注目の消防車両 CLOSE-UP! TEISEN RESCUE SERIES TYPE HX

 

テイセンでは救助工作車をLL、LS、HS、HB、HXの5タイプに分類。平成29年に各エンブレムの車両貼り付けを始めた。これは装備担当者が他都市の車両を参考にした際に判別しやすいようにという配慮なのだ。

平成23年3月11日に発生した東日本大震災では、被災地消防本部はもちろん、全国の消防本部から緊急援助隊が被災地へ駆けつけ、過酷な消防活動を展開した。未曾有の大災害に直面した消防は、これまでにない厳しい現実を経験せざるを得なかった。この経験を拾い出し、救助工作車により改善することはできないか──。救助隊員の経験を踏まえた潜在要望、つまり、本人も気付いていないニーズを具現化するため、テイセンでは平成25年秋に関東以西の消防本部を巡り、現場の生の声を拾い集めた。
救助工作車のニーズは、積載性を求める声が圧倒的に多い。そして、それ以外の要素についてはどれもさほど高くないという従来どおりの傾向が見られた。ただ一点、新たな要素が高いニーズとして浮き彫りとなった。それが「キャブ内特性」だ。当時のスタンダードは消防用ダブルキャブをベースにしたもの。ハイルーフ仕様も登場していたが、後席の足元スペースは狭いままだ。ここに個人携行品のバッグや載せきれない装備や物資を詰め込むため、隊員は厳しい姿勢での長距離移動を強いられた。また、現場活動において唯一の休息空間となるはずの車内が狭いのであれば、身心のリセットを図ることもできない。そこで、テイセンでは居住空間と環境の向上、活動性の向上をコンセプトに、新型救助工作車の検討を行った。
従来の消防用ダブルキャブでは限界にきている。これまでの常識を覆す仕様として考え出されたのが、前席はシングルワイドハイルーフキャブを使用し、後席は積載庫を前方に延長して隊員席を設けるというスタイルだった。この仕様が「第3のバス型」として注目を集める、テイセンのタイプHXなのだ。

 

TRES2017会場で展示された最新のHX(写真手前)とHS(写真奥)。

 

 

HXはクラス最大の室内高1900㎜を誇るが、注目したいのは床面が圧倒的に低いこと。発電機を駆動させるシャフトを逃がすため地上から1100㎜となっているが、非搭載であれば1000㎜となり、室内高は2000㎜を確保できる。

 

 

車内空間をさらに後方に延長することも可能。

 

 

オリジナルの梯子昇降装置・LL-IIIは地面近くまで下ろす事ができ、キャスターを活用した1名搬送に便利(写真1)。ロッツラー社のトライマチックウインチ。従来とは異なる2ローター巻取方式を採用し、最大引張能力は常時5tで乱巻も起こさない(写真2)。車両後部に作られた台車用ボックス。現場の要望は可能な限り応える(写真3)。活動時の接触を踏まえ、張出しを抑えつつコーナー部分はR 加工を施す(写真4)。

 

 

HXは拡張性や応用性が高いのも特徴。写真はプロフィア8tシャーシをベースに製作した車両。

 

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誤記のお詫びと訂正
カタログ情報誌「Rising」Vol.8(2018/冬号)に掲載いたしました本記事におきまして、以下の記載に誤りがありました。お詫び申し上げますとともに、訂正させていただきます。
 ●1ページ本文1行目
  (誤)平成25年
  (正)平成23年
読者の皆さまにご迷惑をお掛けしましたことをお詫びいたします。

 

お 知 ら せ
本記事は最新消防装備等を広く紹介する趣旨で製作されたものであり、紹介する装備等は弊社が製造や販売を行うものではございません。
また、当該装備の製作や調達に関するお問い合わせを頂戴致しましても、弊社では対応いたしかねます。あらかじめご了承ください。

 


 

取材協力:帝国繊維株式会社

写真・文:木下慎次


初出:2018年01月 Rising 冬号 [vol.08] 掲載


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