災害対応能力を高めろ!! 第2回徳島県警防技術交換会

 火災対応に関するスキルアップを目指した取り組みが各地で盛り上がりを見せている。去る平成30年3月16日、徳島県消防長会の主催により同県消防学校において第2回徳島県警防技術交換会が実施された。この交換会は実践的な訓練を通じ、消火活動に必要な警防活動技術や災害対応能力の向上、育成を目的とするもので、今回で2回目の開催となる。特徴的なのは徳島県下13消防本部の消防隊が一同に会し訓練を実施すること。本部単独、あるいは代表本部のみ選抜して参加するスタイルは全国的に多くみられるが、全本部合同で実施されるケースは極めて珍しい。徳島県では各本部間の交流を深め、顔の見える関係づくりを構築することができる貴重な機会と位置付け、あえてこのスタイルで実施しているのだ。
訓練のテーマは耐火建物での火災において、最先着隊による単独活動を想定した消防活動としており、各消防本部から選出された4名(小隊長・機関員・警防隊員2名)編成の消防隊1隊にて活動を展開する。基本想定は7階建耐火建物の3階から出火し、現在も延焼中。要救助者あり。これに対して出場隊は自本部が消防活動等で常時使用している装備を活用し、筒先口径も消火戦術で使用している口径を用いて対応する。なお、出場隊に対してはこれら統一情報に加え、活動を展開する建物(訓練塔)の簡単な概要しか伝えられておらず、実災害対応と同等の事前情報のみで訓練に臨む。

無線指令を受けて出動するところから訓練が始まる。車内から現場(写真奥のC棟)を確認する。

 訓練は乗車待機の状態からスタート。「火災指令 建物火災第一出動 7階建耐火建物3階出火 逃げ遅れ者あり 以上」との無線による出場指令により訓練を開始する。出場隊待機場所から指定された経路にて車両を進めると、現場である訓練塔が目視できるようになる。白煙上昇の現示旗と建物4階の手振り要救助者を確認すると、小隊長は無線にて状況報告を送る。指定された水利(防火水槽)に到着すると、ホースカーにより約100mのホース延長を行い出火建物北側に部署する。この段階で建物4階の要救助者は意識を失い、その場に倒れ込む(生体からダミーに切り替え)。救出のためには出火階である3階に三連はしごを投入せねばならないのだが、現場建物は2階屋根部分がせり出して広いベランダ状になっており、ここに至る動線は建物北側の屋外階段のみ。出場隊は屋外階段を用いての徒手搬送、あるいは3階からロープにより引き揚げるなどして三連はしごの投入を図る。
 応急はしごにより要救助者の救出が完了すると、出火室の火炎制圧に移行する。玄関ドアのみ無施錠で開放可能であり、他の開口部は施錠されており破壊も不可。また、室内は濃煙熱気システムにより実際に火災環境が再現されており、暗闇の中で火点を示す赤いマーカーライトだけが光る状態だ。小隊長の指示により面体を着装すると、隊員2名が内部進入を開始。ドア前では小隊長がホースの送り込みなどを行いサポートする。内部では左壁伝いに前進すると、建物内南東側の角に設置された火炎標的に行き当たる。これに対し放水を行い、標的を落下させた時点で訓練終了となる。
 訓練は水利部署位置に停車した時点からタイム評価が行われ、送水を開始するまでが2分、火炎標的を落下させるまでが18分という基準タイムを設定。訓練制限時間は23分となっている。あわせて、消防司令補の階級にある各本部のベテランが評価員として配置され活動をチェック。訓練後には小隊全員を集め、評価員から指導・助言が行われる。つまり、見学することで他隊の活動からヒントを得ることができ、参加することで日ごろの取り組みに対する効果確認を図ることができるのだ。
当日はあいにくの雨模様であったが、各消防本部から選出された精鋭13隊の活動を見ようと多くの見学者が集結。参加者と見学者それぞれにとって有意義で実り多い訓練となったようだ。

【参加消防本部】

徳島市消防局   美馬西部消防組合消防本部   名西消防組合消防本部
鳴門市消防本部   徳島中央広域連合消防本部   海部消防組合消防本部
小松島市消防本部   美馬市消防本部   那賀町消防本部
阿南市消防本部   板野東部消防組合消防本部  
みよし広域連合消防本部   板野西部消防組合消防本部  

  • 指定された防火水槽に部署。ホース延長と資機材の準備を行う。
  • 三連はしごを徒手搬送する。
  • 現場の状況を確認し、小隊長が隊員に下命する。
  • ロープにより3階へ三連はしごを投入している例。
  • 屋外階段により三連はしごを徒手搬送している例。
  • 三連はしごの投入と合わせホースの引き込みも実施。
  • 上階の要救助者を応急はしごの要領で救出する。
  • 要救助者は指定の位置まで搬送を行う。
  • 出火室への進入を前に小隊長がドアの温度確認を実施。
  • 面体着装。防火フードが採用されている本部はこれも使用する。
  • 内部進入開始。水損防止を図るべく、放水は最小限とする。
  • 小隊長は進入隊員のサポートを行う。
  • 壁伝いに内部を進む(写真は脱出時の状況)。
  • 火炎標的。このボールを放水で落下させると想定終了。
  • 終了後はそのまま評価員から指導・助言が行われる。

 


 

本記事は訓練などの取り組みを紹介する趣旨で製作されたものであり、紹介する内容は当該活動技術等に関する全てを網羅するものではありません。
本記事を参考に訓練等を実施され起こるいかなる事象につきましても、弊社及び取材に協力いただきました訓練実施団体などは一切の責任を負いかねます。

 


 

取材協力:徳島県消防長会/徳島県消防学校/徳島県下13消防本部
写真:伊木則人/木下慎次
文:木下慎次


初出:2018年10月 Rising 秋号 [vol.11] 掲載


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