埼玉県消防学校第39期救助科:交通救助訓練

埼玉県消防学校第39期救助科では、実車破壊やリアルな環境での訓練が可能であることから、校外研修として帝国繊維株式会社の協力を得ることとし、同社の下野工場(栃木県下野市)において交通救助に関する様々な訓練などを実施した。
令和7年9月18日に実施された今回の訓練では、埼玉県消防学校からのリクエストとして土砂埋没車両対応訓練が盛り込まれた。
車両破壊訓練
事故車両からの迅速な救出を目指すべく、バッテリー駆動式大型油圧救助器具を駆使した車両破壊訓練が行われた。訓練は帝国繊維のスタッフがインストラクターとなり、最新の救助手法が指導された。
事故車両からの救出、それに伴う車両破壊としては、ドアを強制的に開放して開口部を確保するというのが定番となる。この場合、ドアの間隙を拡張し、ロック機構を切断して開放という流れになるが、後部ドアが跳ね上げ式のハッチバックタイプであれば、ヒンジ外側の2点を切断し、ロック機構を残したまま手前側に後部ドアを引き倒せば巨大な開口部が得られる。また、屋根の開放を行う際も、すべてのピラーを切断してしまうのではなく、1本だけ部分的に残した状態としておく。この残した部分を中心に回転するようにすれば、開放時の人手も最小限で済む。こうした、最新の技術や活動のコツがレクチャーされた。
また、実際の訓練に加え、座学においても車両構造や救助手法等に関して、さらに発生の増加が懸念されているEV車の火災対応についても説明が行われた。
水没車両対応訓練
集中豪雨等により水没したアンダーパスに車両が突入して脱出不能となり、車両内に要救助者があるとの想定で行われた訓練。これも専用の訓練施設がなければ実施できない内容だ。
訓練ではアンダーパスを模した施設に1m程度浸水した実車両が用意され、学生らはウェーダーを着装して活動にあたる。こうした状況では足元が見えず、接近進入を行うだけでもリスクが伴う。また、浮力の影響で車体が動き、活動中に車体と壁などに挟まれるといった危険もある。活動手技のみならず、こうした危険回避についての知識もレクチャーされた。
土砂埋没車両対応訓練
土砂災害対応訓練とリンクするカリキュラムとして、埼玉県消防学校からの要望で実施されたのが土砂埋没車両対応訓練。
学生の多くが土砂対応訓練の経験がなく、この訓練で初めて土砂と対峙するという状況。そこで、屋根だけ見える状態に埋没した乗用車から要救助者を救出するというシンプルな内容とし、土砂に触れる、敵を知ることをテーマに、土砂の排除などを体感する機会と位置付け実施された。
想定は至ってシンプルだが、訓練は過酷を極める。水分量による土質の違いや排除の困難性を体感すべく、助手席側に対して運転席側は水分を多く含んだ土砂としている。まずは安息角を意識しながら助手席側の土砂を除去。比較的スムーズに要救助者(ダミー)の救出に成功する。一方、水分量の多い土砂で埋まった運転席側は土砂の除去は一筋縄ではいかない。助手席側での活動イメージから、当初5分ローテーションで活動を開始するも、瞬く間に体力が削られる。スコップによる同じ1すくいでも、水分量が多ければそれだけ重くなる。また、土離れが良い穴あきスコップを使えど、張り付きやすい土砂を落とすためには勢いが必要になり、1動作にかかる負担が圧倒的に大きくなる。そこで、5分のローテーションを3分に、最終的には2分として対応していた。それほどまでに、土砂を排除するということは困難を伴う。学生たちは身をもってこの現実を体感した。

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| 本記事は訓練などの取り組みを紹介する趣旨で製作されたものであり、紹介する内容は当該活動技術等に関する全てを網羅するものではありません。 本記事を参考に訓練等を実施され起こるいかなる事象につきましても、弊社及び取材に協力いただきました訓練実施団体などは一切の責任を負いかねます。 |
取材協力:埼玉県消防学校/帝国繊維株式会社
写真・文:木下慎次
初出:web限定記事



















































