注目の消防車両 CLOSE-UP! 重機・重機搬送車
総務省消防庁が緊急消防援助隊の充実強化を図るため、全国の消防本部に無償使用制度を活用して整備を進める「津波・大規模風水害対策車」「重機及び重機搬送車」等が令和元年度末に広島市消防局に配備され、隊員の操作技術習熟訓練を経て令和2年9月1日より運用が開始された。
重機及び重機搬送車は土砂災害等において救助活動を阻む大量の土砂やがれき等を除去する機能を備えており、重機はアームに装着するアタッチメントを交換することにより、土砂等の掘削の他に重量物の把持、撤去、岩石の破砕や金属の切断等が可能。隊員の接近が困難な土砂災害現場等の危険地帯においても活動ができるよう、最大100m離れた場所からタブレット端末の映像を基に操作できる機能を備えている。また、搬送車の搭載資機材として可搬式コンベアを備えており、手掘りした土砂の搬出を容易にしている。
広島土砂災害(平成26年8月豪雨災害)や西日本豪雨災害(平成30年7月豪雨災害)の被災地においては、人の力だけではどうしても対応することが出来ない局面があった。広島市消防局ではこうした場面においても新たな装備を活用し効率的で迅速な人命救助につなげるべく操作技術の向上を図っていくこととしている。
災害現場活動用としての改造が施された重機。遠隔操作装置の他、アームには管そう固定装置を備える。
通常は掘削用のバケットがセットされているが、搬送車には他に破砕用の油圧ブレーカ(写真左)、把持用の油圧旋回式グラップル(写真中)、切断用の小型切断機(写真右)が用意されている。
重機に備えられた遠隔操作用の監視カメラ(写真左)と遠隔操作装置(写真右)。
無線コントローラーにより100m離れた位置からの遠隔操作が可能。
監視カメラ(200万画素)より送られる映像はタブレット端末で確認。
危険な状況下では遠隔操作により活動を行うことが出来る。
重機搬送車はアタッチメント等の積み下ろし用にクレーンを備え、スライドボディ部に重機や装備一式が積載されている。
重機搬送車に搭載されている可搬式コンベア。1台あたり全長2.0m×全幅0.5m×全高0.5m。毎分約22mの速度で動き、搬送量は毎時約8立方メートル。これが4台用意されており、排出した土砂の搬出にかかる人員を他の活動に回すことができる。
SPEC DATA
【重機搬送車】 |
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車名 | 日野 |
通称名 | レンジャー |
全長 | 11700mm |
全幅 | 2500mm |
全高 | 3700mm |
乗車定員 | 3名 |
配備年月日 | 令和2年3月 |
SPEC DATA
【重機】 |
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メーカー | 日立建機 |
型式 | ZAXIS 50U |
全長 | 5500mm |
全幅 | 2000mm |
全高 | 2600mm |
機械質量 | 4920kg |
機体質量 | 3810kg |
お 知 ら せ |
本記事は最新消防装備等を広く紹介する趣旨で製作されたものであり、紹介する装備等は弊社が製造や販売を行うものではございません。 また、当該装備の製作や調達に関するお問い合わせを頂戴致しましても、弊社では対応いたしかねます。あらかじめご了承ください。 |
取材協力:広島市消防局
写真:Rising取材班
文:木下慎次
初出:2021年1月 Rising 冬号 [vol.20] 掲載