注目の消防車両 CLOSE-UP! 消防艇 おおつ


滋賀県の大津市消防局では、琵琶湖上や琵琶湖沿岸の火災や水難救助事案に対応すべく、昭和48年に消防艇「おおつ」を導入。平成27年3月に3代目となる新消防艇に更新された。更新にあたり、市民らに親しみを持ってもらうため新たに愛称を公募し、「湖都・大津の守り神に」との思いが込められた「湖都風(ことかぜ)」と命名。船体には船名の「おおつ」とあわせ、愛称の「湖都風(ことかぜ)」も記されている。
新消防艇の巡航速力は36ノット(時速約67キロメートル)で、2代目より13ノット速くなっている。また、推進装置には一般的なプロペラ式ではなく、高圧で水を噴出して進むウォータージェット方式を採用。これにより要救助者や湖内の水草などをプロペラに巻き込むといったリスクを回避している。
船体には放水砲を3門、放水口を10口装備し、ディーゼル機関駆動消防ポンプにより1分間に最大8000リットルの放水が可能。船内には救急資器材を配備した救護室も備え、水面を駆る救急車としての機能も有する。また、大規模災害等で道路が寸断された場合を想定し、多くの物資を搬送できるようにクレーンも装備している。
大津市消防局では、琵琶湖及び河川等で発生した水難救助事案に対応するため、平成28年に水難救助隊を発足させた。消防艇おおつ「湖都風(ことかぜ)」は同隊とも連携し、琵琶湖全域の安心・安全を守るため、日々活動している。

 

最新鋭の機器が並ぶ操舵室。

 

操舵室の後方に位置するスペースに救急資器材を配備した救護室を備える。

 

ベンチシートは背もたれを展開することでベッドとなる。ここで救命処置を行うことができる。

 

主機関としてMTU V型冷却4サイクルディーゼル機関を搭載(写真1)。

推進装置はウォータージェット2基(写真2)。

放水の要となる、毎分8000リットルの放水に対応する消防ポンプ(写真3)。

船体には放水砲を3門、放水口を10口装備している(写真4)。

 

船尾には0.95トン吊りのクレーンを装備。搭載艇(おおつ2)を湖上へ下ろす際はもちろん、大規模災害時の物資輸送にも活用される。

 

新消防艇は大津市の水の玄関口である大津港に位置する水上出張所に配置。湖上や沿岸部の災害に対応している。

 


 

SPEC DATA
船主 大津市
所属 大津市消防局
船室 耐食アルミ合金製
船種 一般船
用途 消防艇
起工 平成26年7月14日
進水 平成27年3月2日
竣工 平成27年3月19日
航行区域 平水区域
要    目
全長 19.00m(船尾甲板張出1.5mを含む)
全幅 4.40m
全深 2.10m
喫水 0.85m
総トン数 19.00トン
定員船員 19人(船員:3人/その他:16人)
航海速力 36kt(機関出力100%負荷時)
最大速力 40kt(機関出力110%負荷時)
主機関 MTU V型冷却4サイクルディーゼル機関 過給空気冷却機付き(逆転減速機付き)×2基

型式: 8V2000M93
最高出力: 895kw(1217PS)/2450rpm
定格出力: 814kw(1105PS)/2373rpm
燃焼方式: コモンレール方式
制御方式: 電子制御方式
使用燃料: JIS2号軽油
始動方式: 電動始動(DC24V)
冷却方式: 湖水間接冷却方式(直接冷却は清水)
減速機: クラッチ式歯車逆転付減速機
遠隔操作: リモコン式
計器盤: 操舵室 ×1面(警報ブザー付)
機関室 ×1面
その他: 2線式仕様(スターター・ダイナモ)
環境対策型(2次規制)
推進装置 ハミルトンジェット ウォータージェット ×2基

型式: HM461
補機発電機 ノーザンライツ サウンドシール付き ×1基

型式: M844K3
出力: 17KVA/60HZ
艤    装
搭載艇 HB315-DX (船外機4サイクル 11kw(15PS))

油圧式揚降設備: ユニッククレーン UB-V263(最大荷重950kg)
航海設備 多機能レーダーGPS・電子コンパス・電子真風向風速計・ソナー装置・

汽笛・拡声装置・探照灯・投光器・警光灯・モニターテレビ・揚錨キャプスタン・

油圧式マスト起倒装置・各種アンテナ・冷暖房装置

消  防  設  備
消防ポンプ ディーゼル機関駆動消防ポンプ ×1基

型式: CPC200-50SHX
名称: 横型片吸込渦巻ポンプ
揚量: 8000L/min×1.37Pa
機関: いすゞ 水冷4サイクル直列6気筒式

型   式 UM6SD1TCX(過給機・インタークーラー付き)
出   力 257kw(350PS)/2000rpm
放水砲 2000L型(手動)×2・自動×1
放水口 φ65mm×10
自衛噴霧口 6ヶ所
海難吸水口 φ75mm×2
泡原液タンク(色水兼用) 230L×2
無線装置 一式
救急資器材 人工呼吸器・酸素吸入装置・吸引器・AED・気道確保器具・

患者監視装置(心電図・心拍数・脈拍数・血圧値・血中酸素飽和度測定)・

バックボード

 

 


 

本記事は最新消防装備等を広く紹介する趣旨で製作されたものであり、紹介する装備等は弊社が製造や販売を行うものではございません。

また、当該装備の製作や調達に関するお問い合わせを頂戴致しましても、弊社では対応いたしかねます。あらかじめご了承ください。

 


 

取材協力・写真提供:大津市消防局

文:木下慎次


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