注目の消防車両 CLOSE-UP! 水槽付消防ポンプ自動車II型

 高知県の幡多西部消防組合消防本部では、平成12年度に製作した小型動力ポンプ付水槽車I型(積載水5t)の老朽化に伴い、更新車両として新たに水槽付消防ポンプ自動車II型を製作し、宿毛消防署に配備した。

 先代車両はダブルキャブシャーシに楕円形の大型水槽とB-2級ポンプを搭載した一般的な構造。火災対応時は第一線での消火活動に投入されるため、更新にあたってその対応能力強化が模索された。新車両も5tの積載水を確保することが必須。そこで、軽量なアルミフレームを採用することで一般的な水II型と同等サイズに抑えつつ、5tの消火水に加え各種資機材の積載にも成功。A-2級ポンプとなったことで、多くの放水口数の確保を実現している。

 また、先代車両では車両後方のボックス内の積める場所に資機材を詰め込むことしかできず、隊員が車両の左右に行ったり来たりせなばならなかった。新車両では充実した積載すスペースが確保できたため、右側に機関員の活動に必要な資機材、左側に筒先員等に特化した資機材を配置することで活動動線の最適化を図り、1秒でも早い放水開始を実現できるよう配慮している。

 さらに、新車両には電動ホースカーを搭載。65㎜ホース10本の積載が可能で、加えて上部にホースバック等を載せて曳行することもでき、あらゆる現場において隊員の負担軽減や体力温存が可能となった。他にも、少ない水でも消火効力を上げるA泡消火混合装置を搭載し、キャブ上には夜間の活動に備えた照明装置を装備するなど、火災はもちろん、様々な災害に対して対応できる仕様となっている。

 1台であらゆる局面に対応できる車両として製作された新車両。ますます複雑多様化していく火災性状に対応するための切り札として、同車が地域を守っていく。

 

小型動力ポンプ付水槽車I型の更新車両として製作された水槽付消防ポンプ自動車II型。同じ積載水5tでありながら、随所でバージョンアップが図られている。車両中央部に位置する「TANK」の文字が入る部分が大容量5000LのFRP製角形水槽。

 

左側の積載状況。筒先員等が使用する放水器具などを配置。

 

右側の積載状況。機関員が使用する水利関連装備を配置。

 

ポンプ室の状況。アルミフレームを用いて軽量化が図られた構造がよくわかる。

 

右側積載庫は展開式ラックを備えている(写真左)。スタンドパイプはラックからはみ出す形で、予備ボンベボックス脇にエルボ部分を逃がしている。空間を立体的に活用しているのがわかる(写真右)。

 

キャブの屋根はハイルーフ仕様とし、車内空間の拡充を実現(写真左)。後方のシャッター部分が電動ホースカーを収めたスペース(写真右)。

 

キャブ上に照明装置を搭載し、夜間も活動がスムーズに行えるよう配慮している。

 

坂道や悪路での負担軽減を目指し電動ホースカー(NGN25A)を採用(写真左)。昇降装置に積載はしごなどを収めている(写真右)。

 

活動状況を周囲に周知することで、スムーズな現場活動を行える活動状況表示器を搭載(写真右)。車内センターコンソールには各種無線機や活動状況表示器の操作部が備わる(写真左)。

 

活動状況表示器の操作部。表示文は16パターンが用意されている。

 

SPEC DATA
車名 日野
通称名 レンジャー
シャーシ型式 2DG-FE2ACA
全長 7,130mm
全幅 2,330mm
全高 3,250mm
ホイルベース 3,790mm
最小回転半径 6.9m
車両総重量 13,990㎏
乗車定員 6名
原動機型式 A05C型
総排気量 5,123㏄
駆動方式 4×2
水ポンプ A-2級/高圧二段バランスダービンポンプ(インデューサー付)
水槽容量 5,000L
配備年月日 令和6年5月29日
艤装メーカー 長野ポンプ株式会社
契約先 株式会社中村防災サービス

 

 


 

お 知 ら せ
本記事は最新消防装備等を広く紹介する趣旨で製作されたものであり、紹介する装備等は弊社が製造や販売を行うものではございません。
また、当該装備の製作や調達に関するお問い合わせを頂戴致しましても、弊社では対応いたしかねます。あらかじめご了承ください。

 


 

写真・情報提供:幡多西部消防組合消防本部

文:木下慎次


初出:2024年10月 Rising 秋号 [vol.35] 掲載
(※この記事はRising掲載記事を補完したWeb完全版です)

 


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