神奈川県下ロープレスキュー技術共有会 2023
いわゆる「都市型ロープレスキュー」が消防救助の世界に取り入れられて約20年が経ち、近年になって再び熱心な取り組みが始まっている。そうした中、神奈川県下6消防本部の有志12名により2022年より活動を行うロープレスキューチーム「GRIMP KANAGAWA」では、神奈川県下の消防職員有志を対象とした「神奈川県下ロープレスキュー技術共有会」を開催した。
これはロープアクセスを取り入れたロープレスキュー分野における救助技術の自主的な学びの場としてGRIMP JAPANと連携して開催されたもので、ロープレスキュー技術の基本といったビギナー向けの内容で構成されているのが特徴。具体的にはロープレスキューに興味があるけど、チェストアッセンダーを使ったことがない、下降器にて登降したことがない、アサップロックを使ったことがないといった県下消防職員を対象に、ロープアクセスを取り入れたロープレスキューの技術共有をするとともに、救助活動に従事する関係者との情報交換及び顔の見える関係を構築することを目的としている。
神奈川県足柄下郡真鶴町にある「岩ふれあい館」にて2023年5月20日・21日に行われたこの技術共有会は両日ともに同じ内容で実施。基本的なロープアクセスの説明、ロープの登り降り、想定訓練などが行われた。また、ビギナー向けということで、参加者のハーネス等のPPEは主催者側で準備し、誰もが参加しやすいよう配慮がなされた。
参加者へフルハーネスが配布されると、まずは点検について情報交換が行われた。今回のトレーニングは指導者からレクチャーを受けるといったスタイルではなく、主催者側はその場を回す司会進行的な役割と安全管理を中心として、その場にいる全員で知識や技術といった情報を共有しようというスタイルを徹底。参加者が発信する情報に対し、主催者側スタッフが時に補足情報などを織り交ぜて誰もが理解しやすいよう進められていく。
続く着装方法でも手順の一つひとつを確認し合いながら、じっくり進める。着装時にまず締めるのはウエストベルトだが、ここで注意点の説明が入る。若い隊員は最初から「フルハーネス型の墜落制止用器具」に慣れ親しんでいるが、長年「胴ベルト型安全帯」を使用してきた中堅以上の隊員にありがちなのが「低い位置に設定してしまう」というミス。「骨盤に載せるように下げる」と体に覚え込ませてきた影響で、フルハーネスでもクセで下げてしまうことがある。これではロープに身を委ねた際に極端なずり上がりが発生し、墜落制止用器具の用をなさなくなるわけだ。こうしたあるあるポイントを織り交ぜつつ、ショルダーベルトは「背部のD環が肩甲骨の位置にくるくらい」、レッグベルトは「動きやすさを考慮しつつも過剰なずり上がりを防ぐべく、手の甲が入るくらい」というように基礎のキソを再確認していった。
事前アンケートにおいて所属に配備されていない、使用したことがないといった回答が多かったカウズテールや登高器やアサップロックといったギアについては、概要や使用方法とあわせ、「(カウズテールは)法令上の墜落防止用の確保器具ではなく、あくまでワークポジションや落下の危険性がある場所以外での作業範囲を制限するレストレイン用である」というように、法令等に基づくチーム内の共通認識なども主催者側スタッフから情報提供された。
これら超入門編の知識や技術を共有した後、IDやクロールを用いての登下降、宙づり状態で身動きの取れない要救助者を1人で救出する方法などを実際に体験。技術共有会の最後にはGRIMP KANAGAWAのメンバーらによる展示訓練が行われた。
本記事は訓練などの取り組みを紹介する趣旨で製作されたものであり、紹介する内容は当該活動技術等に関する全てを網羅するものではありません。 本記事を参考に訓練等を実施され起こるいかなる事象につきましても、弊社及び取材に協力いただきました訓練実施団体などは一切の責任を負いかねます。 |
取材協力:GRIMP KANAGAWA
写真:GRIMP KANAGAWA/木下慎次
文:木下慎次
初出:2023年7月 Rising 夏号 [vol.30] 掲載