災害に立ち向かう重機のチカラ
大規模な自然災害が発生した際などは、倒壊した家屋に取り残された人を救助するだけでなく、各機関による救助・復旧活動を行うために迅速に障害物を除去し、道路の啓開を行う必要がある。こうした場面で大活躍するのが「重機」だ。災害現場において必要性が強く認識されるようになった重機だが、警察機関でも配備が進められており、警視庁では各機動隊で運用がなされている。また、保有台数や種類の多さで、警視庁の重機は注目を集めている。
重機運用技術の向上を目指し、警視庁では「機動隊対抗レスキュー競技大会」の訓練競技として、重機を活用しての人命救助活動を想定した「重機操作競技」を取り入れてきた。従来は「道路啓開」等をイメージし、重量物を移動させるという動作が試されていたが、平成29年度の大会からは「災害救助」をより意識し、災害用パワーショベルのつかみ機を使用してアームの繊細な操作が試される3次元的な操作により障害物を除去するという内容にパワーアップされた。
そして令和4年12月5日に行われた大会では趣向を変え、「重機展示訓練」として実施。本大会に地域の防災力を高めるため視察に訪れた会場近隣14警察署の警察署協議会委員約50人に対し、警視庁機動隊が保有する各種重機を使用して重機の積み降ろし、アタッチメント交換、土砂排除、重量物移動といった一連の活動が披露された。
重機の積み降ろし
迅速な部隊展開を実現するため、重機は搬送車両により現地投入される。つまり、現場での活動は重機を搬送車から降ろすことから始まる。実際にどのような手順で行われるのか、また、必要なスペースがどの程度のものなのかが実演により紹介された。
アタッチメント交換
パワーショベルはアタッチメントを交換することで様々な任務を遂行することができる。オペレーターと誘導員の連携による迅速なアタッチメント交換が披露された。
つかみ機での重量物除去
パワーショベルにつかみ具をセットした「つかみ機」として、障害物同士の重なりなども見極めながら慎重かつ繊細な動作で重量物除去の実演が行われた。
ブレーカーでのコンクリート破砕
そのままでは撤去が困難な大きいコンクリート塊などを小さくするため、ブレーカーにより迅速に破砕する実演。
放置車両の撤去
地震などの災害時には道路上に車両を乗り捨てて避難が行われる。こうした車両が緊急車両などの通行の障害になる場合は、迅速な撤去が必要になる。
土砂排除
近年続発する土砂災害。こうした現場では流出した土砂を迅速に撤去する必要がある。各種重機による土砂の排除と、排除した土砂の搬送を担う搬送車の連携が披露された。
重量物移動
パワーショベルのつかみ機では対応が難しい重く大きい超重量物に対応できる、災害活動用クレーン車による重量物排除(移動)の実演。
本記事は訓練などの取り組みを紹介する趣旨で製作されたものであり、紹介する内容は当該活動技術等に関する全てを網羅するものではありません。 本記事を参考に訓練等を実施され起こるいかなる事象につきましても、弊社及び取材に協力いただきました訓練実施団体などは一切の責任を負いかねます。 |
取材協力:警視庁
写真・文:木下慎次
初出:2023年4月 Rising 春号 [vol.29] 掲載