注目の消防車両 CLOSE-UP! 中型水陸両用車

 総務省消防庁では新たに「中型水陸両用車」として全地形対応車II型2式を整備し、緊急消防援助隊用の無償使用車両として2019年に徳島県の板野東部消防組合消防本部と千葉県の山武郡市広域行政組合消防本部に配備した。

 同車は米国・Hydratrek社製で、可搬消防ポンプでおなじみのトーハツ株式会社が輸入し、消防車両仕様に追加艤装を行ったもの。山武郡市広域行政組合消防本部では「レッドバスティオン」の愛称のもと同車を運用し、運用開始から間もない10月25日、記録的な大雨で一時孤立状態となった千葉県山武市の幼稚園から園児や教職員約60名を救出した。

 陸上では左右計8輪のタイヤによりゴムクローラーを回転させ、不整地や泥濘地など路面状況にとらわれず走行することができ、最高速度は時速20㎞。水上では後部に備えられた2基のプロペラにより時速5㎞にて航行が可能だ。一見すると重そうに見えるが、ボディーはアルミニウム製となっているため軽く、車両重量は3500㎏。また、車体下部の空気室や車体内部に封入されたウレタン材、タイヤなどにより浮力を得ている。

 エンジンはクボタ製VT3600Tターボチャージャーディーゼルが搭載されており、燃料タンク容量は40Lで約10時間の稼働ができる。また、同車は油圧駆動式であり、エンジンにより油圧を発生させ、その油圧にてタイヤやプロペラを作動させる方式となる。走行に関してもハンドルやペダルではなく2本のレバー操作により運転する。

 なお、写真は本格運用を前にした訓練時のものであり、現在では警光灯などの仕様が若干変更されている。

 


前方に定員2名の運転室を備え、後方に隊員や要救助者を乗せるスペースを確保。その中間にエンジンを搭載する。ゴムクローラは計8輪のタイヤにて回転させる。

 


陸上は「大型特殊免許」、水上は「2級小型船舶操縦士」により操縦が可能。

 


後方スペースの状況。左右に6名が座れる座席が用意されている。

 

操縦はセンターコンソールにあるコントロールレバー(2本)で行う(写真右)。後部の油圧駆動式プロペラ2基にて水上航行を行う(写真左)。

 

要救助者を収容したらそのまま救急隊の元まで搬送可能。

 

2019年10月25日からの大雨により浸水が発生したエリアにおいて救助活動を行う山武郡市広域行政組合消防本部の中型水陸両用車。(出典:総務省消防庁ホームページ)

 

 

SPEC DATA
車名米国・Hydratrek社
通称名8×8 D2488B-P
全長4930mm
全幅2360mm
全高2940mm
車両重量3500kg
搭乗人員(陸上)8名
搭乗人員(水上)6名
走行速度20km/h
航行速度5km/h
燃料軽油
最大稼動時間約10時間
船体材質アルミニウム
艤装メーカートーハツ

 

搬送車

 

中型水陸両用車を搬送する専用車両。現場直近までは専用搬送車輌により移動を行う。

 

 

SPEC DATA
車名いすゞ
通称名フォワード
全長9480mm
全長(荷台展張時)1218mm
全幅2490mm
全高2880mm
車両重量7800kg
乗車定員3人
艤装メーカートーハツ

 

 


 

 

 


 

おことわり
2019年10月25日からの大雨による災害において、山武郡市広域行政組合消防本部による中型水陸両用車を活用した救助活動が各メディアで報道された直後より、当レポートコーナーの「山武消防フェスタ2019」及び「中型水陸両用車」記事にアクセスが集中。弊社ホームページが閲覧しにくい状況が発生いたしました。
ご利用中の皆様にご迷惑をおかけ致しました事を深くお詫び申し上げます。
こうした経緯を踏まえ、WEB限定で紹介させていただいておりました記事を再構成し、Rising vol.16において本記事を緊急誌面掲載させていただきました。

 

お 知 ら せ
本記事は最新消防装備等を広く紹介する趣旨で製作されたものであり、紹介する装備等は弊社が製造や販売を行うものではございません。
また、当該装備の製作や調達に関するお問い合わせを頂戴致しましても、弊社では対応いたしかねます。あらかじめご了承ください。

 


 

取材協力:山武郡市広域行政組合消防本部

写真・文:木下慎次


初出:2020年1月 Rising 冬号 [vol.16] 掲載


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