大空から佐賀を守る! 消防防災ヘリコプター 「かちどき」運用開始!!

 

佐賀県防災航空隊、発足

 最大震度7を記録した熊本地震の発生や、記録的な大雨など、2016年は九州地方を立て続けに大規模自然災害が襲った。全国的に大規模自然災害が多発するにつれて、佐賀県内でも防災ヘリの必要性について活発に議論されるようになっていた。2017年2月に佐賀県と県内20市町で防災ヘリを導入することに合意。航空消防防災体制整備に向けた本格的な取り組みがスタートする。

 機体の調達契約締結や防災航空センターの建設などが進められる中、2020年4月に佐賀県防災航空隊が発足。救助活動などにあたる「活動班」は、県内5消防本部から選抜された9名で編成され、うち3名は救急救命士の有資格者。運航は「エス・ジー・シー佐賀航空(株)」に委託しており、「運航班」として操縦士や整備士、運航管理担当者の5名が常駐している。

 活動班は航空救助員としての技術を養うため、九州各県の防災航空隊などで研修訓練を実施。また、『かちどき』と同じBK117シリーズによる活動を経験するため、岐阜県防災航空隊や岡山市消防航空隊(ともにC-2型を運用)での研修も実施した。

 

 

 

消防防災ヘリコプター「かちどき」

 佐賀県では2021年3月28日より消防防災ヘリコプターの運用を開始した。機体は川崎重工業と西ドイツMBB社(メッサーシュミット・ベルコウ・ブローム社:現エアバス・ヘリコプターズ・ドイツ社)が共同開発したBK117 D-2型。D-2型が消防防災ヘリコプターとして採用されるのは同機が全国初となる。愛称の『かちどき』は、運用する防災航空隊を県鳥の「カチガラス」(正式名称:カササギ)に見立て、「“カチ(かち)”ガラスが、郷“土(ど)”に“奇(き)”跡をもたらす」という意味が込められている。

 これまで災害時の情報収集、山岳救助や水難救助については隣県の消防防災ヘリなどに応援要請を行い対応してきた。これが佐賀県防災航空隊の発足、『かちどき』の運用開始により、より迅速な対応が可能になる。佐賀市にある九州佐賀国際空港東側に整備された「佐賀県防災航空センター」を離陸後、110kt(200km/h)で飛行した場合、県内のほぼ全域を15分程度、唐津の離島部も20分以内でカバーできる。

 

【エンブレムコンセプト】
県鳥の「カチガラス」が佐賀県を俯瞰し、県土全体を見守っている。7つの星は唐津の離島7つ、そして5消防本部+県+運航委託会社の「7者の連携」を表している。

 

 

研鑽の日々

 運航規程や各種マニュアルの策定はもちろん、佐賀県内消防との調整などの準備も行い、2020年12月末に機体が納入される。翌年1月から、実際に『かちどき』を使っての訓練がスタート。実機を使っての機体・地形習熟訓練、消防本部との連携訓練を重ね、3月28日に運用が開始された。『かちどき』の運航時間は365日、8時30分から17時15分までを基本としており、緊急運航は日の出から日没までの対応。通常はシフト制で勤務を行い、月曜日のみ全員出勤日としている。活動班が全員揃うこのタイミングは自隊訓練を通して、それぞれが各防災航空隊や自隊訓練で学んできた内容の共有を図る時間と位置付けており、併せて、実験的な訓練にも挑戦。取材を行った4月の訓練では、水難を想定した低高度での吊り上げ救助を実施し、ダウンウォッシュの影響や死角の変化などについて身をもって学んだ。新隊であるがゆえに、こうした「あたりまえ」を身をもって行って「経験」に昇華させることで、知識や技術に厚みを与えようというのが狙いだ。活動技術の錬磨はもちろん、佐賀県防災航空隊としての活動のスタンダードを構築すべく、地道な取り組みが日々行われているのである。

  • 訓練前のブリーフィング風景。
  • 訓練会場に先行した陸上班が訓練準備を行う。
  • 互いに装備の確認を行う隊員たち。
  • 水難救助を想定した吊り上げ訓練。通常の半分以下といえる20ftでの対応を試し、水面環境の悪化などを体感した。
  • 要救助者役の隊員に接触。ヘリを直上におくことでダウンウォッシュの影響を低減させ、迅速に縛着する。
  • ホイストケーブルを巧みにさばき、降下隊員をサポート。あわせて、死角が広くなる機体直下での活動のため隊員らが周囲の監視を行う。
  • 縛着が完了すると、直ちに吊り上げを開始する。
  • 縛着が完了すると、直ちに吊り上げを開始する。
  • 要救助者を機内へ引き込み、救出完了。
  • 救出後は直ちに河川敷へ。コンパクトな機体なので着陸の制限が少なくて済む。
  • 訓練後の デブリーフィングの様子。その日の訓練の様子を振り返りながら、各隊員が研修先で得てきた情報なども共有しつつ活動について検討を行っていく。

 

 

受援体制も強化

 防災航空隊の発足により災害時の初動対応が格段に強化されたのはもちろん、大規模災害が発生した際の航空部隊受援体制が充実したこともポイントだ。防災ヘリを運用することで得られる知見やノウハウの蓄積により、大規模災害時に応援で駆け付ける多くのヘリの適切なオペレーション、運用精度の向上が期待されている。施設面も受援対応を意識している。防災航空隊の活動拠点として整備された佐賀県防災航空センターには、格納庫・事務所棟が入る建屋とあわせ、他県からの応援ヘリなど最大22機を受入できる約3ヘクタールの広大な駐機場を確保している。建屋正面の舗装エリアが第一駐機場として10機を、隣接するグラスエリアが第二駐機場として12機の受け入れに対応。グラスエリアについては、平時は防災航空隊の訓練に使用されるほか、一般貸し出しも行われる。また、事務所棟内には災害対応時のブリーフィングルームとして大きな会議室が用意されている。

 満を持して誕生した佐賀県防災航空隊と、同隊が運用する消防防災ヘリコプター『かちどき』。大空から佐賀を守るのはもちろん、国内で大規模災害が発生した際は緊急消防援助隊として全国に駆け付ける。佐賀の、そして日本の空の守り神として任務を果たすべく、佐賀県防災航空隊は日々活動技術の向上を目指した訓練に励んでいる。

  • 活動拠点となる佐賀県防災航空センター。
  • 格納庫には訓練棟を備え、シャッターは震災時の変形などが起きぬよう柔軟性のある特殊素材を採用している。
  • 事務所スペースに隣接する出動準備室。
  • 資機材倉庫には消火・水難救助・救急など災害種別ごとに資器材を用意。必要に応じて載せ替えを行う。
  • 資機材倉庫には消火・水難救助・救急など災害種別ごとに資器材を用意。必要に応じて載せ替えを行う。
  • 資機材倉庫には消火・水難救助・救急など災害種別ごとに資器材を用意。必要に応じて載せ替えを行う。
  • 自動心臓マッサージ機の点検を行う救命士3名。
  • 災害対応時のブリーフィングルームとして活用できる大きな会議室。
  • 効果的な体力錬成が行えるトレーニングルーム。
  • トーイングトラクターと電源車。
  • 人員輸送車。
  • 資機材搬送車。

 

 

機体紹介

  • 操縦席背面には無線機や各種モニターが並ぶ。写真右側のモニターがヘリコプターテレビ伝送装置用で、機外のカメラで撮影した映像を県庁や市町、各消防本部へ伝送できる。写真左側のモニターが総務省消防庁が無償使用制度により配備を行っているヘリコプター動態管理システムの機体端末。
  • 通常機内は救助モードとして座席などを外してある。壁面には収容した要救助者に対応するための救急資器材が並ぶ。
  • ホイスト装置。隊員の昇降や要救助者の吊り上げ救助に活用する。最大ホイスト荷重249kg、ケーブル長90m。
  • ヘリコプターテレビ伝送装置用カメラ。
  • ヘリコプターテレビ伝送装置用アンテナ。
  • 外部スピーカー。上空より災害時に必要な情報等を伝える際に使用する拡声装置。
SPEC DATA
機種 川崎重工製 BK117 D-2型
(エアバス・ヘリコプターズ式)
全長/全幅/全高 13.64m/11.00m/3.95m
最大定員 11人
最大重量 3700kg
エンジン最大出力 730kW×2(Arriel 2E)
燃料種類 JET A-1
最高搭載量 903.8L
最高速度 266km/h
最大航続距離 740km
最大航続時間 3時間50分
主要装備 ホイスト装置
ヘリコプターテレビ伝送システム(ヘリテレ)
スリング装置
外部スピーカー
サーチライト等

 

(集合写真提供:佐賀県防災航空隊)

 


 

本記事は訓練などの取り組みを紹介する趣旨で製作されたものであり、紹介する内容は当該活動技術等に関する全てを網羅するものではありません。
本記事を参考に訓練等を実施され起こるいかなる事象につきましても、弊社及び取材に協力いただきました訓練実施団体などは一切の責任を負いかねます。

 


 

取材協力:佐賀県/佐賀県防災航空隊

写真・文:木下慎次


初出:2021年7月 Rising 夏号 [vol.22] 掲載
(※この記事はRising掲載記事を補完したWeb完全版です)

 


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