する昨今では警察機関が設置する救助部隊が活動するシーンを目にする機会も多くなっている。また、国際緊急援助隊・救助チームは警察・消防・海上保安庁に所属する隊員により構成されている。このように日本における「人命救助」の重要な役割を担うのが警察の救助部隊である。 警視庁では、各種災害に迅速に対応するため、警視庁特殊救助隊をはじめ、機動隊に「機動救助隊」「水難救助隊」「山岳救助レンジャー」などを編成しているほか、各警察署にも「警察署救出救助部隊」を編成するなどして、万全の備えを行っている。 |
登はん競技
登はん員3名、補助員1名によるリレー方式で実施。登はん員の足にロープを2回巻き付け、いわゆる「フットロック登はん」により約18mの壁面を登る。
渡橋競技
警備車両の車上に展張した20mのロープを往路がモンキー、復路がセーラーの2種類の方法で往復する。
工作資器材操作競技
三連はしごの伸梯・縮梯、チェンソーによる木材の切断、要救助者の担架搬等の指定種目を行う複合団体種目。
本記事は訓練などの取り組みを紹介する趣旨で製作されたものであり、紹介する内容は当該活動技術等に関する全てを網羅するものではありません。 本記事を参考に訓練等を実施され起こるいかなる事象につきましても、弊社及び取材に協力いただきました訓練実施団体などは一切の責任を負いかねます。 |
取材協力:警視庁
写真・文:木下慎次
初出:2023年4月 Rising 春号 [vol.29] 掲載