注目の消防車両 CLOSE-UP! 救助工作車 III型

 福山地区消防組合消防局では南消防署に配置された高度救助隊「スーパーレスキュー福山」の基幹装備である救助工作車III型を2023年6月に更新し、運用を開始した。同車は広島県内初となるモリタ製のインテリジェントアタッカーで、キャブスペースを最大限に拡張し、隊員の車内活動スペースを確保するとともに、資機材の収納スペースも損なうことなく製作されているのが特徴だ。

 高度救助隊が運用する車両であることから、火災、救助、潜水に加えNBC災害など、あらゆる災害に対応しなければならない同車。先代車両は一般的なダブルキャブ仕様であったため、個人装備品等も収納された車内は手狭であり、車内での活動準備には限界があった。そのため乗車前に災害種別に応じた装備を整えて乗車していたため、出動するまでに時間を要していた。この課題を解消するために採用されたのがインテリジェントアタッカー。前席に2名、後席に4名が乗車でき、後席の室内高は約2mを確保。これにより出場途上の車内で防護服やウエットスーツを着装することもできるようになった。

 また、潜水資機材についてはBCをセットした状態で積載しているため、現着後すぐに潜水活動ができるよう積載の工夫も行っている。あわせて、海中でのフルスペック活動を目指し、油圧救助器具のスプレッダーとカッターはエンジン式を採用。マルチツールのみ電動式を採用し、即応性も確保している。

 潜水資機材、山岳資機材及び高度資機材など、あらゆる資機材を搭載し、高度救助隊の活動を力強く支える同車。スーパーレスキュー福山の16名の隊員らとともに、市内はもちろん、要請があれば緊急消防援助隊として全国に急行し人命救助にあたる。

 

広島県内初となるインテリジェントアタッカー。後席ドア3面やBピラー1面の窓追加により安全確認が可能に。グリルなども朱色にしているのがポイント。

 

キャブ周りと同様に側面の補助警光灯設置部も朱色に。

 

車両後方に搭載されたクレーン装置は水難救助現場での上部支点としても活躍する(写真左)。照明はナイトスキャンチーフを採用し、ポールレスとすることで積載庫内のキャパを最大限に確保している(写真右)。

 

左側は展開式ラックを備え大型油圧式救助器具一式を収納。

 

右側は潜水資機材や山岳資機材など各種資機材を積載。

 

フロントヒッチを備え、オリジナルのアンカープレートをセットできる。

 

広い空間を確保した後席。2段ステップで乗降も楽に行える(写真左)。座面を跳ね上げれば活動準備等を容易に行うことができる(写真右)。

 

オーバーヘッド収納には潜水用装備等を収納し車内で着装が可能。

 

車内には折りたたみ式テーブルも装備。

 

取材に協力いただいた高度救助隊「スーパーレスキュー福山」の皆さん。

 


 

SPEC DATA
車名 日野
通称名 レンジャー
シャーシ型式 GX2AB-101649
全長 8,120mm
全幅 2,380mm
全高 3,190mm
ホイルベース 4,000mm
最小回転半径 6.8m
車両総重量 11,320Kg
乗車定員 6名
原動機型式 A05C
総排気量 5,12L
駆動方式 4×4
ウインチ  前:大橋機産製 MCW550RRT-S
 後:大橋機産製 MCW5103DVT
クレーン ダダノ製 TM-ZX303HRENBA
照明装置 佐藤工業所製 ナイトスキャンチーフNEXT90W×6
配備年月日 令和5年6月20日
艤装メーカー 株式会社モリタ
契約先 中央ヂーゼル株式会社

 

 


 

お 知 ら せ
本記事は最新消防装備等を広く紹介する趣旨で製作されたものであり、紹介する装備等は弊社が製造や販売を行うものではございません。
また、当該装備の製作や調達に関するお問い合わせを頂戴致しましても、弊社では対応いたしかねます。あらかじめご了承ください。

 


 

取材協力:福山地区消防組合消防局

写真:伊木則人

文:木下慎次


初出:2024年1月 Rising 冬号 [vol.32] 掲載
(※この記事はRising掲載記事を補完したWeb完全版です)

 


pagetop