注目の消防車両 CLOSE-UP! 指揮車

 西日本豪雨災害(平成30年7月豪雨)を教訓に、広島県の東広島市消防局では指揮車と予防査察車の更新を行った。同災害では同時多発的に土砂崩れなどが発生し、長期にわたる捜索活動が展開された。この各現場に対し人員や物資などの輸送を頻繁に行わねばならず、また、道路損壊などにより対応可能な車両が限られることに悩まされた。そこで、走破性と輸送力強化を図るべく、8人乗りワンボックスの三菱デリカD:5を採用。デリカは2019年にビッグマイナーチェンジ(MC)が行われ、現在では新フロントマスクのディーゼル車のみが製造されている。同車更新時はまだガソリン車が販売されており、ディーゼル車が最低地上高185㎜なのに対し、ガソリン車は最低地上高210㎜だった。わずかな差ではあるが「少しでも最低地上高を確保し、悪路に備える」という発想から指揮車ではガソリン車を選択。そのためMC後の製作車両ながらMC前のフロントマスクとなっているのだ。また、同時期に更新を控えていた予防査察車も同等の仕様で製作。搬送性と走破性を備えた車両を2台とすることで、同様の事態が発生した場合の対応力強化が図られた。

 

デリカD:5をベースに製作された新指揮車。ガソリン車を採用しているためMC前のフロントマスクとなっている。

 

指揮車のみ車上のキャリアとリアラダーを備える。

 

車内も大きな改造はなく無線機などを追加したシンプルな仕様。

 

シートも標準仕様に防汚用にカバーをかけたシンプルな仕様。

 

後部2列をフラットにすれば傷病者の一次搬送(現場から救急車待機場所)にも対応可能。

 

スケッドストレッチャーに収容した傷病者の搬送例(写真左)。シートとバックドアの間のスペースを活用しエンジンカッターなどのアイテムを搬送することもできる(写真右)。

 

同車と合わせて整備された偵察用ドローン(写真右上)。熱画像も得ることができ要救助者の検索に効果を発揮する(写真右下)。現場では車両から電源を得てモニターを設定し、大画面で画像を確認することが出来る(写真左・写真は予防査察車)。

 

同車と合わせて整備された指揮本部用資機材。テーブル(写真左上)やテント(写真左下)はアウトドア用を採用することでコンパクト化を図っている。照明は指揮本部周辺を照らせるモデルを採用(写真右)。

 

同等の仕様で製作された指揮車(右)と予防査察車(左)。

 

 

SPEC DATA
【指揮車】
車名 三菱
通称名 デリカ D:5
シャーシ型式 DBA-CV5W
全長 4870mm
全幅 1790mm
全高 2090mm
ホイルベース 2850mm
最小回転半径 5.6m
車両総重量 2300kg
乗車定員 8名
原動機型式 4B12
総排気量 2350cc
駆動方式 4×4
無線機 活動波1.2、救急波1.2、主運用波1、統制波1
配備年月日 令和2年3月5日
艤装メーカー 河野ボデー製作所
【予防査察車】
車名 三菱
通称名 デリカ D:5
シャーシ型式 DBA-CV5W
全長 4870mm
全幅 1790mm
全高 2090mm
ホイルベース 2850mm
最小回転半径 5.6m
車両総重量 2270kg
乗車定員 8名
原動機型式 4B12
総排気量 2350cc
駆動方式 4×4
無線機 活動波1.2、救急波1.2、主運用波1、統制波1
配備年月日 令和2年3月5日
艤装メーカー 河野ボデー製作所

 


 

お 知 ら せ
本記事は最新消防装備等を広く紹介する趣旨で製作されたものであり、紹介する装備等は弊社が製造や販売を行うものではございません。
また、当該装備の製作や調達に関するお問い合わせを頂戴致しましても、弊社では対応いたしかねます。あらかじめご了承ください。

 


 

取材協力:東広島市消防局

写真・文:木下慎次


初出:2020年7月 Rising 夏号 [vol.18] 掲載


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