全国消防救助技術大会とは

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一般財団法人全国消防協会では、昭和47年から毎年、全国消防救助技術大会を開催している。
この全国大会は、救助技術の高度化に必要な基本的要素を練磨することを通じて、消防救助活動に不可欠な体力、精神力、技術力を養うとともに、全国の消防救助隊員が一同に会し、競い、学ぶことを通じて、他の模範となる消防救助隊員を育成し、全国市民の消防に寄せる期待に力強く応えることを目的としている。
また、全国大会を通じて広く全国の市民に、消防の技術の高さ、力強さ、優しさをアピールするとともに、常に市民の目線に立って大会内容を研究し、全国大会を未来志向の大会とすることを目標としている。

毎年夏に開催されているこの大会は、日夜あらゆる災害から地域住民を守る隊員の、知識や技術を相互交換することにより、さらなる高度な救助技術の錬磨、強靱な体力と精神力を養成することなどを目的に、実施されている全国規模の訓練大会なのである。

 

前哨戦である「地区指導会」

救助隊は全国で約1500隊が設置されており、救助隊員は約24000人となっている。

その救助隊員の「甲子園」とも呼ばれる全国消防救助技術大会は、昭和47年に東京で開催されたのがはじまりだ。

全国消防救助技術大会(総合指導会)に出場するため、隊員らは事前に開催される、「地区指導会」に臨まなければならない。
地区指導会は地区予選大会のようなもので、北海道地区支部、東北地区支部、関東地区支部、東海地区支部、東近畿地区支部、近畿地区支部、中国地区支部、四国地区支部、九州地区支部の9地区支部でそれぞれ行われる。
各地の地区指導会で約400~1500人の隊員らが、日頃鍛え抜いた技術を競い合い、総合指導会である「全国消防救助技術大会」を目指す。
こうして「地区指導会」を勝ち抜いてきた、全国の「救助のスペシャリスト」たちが一堂に会し行われるのが、全国消防救助技術大会となる。
この全国大会に出場できるのはわずか1000人程度という、実に狭き門なのである。

 

陸上の部と水上の部に分かれて実施

訓練種目は、複雑多様化・大規模化の一途をたどる近年の災害状況をふまえ、回を重ねる毎にその内容や実施要領は変化している。
陸上の部では「ロープ応用登はん」「はしご登はん」「ロープブリッジ渡過」「ほふく救出」「障害突破」「ロープブリッジ救出」「引揚救助」「技術訓練」の8種目。水上の部では「複合検索」「基本泳法」「溺者搬送」「人命救助」「溺者救助」「水中結索」「水中検索救助」「技術訓練」の8種目があり、訓練塔やプールを使用し、隊員たちが熱戦を繰り広げる。
また、第35回大会からは内容が大幅に変更。「大会は基礎的な部分を練磨するもの」という位置づけを明確化し、さらには定められた手法・資機材に縛られず、創意工夫のもと安全・的確・迅速な訓練を発表するための新たな訓練として「技術訓練」が導入された。
日頃培って来た消防救助技術を存分に駆使し、熱く闘う隊員らの活躍に注目しよう。

 

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画像提供:広島市消防局

 

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地区支部分類一覧

地区支部名 都道府県
北海道地区支部
北海道(道西地区、道南地区、道央地区、道北)にある消防本部
東北地区支部
青森、秋田、岩手、山形、宮城、福島、新潟の各県にある消防本部
関東地区支部
群馬、栃木、茨城、埼玉、千葉、東京、神奈川、山梨、長野、静岡の各都県にある消防本部
東海地区支部
愛知、岐阜、三重の各県にある消防本部
東近畿地区支部
富山、石川、福井、滋賀、京都、奈良、和歌山の各府県にある消防本部
近畿地区支部
大阪府、兵庫県にある消防本部
中国地区支部
岡山、鳥取、広島、島根、山口の各県にある消防本部
四国地区支部
香川、徳島、愛媛、高知の各県にある消防本部
九州地区支部
福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄の各県にある消防本部

 

陸上の部

訓練種目 標準所要時間 訓 練 概 要
はしご登はん
(基礎)
24秒
自己確保の命綱を結索した後、垂直はしごを15メートル登はんする。災害建物への進入等、消防活動には欠かせない訓練。
ロープ
ブリッジ渡過
(基礎)
28秒
水平に展張された渡過ロープ20メートル(往復40メートル)を、往路はセイラー渡過、復路はモンキー渡過するロープ渡過の基本的な訓練。
ロープ
応用登はん
(連携)
16秒
登はん者と補助者が2人1組で協力し、器材を使わずに塔上から垂下されたロープを15メートル登はんする訓練。
ほふく救出
(連携)
70秒
3人1組(要救助者を含む)で、1人が空気呼吸器を着装して長さ8メートルの煙道内を検索し、要救助者を屋外に救出した後、二人で安全地点まで搬送する。ビルや地下街等で煙に巻かれた人を救出するための訓練。
ロープ
ブリッジ救出
(連携)
75秒
4人1組(要救助者を含む)で、2人が水平に展張された渡過ロープ(20メートル)により対面する塔上へ進入し、要救助者を救出ロープに吊り下げてけん引して救出した後、脱出する。要救助者を隣の建物等から進入し、救出することを想定した訓練。
引揚救助
(連携)
150秒
5人1組(要救助者を含む)で2人が空気呼吸器を着装して搭上から塔下へ降下し、検索後、要救助者を塔下へ搬送し、4人で協力して塔上へ救出した後、ロープ登はんにより脱出する。地下やマンホール等での災害を想定した訓練。
障害突破
(連携)
195秒
5人1組(補助者を含む)で4人が緊密な連携の下、一致協力して「乗り越える」「登る」「渡る」「降りる」「濃煙を通過する」の基本動作により5つの障害を突破する。災害現場の様々な障害を想定した訓練。
技術訓練
共通想定をもうけ、3消防本部により実施されます。
(審査対象ではありません。)

 

水上の部

訓練種目 標準所要時間 訓練概要
基本泳法
(基礎)
40秒
「じゅんか飛び込み」で入水した後、常に顔が水面に出た状態で、基本的な泳法である「ぬき手」と「平泳ぎ」でそれぞれ25メートルずつ泳ぐ。水難救助の基本的な泳法を習得するための訓練。
複合検索
(基礎)
40秒
マスク、スノーケル、フィンを着装し、スノーケリングで障害物(救命浮環)を突破しながら水中に沈められたリングを検索して、引き揚げる。水中の行方不明者の捜索を想定した訓練。
溺者搬送
(連携)
42秒
2人1組(要救助者を含む)で、救助者が「じゅんか飛び込み」で入水後、要救助者(溺者)を注視しながら近づき、チンプールで確保した後、ヘアーキャリーにより救助する訓練。
人命救助
(連携)
73秒
3人1組(要救助者を含む)で救助者が「二重もやい結び」のロープをたすき掛けにして要救助者の位置まで泳ぎ、要救助者をクロスチェストキャリーで確保し、補助者が救助ロープをたぐり寄せて救助した後、再び水没しつつある要救助者(訓練人形)を水面に引き揚げ、救助する訓練。
水中結索
(連携)
120秒
3人1組で水中の結索環に、第一泳者は「もやい結び」、第二泳者は「巻き結び」、第三泳者は「ふた回りふた結び」のそれぞれ指定された三種類のロープ結索を行う。水中におけるロープ結索技術を習得するための訓練。
溺者救助
(連携)
43秒
3人1組(要救助者を含む)で救助者と補助者の2人が協力して浮環にロープを結着後、補助者が浮環をプール内へ投下して、救助者が20メートル先の要救助者の位置まで浮環を搬送し、これに要救助者をつかまらせ、補助者がロープをたぐり寄せて救助する訓練。
水中検索救助
(連携)
102秒
4人1組で、2人が水面と水中を交互に検索し、要救助者(訓練人形)を発見後水面に引き揚げ、他の2人が救出地点まで交互に対岸間を運んで泳ぎ、救助する訓練。
技術訓練
共通想定をもうけず、3消防本部により実施されます。
(審査対象ではありません。)

 

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全国救助技術大会開催データ一覧

  開催日 主管都市 開催場所
第1回
昭和47年(1972年)9月28日
東京都
豊島園
第2回
昭和48年(1973年)9月21日
大阪市
扇町公園
第3回
昭和49年(1974年)9月18日
横浜市
県立保土ヶ谷公園
第4回
昭和50年(1975年)9月10日
東京都
平和島公園
第5回
昭和51年(1976年)9月10日
名古屋市
白川公園/瑞穂プール
第6回
昭和52年(1977年)8月18日
横浜市
市消防訓練センター
第7回
昭和53年(1978年)8月22日
千葉市
県消防学校
第8回
昭和54年(1979年)8月24日
大阪市
市消防学校
第9回
昭和55年(1980年)8月29日
名古屋市
白川公園/瑞穂プール
第10回
昭和56年(1981年)8月19日
横浜市
市消防訓練センター
第11回
昭和57年(1982年)8月19日
横浜市
市消防訓練センター
第12回
昭和58年(1983年)8月19日
大阪市
大阪城公園/市消防学校
第13回
昭和59年(1984年)8月24日
名古屋市
白川公園/瑞穂プール
第14回
昭和60年(1985年)8月22日
広島市
中央公園/県立屋内プール
第15回
昭和61年(1986年)8月22日
神戸市
市民防災総合センター/神戸市王子プール
第16回
昭和62年(1987年)8月21日
千葉市
県消防学校
第17回
昭和63年(1988年)8月19日
横浜市
市消防訓練センター
第18回
平成元年(1989年)8月25日
名古屋市
白川公園/瑞穂プール
第19回
平成2年(1990年)8月24日
広島市
中央公園/ファミリープール
第20回
平成3年(1991年)8月28日
大阪市
市消防学校
第21回
平成4年(1992年)8月28日
千葉市
県消防学校
第22回
平成5年(1993年)8月20日
福岡市
市図書館建設用/県立総合プール
第23回
平成6年(1994年)8月25日
京都市
市消防学校
第24回
平成7年(1995年)8月25日
北九州市
北九州市文化記念公園
第25回
平成8年(1996年)8月23日
札幌市
市消防訓練場/平岸プール
第26回
平成9年(1997年)8月22日
千葉市
県消防学校
第27回
平成10年(1998年)8月28日
大阪市
市消防学校
第28回
平成11年(1999年)8月19日
横浜市
市消防訓練センター
第29回
平成12年(2000年)8月18日
熊本市
熊本市総合屋内プール(アクアドームくまもと)
第30回
平成13年(2001年)8月8日
東京都
東京消防庁豊洲訓練場/東京辰巳国際水泳場
第31回
平成14年(2002年)8月23日
名古屋市
市消防学校
第32回
平成15年(2003年)8月28日
仙台市
仙台市泉総合運動場グラウンド/プール
第33回
平成16年(2004年)8月26日
兵庫県・神戸市
兵庫県消防学校
第34回
平成17年(2005年)8月25日
さいたま市
岩槻文化公園/県営大宮公園水泳場
第35回
平成18年(2006年)8月24日
札幌市
市消防学校/平岸プール
第36回
平成19年(2007年)8月22日
東京都
東京消防庁夢の島訓練場/東京辰巳国際水泳場
第37回
平成20年(2008年)8月29日
北九州市
勝山公園/勝山市民プール
第38回
平成21年(2009年)8月20日
横浜市
市消防訓練センター
第39回
平成22年(2010年)8月27日
京都市
京都市消防活動総合センター
第40回
平成23年(2011年)8月
さいたま市
震災などの発生を考慮し、
地区支部指導会を含め中止

中止決定:平成23年4月4日
第41回
平成24年(2012年)8月7日
東京都
ゆりかもめ新豊洲駅前特設会場/東京辰巳国際水泳場
第42回
平成25年(2013年)8月22日
広島市
旧広島市民球場跡地/広島市総合屋内プール
第43回
平成26年(2014年)8月27日
千葉市
広島市で発生した大雨に起因する
土砂災害を考慮し中止

中止決定:平成26年8月22日
第44回
平成27年(2015年)8月29日
神戸市
神戸学院大学ポートアイランドキャンパス/

神戸市立ポートアイランドスポーツセンター

第45回
平成28年(2016年)8月24日
松山市
松山中央公園
運動広場/アクアパレットまつやま
第46回
平成29年(2017年)8月23日
仙台市
宮城県総合運動公園 グランディ・21
第47回
平成30年(2018年)8月24日
京都市
台風接近を考慮し中止
中止決定:平成28年8月22日
第48回
令和元年(2019年)8月25日
岡山市
岡山市消防教育訓練センター/
岡山市立市民屋内温水プール
第49回
令和2年(2020年)10月24日
北九州市

新型コロナウイルス感染症の国内における
感染の状況を踏まえ令和3年10月に延期

延期決定:令和2年7月16日

第49回
令和3年(2021年)10月9日
北九州市

新型コロナウイルス感染症の国内における
感染の状況を踏まえ中止

中止決定:令和3年6月29日

第50回
令和4年(2022年)8月26日
東京都
立川立飛特設会場/
東京消防庁第八消防方面訓練場水難訓練施設屋内プール

 

全国消防救助技術大会の前身「都市レンジャー技術交換競技会」

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横浜市消防局イベント展示写真より

 

全国消防救助技術大会がスタートする前の昭和44 年、前身となる第1回都市消防レンジャー技術交換競技会が横浜市消防局により実施された。当時、横浜市消防局、東京消防庁、大阪市消防局の3本部では三都市親善剣道大会を持ち回りで実施しており、昭和44 年大会は横浜市が主管することになった。これにあわせて、新しい試みとして当時注目を集めていた消防レンジャー(救助)活動を取り入れた訓練会を併催することにした。訓練種目の多くは後の全国消防救助技術大会でも継承されているものが多い一方、自動二輪操縦といった訓練種目もあった。当初は横浜市消防局と近隣都市の参加を計画していたが、結果的には同局が救助技術指導を行った各都市も加わり、計25 都市が参加する大規模なものとなり、昭和44 年から昭和47 年までの計4回が開催された。

この都市消防レンジャー技術交換競技会という取り組みを全国版として発展させたのが、一般財団法人全国消防協会の主催により昭和47 年から開催されている全国消防救助技術大会だ。

訓練種目については時代の変化にあわせて適宜見直しが行われているが、第2回大会までは内容や訓練施設も手探り状態であり、第3回大会にて横浜市が主管を務めることになり、それまで都市消防レンジャー技術交換競技会の開催運営で培ってきたノウハウを生かして、現在のスタイルが完成したといえる。「施設基準」が作成され、A・B・C塔の構成が完成。このうち、高さ18mのA塔(はしご・ロープ登はん用)は同基準により横浜大会で誕生したもので、大会のシンボルタワーとして現在でもおなじみだ。さらに、B~C塔間に展張するロープの展張度を均一に保つことによって公平な審査ができるよう、ロープ展張器も採用された。こうして、いつでも、どの都市で開催されても同じ条件で訓練に望める環境が整えられたのである。

 

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横浜市消防局イベント展示写真より

 

都市消防レンジャー技術交換競技会の訓練種目

種目別 種目内容
総合救助活動 一周2キロの起伏のあるコース内の渡橋・高塀・濃煙通過・運梯渡り・泥土通過・高登はんの6障害を通過してゴールする。
救命索銃射撃 地上高15m、仰角45度で21mの距離に、縦1m、横80cmの標的を立て救命索発射銃により射撃回数3射で得点を競う。
セーラー渡り 地上高5~6m、水平距離30mのロープをセーラー渡りで1往復(40m)し、速度を評価する。
モンキー渡り 地上高10mの位置に、仰角41度のロープを固定し、このロープをモンキー渡りで登り、速度を評価する。
自動二輪操縦 スラローム、バランス(一本橋)、(クランク、悪路)のコースにて、操作技術の適性度を競う。
はしご登はん 15m垂直はしごを登る。(手、足をつかう)速度を評価する。
潜水人命検索 50mコースの底にリング5個を置き水中検索し引きあげゴールヘ速度を評価する。
浮遊物突破 50mコースに浮環3ケを置く。これをくぐりぬけてゴールへ。速度を評価する。
搬送競技 長方形の浮袋上に伏臥してスタートし、30m地点で仮想溺者(ウレタンフォーム)を浮袋上にのせてゴールする。
溺者搬送 始点から15m先の溺者を救助しゴールへ。速度を評価する。
50m背泳 速度を評価する。
50mバタフライ 速度を評価する。
100m自由形 速度を評価する。
100m平泳ぎ 速度を評価する。
200mリレー 速度を評価する。
400mリレー 速度を評価する。

 

都市消防レンジャー技術交換競技会開催データ一覧 

  開催日 開催都市 規模等
第1回
昭和44年(1969年)6月
横浜市
参加25都市、200人
第2回
昭和45年(1970年)7月
横浜市
参加64都市、400人
第3回
昭和46年(1971年)7月
柏崎市
参加109都市
第4回
昭和47年(1972年)7月
横浜市
参加13都市、295人
※第1回は「都市消防レンジャー技術交換会」、第2回以降は「都市消防レンジャー技術競技会」
※横浜市消防局が主催(全国救助技術大会は一般財団法人全国消防協会が主催)

 


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