日本初仕様! NV350キャラバンベース 災害対応特殊救急自動車

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■全国注目の新仕様救急車

神奈川県にある平塚市消防本部では、年々増加する救急自動車の出動件数に対応するべく、救急体制の強化のため本署に救急隊を増隊することとした。この増隊分と、海岸出張所配置車両の更新分をあわせた計2台の救急自動車を新たに製作した。
この車両は、日産自動車製のNV350・キャラバンディーゼルターボ車をベースとしている。スーパーロングボディでワイド幅という点は市販車と同等だが、これに独自のスーパーハイルーフを搭載することで、従前車両(日産・パラメディック)よりも患者室天井高を約9cmほど高くすることに成功している。
同車の艤装を担当したオートワークス京都では、すでに「NV350キャラバン救急車」として2B型救急車を展開しており、常備消防や医療機関などで採用されているところだ。平塚市の車両はこれとは車内レイアウトが異なり、スーパーハイルーフを搭載している点が決定的な違いといえる。つまり、同車は平塚市消防本部の完全オリジナル仕様であり、日本初の仕様であるといえるのだ。

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■緊援隊としても出動する

今回製作された2台はいずれも災害対応特殊救急自動車となっており、緊急消防援助隊の一員として応援出動するという使命をもっている。車内には磁気浮上式防振架台(デルタツーリング製メディックマスターNA-3)を装備するとともに、最新式の高度救命処置用資器材をを多数積載している。この説明を聞いてお気づきの方もいるだろうが、同車はあくまでも高規格救急自動車「相当」の車両であり、正式名称に「高規格」の文字は入れられていない。

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■あえてディーゼル車という考え方

平塚市消防本部が既製車両ではなく完全独自仕様救急車の製作に踏み切ったのには、これまでになかった性能を実現するために他ならない。その代表的な例が搭載エンジンだ。日々走り回る救急車にとって、燃費という要素は無視できない。現行の高規格救急車のうち、ディーゼル車なのは札幌ボデー工業のトライハートのみ。トヨタ・ハイメディックと日産・パラメディックはガソリン車で、後者はさらにハイオク仕様となる。救急車は出動が多いため、その分燃料代がかかってしまう。予算縮減効果を考えると、ディーゼル車の採用はメリットが高い。さらに、緊援隊登録車両として考えると、被災地において救急車のためだけに別途油種を確保することが避けられるというメリットが生まれる。現在ではディーゼルエンジン性能も向上し静寂性やパワーが高まっている。また、平塚市の市域は比較的平坦な地形であり、登坂性能などを強く意識する必要はない。先行して2月より運用を開始している海岸出張所配置車両の運用隊員からは、エンジン音や走行性能でストレスを感じることもなく、問題は感じないという声が上がっているそうだ。
救急車両を取り巻く情勢を考えれば、救急車のベースとして現代のディーゼル車を採用するのは自然な流れとも言える。こうした点から、全国の消防本部から注目を集める存在となっている。

 

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パラメディックよりも9cm高い天井高を実現した「スーパーハイルーフ」の屋根パーツ。フロント警光灯はビルトインタイプとし、発光ユニットはパラメディックのものを流用している。(写真1)/側面作業灯は左右1基を装備。(写真2)/バッテリーはメンテナンスも容易な引き出し式。これもパラメディックより高い位置にすることで作業姿勢の負担を軽減出来るよう配慮。(写真3)/屋根パーツは車体に被せる形でセット。大きな雨どいが設けられている。(写真4)/マフラーはベースシャーシの標準仕様のまま左後方出し。(写真5)/ベース車両のメーカーエンブレム台座に消防章がセットされている。(写真6)/後部には踏みしろの大きなステップを追加し、バンパーも加工が施されている。(写真7)/後部警光灯はバックドアと屋根側面に小型補助警光灯を搭載。これにより突起物のせり出しを最低限に抑えている。(写真8)/サイレンアンプのスピーカーユニットはナンバープレート裏の位置に2基を搭載。(写真9~10)

 

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運転室の状況。バックモニターには患者室の様子を切り替え表示できる。(写真1)/患者室にセットされたカメラ。(写真2)/バックモニターにならんでドライブレコーダーを装備。(写真3)

 

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患者室の状況。角型ボディー形状であるため、車内空間も広く確保されている。(写真1)/酸素ボンベは左側スライドドアを開けてすぐの場所に。(写真2)/患者頭部側に位置する跳ね上げシート。防振ベッドとの間隔も充分に確保されている。(写真3)/車内レイアウトは一般的な高規格救急車と同等。(写真4)/付き添いシート上部には収納ボックスやホワイトボードを設置。(写真5)/車内整理をする隊員。ゆとりの天井高により自然な姿勢で作業が出来る。(写真6)/バックボードやスクープストレッチャーはラック下の専用スペースに収納。(写真7)

 

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防振ベッドはデルタツーリング製のメディックマスター・NA-3で、メインストレッチャーは松永製作所のGT-09を採用。

 


 


car_001-008_4menSPEC DATA

全長 5.44m
全高 2.55m
全幅 1.88m
ホイール

ベース

2.94m
最小回転

半径

6.0m
排気量 2.48L
エンジン型式 ディーゼル

ターボ

燃費 4.7km/L
総重量 3,260kg
艤装 オートワークス京都

 


 

本記事は最新消防装備等を広く紹介する趣旨で製作されたものであり、紹介する装備等は弊社が製造や販売を行うものではございません。

また、当該装備の製作や調達に関するお問い合わせを頂戴致しましても、弊社では対応いたしかねます。あらかじめご了承ください。

 


 

取材協力:平塚市消防本部[神奈川県]

写真・文:木下慎次

 

 


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