全国初!悪路走行に適した自転車のチームを編成!「消防FATBIKE隊」発足
震災といった大規模災害に対処する新たなる消防ビークルが誕生し話題となっている。神奈川県の大和市消防本部では全国の消防組織で初めて「ファットバイク」を導入した。ファットバイクは3・8インチ(約9・6センチ)幅の極太タイヤが特徴で、野原や砂浜のような荒れた平地や雪道といった悪路などの走行に適したスポーツ自転車。これまで、消防活動にMTB(マウンテンバイク)を活用する例はあったが、MTBでの悪路踏破には相応の技術が必要になる。ファットバイクはMTB用タイヤの約2倍の太さのタイヤを備えており、これによりどんな場所でも安定した走りを実現。初心者でも安心して乗りこなすことができるといわれている。さらに、オフロードタイプの自動二輪車という選択肢もあるが、この場合は運転免許や燃料確保といった課題が生じる。そこで、大規模災害時における初動体制のさらなる強化を図ることを目的として、同市では平成29年3月にファットバイクを20台導入した。
消防車両と同じ朱色に塗装されたファットバイクは、本署に8台、北分署に4台、南分署に4台、西出張所に2台、柳橋出張所に2台が配置されており、平常時は事務連絡など通常用途に活用。こうした普段使いにより隊員が感覚的に運用できるようにしている。
そして、大規模災害時など、道路の寸断などで消防車両の通行が困難となった場合には、2人1組のチームとなり「消防ファットバイク隊」として現場に出動する。この際、消防隊や救急隊、救助隊などの所属部隊にかかわらず、参集隊員により順次チームを編成し、消防ファットバイク隊として出動する形となる。運用隊員の携行装備としてはボール型投てき消火用具や救急セットなどを収めたバックパック、そして無線機などがあり、情報収集や初期消火、応急手当などの任務に当たることとなる。
去る平成29年5月2日に「消防ファットバイク隊」の発足式が実施され、消防職員20名によりファットバイクを使用した救出救護訓練や初期消火訓練、そして悪路を模したコースを用いての走破性の披露が行われた。
震災といった大規模災害により道路が寸断された場合の移動手段については、さまざまなアプローチで各消防本部において検討が進められているところだ。そうした中、ファットバイクの機動力に着目した大和市の取り組みは、新たなるモデルケースとして全国から注目を集めている。
消防車カラーに塗装されたファットバイク。太いタイヤにより安定性が高く、誰でも乗りこなせるのが特徴だ。
写真1/3.8インチ(約9.6センチ)幅の極太タイヤにより悪路を突き進む。
写真2/ブレーキレバーは前輪用のみを備える。ハンドル周りにはライトと反射鏡を装備。
写真3/後輪ブレーキはペダルを逆回転させることにより作動させるコースターブレーキ仕様。
写真4/スタンドも備えているため、通常運用でも問題なく活用できる。
取材協力:大和市消防本部
写真・文:木下慎次