第53回消防救助技術関東地区指導会

 関東地区の消防本部から選び抜かれた消防救助隊員が集結し、救助技術を競い合い、学びあう「第53回消防救助技術関東地区指導会」が、2025年7月18日に神奈川県厚木市にある神奈川県総合防災センター・神奈川県消防学校において開催された。

 この指導会は、救助技術の高度化に必要な基礎的要素を錬磨し、市民の消防に寄せる期待に力強く応えることを目的として開催されるもので、関東地区1都9県(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、栃木県、群馬県、山梨県、長野県、静岡県、茨城県)の選び抜かれた消防救助隊員約700名が参加。また、この指導会は同年8月に神戸市で開催された第53回全国消防救助技術大会に出場する隊員の選考を兼ねており、訓練塔などを舞台に繰り広げられる陸上の部では、「引揚救助」「ロープブリッジ救出」「障害突破」の3種目に加え、「技術訓練」が実施され、水難救助訓練場(プール)を舞台に繰り広げられる水上の部では、「複合検索」「基本泳法」「溺者搬送」「人命救助」「水中結索」「溺者救助」「水中検索救助」の7種目が実施された。

 関東地区の消防救助隊員がさらなる技術向上と連携強化を目指すことを目的に実施されているこの指導会では、この機会を通して多くのレスキュアーに消防重機に関する認識を深めてもらおうと、併催イベントとして神奈川県内の消防重機が集結し、展示や訓練が行われた。神奈川県内では横浜市消防局、川崎市消防局、相模原市消防局、横須賀市消防局、厚木市消防本部などで重機運用部隊が活動しており、これら部隊が集結し、指導会会場において装備の展示や性能説明などを実施。ゼッケンをつけた指導会参加隊員が説明を熱心に聞き入る光景が見られた。また、神奈川県内に配備されている消防重機は、性能、サイズ、走行方式、メーカーなどがそれぞれ異なる特徴を持つラインナップとなっており、災害救助訓練場にて行われた訓練では、各重機の特性を活かした土砂災害対応連携訓練が行われた。

 本指導会は、救助隊員が救助技術を磨き合い、互いに切磋琢磨する場であるとともに、消防重機の特性や活用方法への理解を深める機会ともなった。こうした取り組みは、隊員一人ひとりの技術と士気を高めるだけでなく、各本部間の絆を強固にし、今後の大規模災害に立ち向かうための実践力強化につながるものといえる。関東地区の消防救助隊員がこの経験を糧に、連携をさらに強化し、市民の生命を守るための実践力を一層高めていくことが期待される。

 

陸上の部

  • [引揚救助] 2人が空気呼吸器を着装して塔下へ降下進入を図る。
  • [引揚救助] 要救助者を発見したら塔下へ搬送する。
  • [引揚救助] 隊員らが協力して要救助者を塔上へ救出する。
  • [ローブリッジ救出] 2人が水平に展張された渡過ロープにより対面の塔上へ進入する。
  • [ローブリッジ救出] 要救助者に接触したら縛着を行う。
  • [ローブリッジ救出] 要救助者を救出ロープに吊り下げてけん引して救出し、脱出を図る。
  • [障害突破] 連携協力して高塀など5つの障害を突破する。
  • [障害突破] 煙道の入口に準備された空気呼吸器を着装し、煙道を通過する。
  • [障害突破] 煙道通過後、15m先のゴールに向かい全速力で走る。

 

水上の部

  • [複合検索] 障害物(救命浮環)を突破しながら、沈められたリングを検索して引き揚げる。
  • [人命救助] 1人目は要救助者をクロスチェストキャリーで確保し、補助者が救助ロープをたぐり寄せて救助する。
  • [水中検索救助] 水面と水中を検索し、発見した水没している要救助者を対岸へ救助する。
  • [基本泳法] じゅんか飛び込みで入水し、ぬき手と平泳ぎでそれぞれ25m泳ぐ。
  • [水中結索] 3人がそれぞれ、水中の結索環にロープ結索を行う。
  • [溺者搬送] 要救助者をチンプールで確保した後、ヘアーキャリーにより救助する。
  • [溺者救助] 浮環に要救助者をつかまらせ、補助者がロープをたぐり寄せて救助。

 

消防重機展示&土砂災害対応連携訓練

  • 指導会会場の一角に開催地である神奈川県内の消防重機が集結し、展示が行われた。
  • 土砂災害対応連携訓練。まずは各本部が装備の特性や運用の工夫等を説明し情報交換を行う。
  • 消防重機としては国内唯一となる川崎市消防局の双腕作業機(重機)。
  • 総務省消防庁無償使用機ながら独自改良がなされた相模原市消防局の重機。
  • 横須賀市消防局は油圧ショベルとホイルローダーの2機を運用。
  • 厚木市消防本部の重機搬送車は土砂搬送を考慮しダンプ機能を備える。
  • 障害物排除機能に優れた川崎市消防局の双腕作業機が、放置車両を移動させる。
  • 相模原市消防局の重機が、バケットにより素早く大量の土砂を除去。
  • 除去された土砂は厚木市消防本部と横浜市消防局の小型重機が後方へ搬出。現場の活動空間を確保する。
  • 搬出された土砂は横須賀市消防局のホイルローダーが離れた集積場所へと運ぶ。
  • 集結した神奈川県内の消防重機たち。異なる特性を活かした連携を深めるべく、今後も連携訓練を行っていくという。

 

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取材協力:令和7年度消防救助技術指導会等開催地事務局/横浜市消防局

写真:横浜市消防局/木下慎次

文:木下慎次


初出:2025年10月 Rising 秋号 [vol.39] 掲載

 


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