注目の消防車両 CLOSE-UP! 救助工作車 II型

 宮崎県の都城市消防局では、救助工作車が更新時期を迎えたことを受けて新車両を製作した。同車は最新の機能や資機材を搭載しており、管内の災害対応のみならず、発生が危惧されている南海トラフ地震等の大規模かつ長期的な災害に対する緊急消防援助隊としての出動も見据えて仕様を検討。日野プロフィアの8t級シャーシ・シングルキャブ仕様をベースに積載庫側へ隊員室を付加した、いわゆる第3のバス型と呼ばれる構造で、バス型救助工作車としては同車が宮崎県で初の仕様となる。

 車内空間は広域応援出動に伴う長距離移動にて隊員の負担を軽減できるよう広く確保されている。カーテンにより目隠しが可能なため、平時には水難救助対応に伴うウェットスーツの着装等に、応援出動時はミニ指揮所や休憩スペースとして活用できる。また、後列側には13インチのフリップダウン式モニター(カーナビ連動)を設置し、情報収集用として活用できる。

 当初の案では後列ドアは左側のみとして車内空間を確保することにしていたが、部署位置に左右されず、先代と同様の迅速な初動対応を実現するためには両側ドアが必須と考え、右側ドアも備えることにした。後部ドアを折り戸式としているのもポイントだ。都城市の場合、夏季は南九州特有の台風襲来が続く。通常のドアでは強風により煽られヒンジを損傷するリスクがあるため、隊員らは日頃からドア開閉に神経を使う必要があったのだ。折り戸式とすることでこの不安を払拭することできた。

 管内運用と広域応援、地域性や全国的な災害傾向など、あらゆる角度から仕様を検討し、頼もしい一台に仕上げられている。

 

テイセンのHX型をベースに大規模で長期に及ぶ災害活動を見据えて製作された車両。バス型救助工作車としては宮崎県で初採用となる。

 

左側の積載状況。油圧救助器具はエンジン式とバッテリー式を両採用。

 

右側の積載状況。舟形担架も積載庫内に収納され、左右から取り出せる。

 

右側にも乗降ドアを装備。折り戸式なので展開幅が少なく、狭隘路上でも乗降しやすくなる。

 

クレーンは救助現場での活用を意識し、自動収納機能も有するヒアブ製の屈曲式を採用(写真左)。リアバンパー部には1人での積載が可能な船外機専用台車をセットできる(写真右)。

 

キャブルーフデッキには緊援隊出動時にスペアタイヤを積載可能。

 

更新配備された新型救助工作車(左)と先代救助工作車(右)。

 

 

SPEC DATA
車名 日野
通称名 プロフィア
シャーシ型式 2PG-FH1AGA(改)
全長 8940㎜
全幅 2490㎜
全高 3530㎜
ホイルベース 4350㎜
最小回転半径 6.8m
車両総重量 15015㎏
乗車定員 5名
原動機型式 A09C
総排気量 8860㏄
駆動方式 2WD
ウインチ(能力) 前:ロッツラー製TR030/7(5t)
クレーン(能力) ヒアブ製X-HIDUO 082(2.9t)
照明装置 湘南工作所製 SLD-6000UCL2-D
発電装置 湘南工作所製 GE-2412B
配備年月日 令和2年3月26日
艤装メーカー 株式会社テイセンテクノ
契約先 中村消防防災株式会社

 


 

お 知 ら せ
本記事は最新消防装備等を広く紹介する趣旨で製作されたものであり、紹介する装備等は弊社が製造や販売を行うものではございません。
また、当該装備の製作や調達に関するお問い合わせを頂戴致しましても、弊社では対応いたしかねます。あらかじめご了承ください。

 


 

写真・情報提供:都城市消防局

文:木下慎次


初出:2020年10月 Rising 秋号 [vol.19] 掲載


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