東京消防庁 即応対処部隊運用開始

 東京消防庁では、近年頻発する広域自然災害への災害対応力強化を図るため、新たな部隊として「即応対処部隊」の運用を開始した。同隊の発隊は令和2年2月で、運用開始までの間に新装備に対する習熟訓練などを重ね、当初は令和2年度の東京消防庁消防技術安全所一般公開と合わせて令和2年4月18日(土)に運用開始式が行われる予定であった。しかし、新型コロナウイルス感染拡大防止のため運用開始式は中止となり、同日13時00分より運用開始となった。

 平成30年7月豪雨(西日本豪雨)や北海道胆振東部地震、平成30年台風21号といった大規模で広域的な自然災害が頻発する昨今、既存の消防部隊による対応では様々な課題が浮き彫りとなっていた。こうした災害では道路寸断等により被災現場への進入が困難であり、要救助者の有無を含めた災害実態の把握に時間を要する。結果として、少ない情報に基づき各部隊が個別に活動を行うしかない。

 こうした現実を打破するために東京消防庁が独自に整備したのが即応対処部隊だ。

 既存の部隊では進入困難な現場へ先行できる能力を備えることで迅速な災害実態の把握と救出救助体制の確立を可能とし、情報を出場部隊に速やかに伝達できる体制の構築することでハイパーレスキューといった他の実働部隊の対応力強化が期待できる。また、消防部隊を統制し、各部隊の能力を発揮させる体制の構築によりこれまで場当たり的な活動を余儀なくされていた場面において、計画的な部隊活動を実現できるようになる。

 同隊は警防本部直轄の部隊として組織され、東京消防庁第七消防方面訓練場(葛飾区高砂一丁目1番1号)内に隊舎がおかれており、「即応情報隊」と「即応救助隊」で構成される。各部4名の人員で編成される即応情報隊は全地形活動車やドローン等を駆使し、先遣隊として災害の実態をいち早く把握することを主任務としている。即応救助隊は各部8名で編成され、発災直後に必要となる情報収集と救助活動の中核を担う。即応対処部隊として、これに部隊長を加えた各部13名(3部交替)が総括部隊長のもとで活動を行い、その他、部隊を管理する職員を加えた総勢42名で運用が行われている。

 新たなる装備を駆使し、頻発する大規模自然災害に立ち向かう即応対処部隊。
 全国の消防本部が抱える悩みを解消するひとつの方向性として、大きな注目を集めている。

 


 

 

主な配置車両等

 大規模で広域的な自然災害に対処する専門部隊として、東京消防庁では消防機関として初導入となる装備を同隊に配備した。通常の消防部隊では進入困難な地域への素早い進入を実現するため、ドローンはもちろん、いわゆるバギー型の全地形活動車やエアボートを導入。また、基幹車両ともいえる救助車のベースには踏破性の高いウニモグを採用し、現地での活動拠点となる高機能指揮支援車も2段拡幅機能を備えた最大級の広さを確保できる仕様となっている。

 

 

高機動救助車

広域浸水地や土砂災害現場に早期に部隊を展開するため、水深1.2mまでの浸水地や43度までの傾斜を走行できる高踏破性能を有した車両。「活動型」(写真左)と「搬送型」(写真右)がある。

 

【高機動救助車(活動型)概要】
型式メルセデス・ベンツ U 5023
全長約7.17m
全幅約2.49m
全高約3.55m
車両総重量約11,075kg
乗車定員3名
フロントウインチ常時5t使用可能
放水機能 可搬ポンプ積載
車上放水銃1000L/分

 

【高機動救助車(搬送型)概要】
型式メルセデス・ベンツ U 5023
全長約6.92m
全幅約2.49m
全高約3.58m
車両総重量約13,535kg
乗車定員3名
フロントウインチ常時5t使用可能
積載装備2.9tクローラークレーン

 

  • ウニモグをベースとした高機動救助車「活動型」(写真左)と「搬送型」(写真右) [写真提供:東京消防庁]
  • 高機動救助車(活動型) [写真提供:東京消防庁]
  • 高機動救助車(活動型) [写真提供:東京消防庁]
  • 高機動救助車(搬送型) [写真提供:東京消防庁]
  • 高機動救助車(搬送型) [写真提供:東京消防庁]

 

 

全地形活動車

泥濘地や急斜面、浸水地、道路損壊地等へ先行するための不整地走行性能に優れた小型かつ軽量な四輪駆動車。クローラーの装着が可能で、泥濘地や急斜面、浸水地、道路損壊地等の踏破性を強化することができる。

 

【全地形活動車概要】
型式POLARIS RTE87
全長約2.96m
全幅約1.65m
全高約2.01m
車両総重量約1,385kg(積載物450kg含む)
乗車定員2名

 

  • 消防組織では初の正式採用となるバギー型の全地形活動車 [写真提供:東京消防庁]
  • 全地形活動車(タイヤ装着状態) [写真提供:東京消防庁]
  • 全地形活動車(タイヤ装着状態) [写真提供:東京消防庁]
  • 全地形活動車(クローラーユニット装着状態) [写真提供:東京消防庁]
  • 全地形活動車(クローラーユニット装着状態) [写真提供:東京消防庁]
  • 泥濘地でも抜群の踏破性を発揮 [写真提供:東京消防庁]
  • 泥濘地でも抜群の踏破性を発揮 [写真提供:東京消防庁]
  • 泥濘地でも抜群の踏破性を発揮 [写真提供:東京消防庁]

 

 

高機能指揮支援車

被災地での長期かつ過酷な環境下での消防応援活動を支援するため総務省消防庁が無償貸与を行う拠点機能形成車を発展的に進化させた独自仕様の車両。拠点機能形成車が片側拡幅で広さ約40平方メートルの空間を確保できるのに対し、同車は両側2段式拡幅により約70平方メートルの空間確保が可能。人員が必要となるテント拡張などを行わずとも隊員を収容しての活動方針の伝達や避難者等の一次的な寒暖対策を行うことが出来る。

 

【高機能指揮支援車概要】
型式いすゞ 2KG-CYY77CY
全長約11.97m
全幅約2.48m
全高約3.76m
車両総重量約23,500kg
乗車定員3名
主要機能等左右拡幅(2段式)の拡幅室(約70平方メートル)
冷暖房装備6基
可搬ミスト装置積載
ミストシャワーユニット
(赤外線サーモカメラ付きミスト冷却装置)積載
熱中症予防WBGT表示パネル積載

 

 

エアボート

スクリューがなく水面の浮遊物に影響を受けない構造で、摩擦抵抗の低い船底により陸上も滑走できる特殊艇。定員6名の「大型」(写真)と定員4名の「小型」を配備。

 

【エアボート(大型)概要】
全長6.79m(ラダー収納時 6.36m)
全幅2.26m
全高2.55m
総重量約1300kg
定員6名

 

【エアボート(小型)概要】
全長5.69m(ラダー収納時5.2m)
全幅2.25m
全高2.48m
総重量約1100kg
定員4名

 

  • 定員6名のエアボート(大型) [写真提供:東京消防庁]
  • 多数の投光器を備えており安全な活動を可能にしている [写真提供:東京消防庁]
  • 水面はもちろん、陸上の滑走も可能 [写真提供:東京消防庁]
  • 水面はもちろん、陸上の滑走も可能 [写真提供:東京消防庁]

 

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本記事は訓練などの取り組みを紹介する趣旨で製作されたものであり、紹介する内容は当該活動技術等に関する全てを網羅するものではありません。
本記事を参考に訓練等を実施され起こるいかなる事象につきましても、弊社及び取材に協力いただきました訓練実施団体などは一切の責任を負いかねます。

 


 

取材協力:東京消防庁

写真・動画提供:東京消防庁

文:木下慎次


初出:web限定記事

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