注目の消防車両 CLOSE-UP! 重機搬送車
2025年7月18日に神奈川県消防学校で開催された第53回消防救助技術関東地区指導会では、神奈川県内に配備されている消防重機の展示等も行われた。この中で注目を集めていたのが、令和7年に横浜市消防局が配備した重機搬送車だ。
同局ではこれまで、自走式の排除工作車 (ホイール式ショベル・緑消防署鴨居消防出張所)と排除作業車 (ホイルローダー・特別高度救助部隊)の2台の重機を運用してきた。こうした車両は道交法による速度制限があり、アタッチメントもバケット以外公道走行不可といった制限が生じる。出動時にはアタッチメントを搬送する部隊も必要になるといった課題があった。これらをクリアすべく更新されたのが、この重機搬送車だ。
採用された重機は日本キャタピラー製のクローラ式油圧ショベル308CR(中型機)と301.7CR(小型機)。クラスの異なる2機を備えることで、あらゆる現場環境へ対応できる能力を目指した。先端アタッチメントについては2機ともバケット、グラブ、ブレーカーが用意されており、中型機は鉄筋カッターも備える。アタッチメントはラックに載せた状態で交換が可能となっており、重機が自己完結的に付け替えることができる。
重機2台と各種アタッチメントを一括して搬送するのが重機搬送車だ。三菱ふそう・スーパーグレートをベースに製作されており、油圧ジャッキにより車体を傾斜させて重機の積み下ろしを行う。荷台キャブ寄りに小型重機とアタッチメントラック、後方に中型重機がレイアウトされている。
同車は緊急消防援助隊に登録されており、横浜市内のみならず全国への派遣にも対応する。

従来の重機運用の課題を改善すべく更新整備された横浜市消防局の重機搬送車。排除工作車と排除作業車の2台の任務を引き継ぐ。

積載部には車両後方側に中型機の308CR、キャブ側に小型機の301.7CRが並んでいる。

重機の積み下ろし時はジャッキで車体を傾斜させる。

鳥居部分にウインチを装備(写真左)。あゆみ板は履帯間隔にあわせて調整可能(写真右)。

専用ラックに各種アタッチメントをまとめて積載。

中型機の308CRは現場到達性と障害物排除能力のバランスが良い。

中型機にセットされた強力な鉄筋カッター(写真左)。いずれの重機にも「シリンダーシールセーバー」としてシリンダー部分を保護するグレーのカバーを装着(写真右)。

小型機の301.7CRは小回りが利き、狭隘箇所への対応を可能とする。
先代重機

[排除工作車/緑消防署鴨居消防出張所] 自走式(ホイール式)ショベルをベースとした排除工作車。2000年(平成12年)に導入されたもので、同車の先代にあたる車両がウニモグ(U1700)をベースにフロントローダーやレッカー装置などを備えた仕様だったため、重機への路線変更が図られたが、自走が可能なホイール式が採用された。消防活動に供するため、2名乗車可能な仕様にキャビンが改造されていた。写真は緑消防署白山消防出張所配置当時のもの。

[排除作業車/特別高度救助部隊] ホイルローダーをベースとした排除作業車。元々は1995年(平成7年)に震災作業車として導入され、西消防署浅間町消防出張所に配備。後に特別高度救助部隊の発隊に伴い同隊に配置転換され、名称も排除作業車に改められた。震災時の道路啓開を主任務としており、大型バケットや排土板にて土砂や瓦礫等の重量物排除が可能。こちらも2名乗車可能な改造が施されていた。
関連記事
お 知 ら せ |
本記事は最新消防装備等を広く紹介する趣旨で製作されたものであり、紹介する装備等は弊社が製造や販売を行うものではございません。 また、当該装備の製作や調達に関するお問い合わせを頂戴致しましても、弊社では対応いたしかねます。あらかじめご了承ください。 |
取材協力:横浜市消防局
写真・文:木下慎次
初出:2025年10月 Rising 秋号 [vol.39] 掲載